高タンパク・高炭水化物の欧米食がもたらす体への悪影響は少なくありません[1–3]。糖尿病などさまざまな慢性病が気になり始めた人、肥満体質などに悩んでいる人は、自身の食生活を見直すことで良い方向に変われるはず。今回は、糖質ではなく脂肪をエネルギー源として使う食生活、すなわちケトン食ダイエットに基づくケトーシス状態が体に与えるさまざまな影響について紹介します。
ケトーシス状態とは?
最近話題のケトン食ダイエットとは、いわゆる高脂質・低糖質を徹底した食事を指します。高脂質と聞くと、「逆に太るのでは?」と思われるかもしれませんが、それは古い考え方です。高脂質・低糖質の食事をしていると、体へのエネルギー供給源が変わります。ブドウ糖ではなく、脂肪を分解しエネルギーを作り出すようになるのです[4]。
脂肪を燃焼しエネルギーを生成する際に肝臓で作られる代謝産物がケトン体です。ケトン体は3種類の化学物質(アセトン・アセト酢酸・βヒドロキシ酪酸)の総称であり、このケトン体はさらに脳などの細胞へのエネルギー源として利用されます[5]。
ケトーシス状態とは、適度な量のタンパク質、低糖質、そして高脂質の食事をすることで、血中にあるケトン体がある一定値を超えている状態を指します[6]。つまり、この状態では、糖ではなく、脂肪をエネルギー源として利用しているのです。
一般的にケトーシス状態にある場合、血中ケトン体濃度は約0.5(mmol/L)以上で推移[7]。食事によってこの状態になることを栄養的ケトーシス状態と呼びます。ケトーシス状態は上記のような高脂質・低糖質の食生活だけでなく、断食中にも起きます[5]。。
このように肝臓が脂肪を燃焼するモードになれば、自身の体脂肪をどんどん燃焼することが期待できるのです。また、脂肪をエネルギー源に使うことは、糖質を燃焼させるよりも派生して起きる炎症レベルが低いことが分かっています[8]。さらに、ケトーシス状態は脳内のミトコンドリア濃度を高め、脳を冴えさせ[9–11]、判断力や精神状態を向上させる、という研究結果が報告されています[9,10]。