ソーシャルメディアの使用による精神の健康へのリスク
単純に過度のスマホの利用は眼精疲労や視力低下、肩こりなどの身体的な健康リスクが伴いますが[#]“[大学生のためのスマートフォン行動嗜癖の自己評価尺度の開発].” n.d. Accessed November 18, 2020. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjet/advpub/0/advpub_43046/_pdf/-ch.... 、それより懸念すべき点はソーシャルメディアの利用と精神の健康リスクの関連性です。あるアメリカの調査では、一般的に12歳~17歳の13%がうつ病、32%が不安感、18歳~25歳の25%が何かしらの精神疾患を持っていることが報告されていますが[#]National Institute of Mental Health. Mental Illness. Nimh.nih.gov. https://www.nimh.nih.gov/health/statistics/mental-illness.shtml. Updated February 2019. 、研究者はこういった精神疾患はソーシャルメディアの使用の増加に関連していることを示唆しています[#]Twenge JM, Joiner TE, Rogers ML, Martin GN. Increases in depressive symptoms, suicide-related outcomes, and suicide rates among US adolescents after 2010 and links to increased new media screen time. Clinical Psychological Science. 2018; 6(1):3-17. 。必ずしもソーシャルメディアの使用が精神的な障害を引き起こすとは言い切れませんが、被験者がFacebookのアカウントを1か月閉じたところ、うつ病と不安感が改善され、幸福度や満足度が増したという最近の調査報告もあるように[#]Allcott, H., Braghieri, L., Eichmeyer, S., & Gentzkow, M. The welfare effects of social media. American Economic Review, 2020; 110(3), 629-76. 、ソーシャルメディアの利用と精神的健康リスクの関連性は否定できません。女子は男子よりも人との交流を重視する傾向があるため、ソーシャルメディアを多く利用するとともにそれによる精神的ダメージを受けるケースが男子よりも多く、欧米で社会問題化しています。
また、以下のような点も問題提起されています。
・FOMO(フォーモ)
FOMO(フォーモ)とは、「fear of missing out」の略で、取り残されること、見逃してしまうことの恐怖、を意味しますが、例えば、ソーシャルメディアなどで自分が誘われていないイベントやパーティーなどの写真等を閲覧することで、自分が疎外されているのではないかという気持ちに陥り、否定的な感情をもたらす可能性があります。友人間で後れを取らないように最新の情報なども欠かさずチェックしてしまうのも同様の心理。FOMO(フォーモ)によってソーシャルメディアへの依存が更に強くなります。
・他人との比較によるコンプレックス
オンライン上では毎時さまざまな写真や動画が投稿されています。自分をより良く見せようとするために極端な編集処理をされた投稿画も今や当たり前。こういった画像と自分自身を比較することで、自分の体を否定的に感じコンプレックスとなります。その影響から、自分自身も編集により偽った写真を投稿するなど悪循環に。
・オンラインでのいじめや中傷
オンラインでのいじめは言葉の通り、ソーシャルメディアなどを通じて発生するオンラインのいじめや中傷です。10代の若者の72%がオンラインでのいじめを受けた経験があるというデータがあるように[#]Selkie EM, Fales JL, Moreno MA. Cyberbullying prevalence among US middle and high school–aged adolescents: A systematic review and quality assessment. Journal of Adolescent Health. 2016; 58(2):125-33. 、オフラインで行われるいじめとはまた質が異なるこのネットでのいじめの被害者は、教師や両親にも認識がされにくく、解決方法が見つからないまま苦しい思いをしている現状があります。
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