海藻などに多く含まれるヨウ素は人間に不可欠な微量ミネラル。心身の発達や健康維持にはヨウ素の力が欠かせませんが、アメリカでは年々ヨウ素の平均摂取量が低下しており、1970年代と比較すると約半分にまで尿中ヨウ素値が落ち込んでいるそうです[1]。
日本でも食の西洋化が進んだため、欧米的なヨウ素不足の可能性が昔と比べて増えています。ヨウ素欠乏症は子供の発育不良や甲状腺の疾病などの健康リスクをもたらし、重症化すると命に関わることもある深刻な症状。また、ヨウ素が不足すると慢性疲労、冷え症、筋力低下、肥満など、現代人にありがちな症状が起きやすくなります(もちろんこれらの症状にはヨウ素不足以外の要因もたくさん考えられますが)。
一方で、伝統的な日本食を取り入れている人の場合、むしろヨウ素摂取量がけた違いに多くなることもあります。その意味で、日本は世界のなかでも特異な地域とされてきました。海藻を日頃より食事に取り入れ、昆布だしを使った料理をよく食べている人は、ヨウ素不足の心配ではなく、むしろヨウ素過多による甲状腺腫などの心配が出てきます。沿岸地域の住人ですと、平均必要量の数百倍のヨウ素を摂取しているケースもよくあること。そうするとやはり甲状腺腫や甲状腺の機能低下など、様々な弊害のリスクが上がります。
このように、ほぼ一律にヨウ素不足の欧米と違って、一括りに「日本人はヨウ素不足」といった単純な判断はできません。各自で日頃の食事の中身を振り返り、自分がヨウ素不足なのか過多なのかを判断する必要があるのです。また、甲状腺機能と関連する症状が見られる場合には、ヨウ素が過多なのか過少なのかの判断を含め、専門的な判断が必要となりますので、専門医に診てもらいましょう。