卵の黄身や乳製品、甲殻類、肉の脂肪分などは高コレステロール食品として、心臓病や脳卒中の元凶とされ、長い間、過剰な摂取は避けるべきだといわれてきました。しかし、近年、「高コレステロール食は血中コレステロール値に影響しない」ということが世界中の数々の研究で明らかになってきています。食事とコレステロールの関係や、コレステロールの身体への作用に関する知識など、健康な身体を作るためのコレステロールの新常識をご紹介します。
食事で摂るコレステロールがそのまま血中コレステロール値に反映するわけではない
「卵や乳製品は高コレステロールだから食べ過ぎないように」と注意されたことはありませんか?コレステロールの多い食事は血中コレステロールを上昇させて健康に悪影響を与えると長年考えられてきました。しかし、血中総コレステロールからみた食品由来のコレステロールは少なく、ほとんどが主に肝臓で血中コレステロール値が一定に保たれるように合成されています[1]。つまり、健康な人であれば高コレステロール食は血中コレステロール値にはほとんど影響せず、その意味で食品に含まれるコレステロールは気にしなくてもよいという衝撃の研究結果が次々と報告されています。
イースタン・フィンランド大学が1,032人の男性を対象として21年にわたり調査を行ったところ、コレステロールの影響が大きいとされている冠動脈性心疾患などの心臓血管病と食事のコレステロールは関連性が認められないという結論に達しました[2]。他の機関による研究でも同様の結果が出ています[3][4][5][6][7]。従来の常識を覆したこの結論ですが、みんなコレステロール食を減らしているはずなのに血中コレステロールに起因する病気がここ数十年増える一方であるとの現実と合致した結論といえるでしょう。
コレステロール食は、心臓病や脳卒中などの心臓血管系疾患のリスクを高める大きな要因と従来考えられていたために、とかく悪者扱いされがちです。しかし、コレステロール自体は細胞膜などの生命の根幹にかかわる組織の成分であり、性ホルモンなどの各種ホルモンや胆汁酸の材料でもあり、人間が生きていくためにはなくてはならない物質です[8]。そのため、体内では生命に必要なコレステロールが毎日せっせと生成されています。