昔から米国人は自己啓発系の本を好む傾向が見られます。『人を動かす』や『道は開ける』などの著書で有名なデール・カーネギーは日本でも良く知られていますが、米国の書店に行くと自己啓発書コーナーがとても広いのにいつも驚かされます。
そんな米国で今ベストセラーになっているのがこの自己啓発本。著者はカナダ人の心理学者でトロント大学教授。米国のハーバード大学の教授だったこともあり、歴史、哲学、宗教学など多くの分野の見識が深い一方、現役の臨床心理学者としての慈悲深さも備え、最良の意味でのインテリ。一方、歯に衣着せぬ発言でも知られ、最近の北米の大学キャンパスの行き過ぎた左傾化に警鐘を鳴らし、物議をかもしている話題の人でもあります。
過去の人類の英知を結集して、説得力や面白さを倍増
米国の自己啓発物の多くは、読んだ直後はすごく元気になるのですが、内容自体は身に染み渡るような深みに欠け、時間が経つとその元気効果が薄れ、再度気分を奮い立たせるために似たような本を買う、という消費とも言えるような使われ方をされているとよく皮肉混じりに言われます。自己啓発書コーナーが巨大なのもこれが大きな理由とも。
でも、今回ご紹介する著書は、こうした部類の本とは一味も二味も違い、著者が生涯をかけて蓄積した深い見識を惜しげなく盛り込んでいて、じっくり読めば読むほどに味わい深く、一つ一つの文が吟味に吟味を重ねて書かれている、という感じ。特に興味深いのが、聖書や古代文明の神話、童話やディズニーアニメ、ニーチェ、ドストエフスキー、フロイト、ゲーテ、道教や陰陽道など、引用している文献の多様さ。過去の人類の英知を結集して、説得力や面白さを倍増させている点がこの本の人気の秘密と思われます。
意味のある人生を送るための「12のルール」とは?
この本は、人生という苦難に立ち向かい、意味のある人生を送るための12のルールを提唱し、それぞれを詳しく解説しています。
気になるその12のルールとは次の通り。それぞれ簡単に概要をまとめました。ただ、実際の本の内容は当然のことながらこれよりはるかに豊かで深いです。邦訳版が出るかどうかわかりませんが、ご興味を持たれた方はぜひ原文に挑戦してみることをお勧めします。
<ルール1 胸を張り、まっすぐ立つこと>
生物の長い進化の過程において、リーダー格の者は堂々と胸を張り、覇権を争う戦いに負けた者はしょんぼりとして去っていく、という行動パターンが、ロブスターのような原始的な動物でさえ植え付けられている。勝った方と負けた方の脳内の神経伝達物質の構成には大きな違いが現れ、それぞれの集団内での地位が固定化していく。