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ストイックなオーバートレーニングが及ぼす体への悪影響。
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ストイックなオーバートレーニングが及ぼす体への悪影響。

geefee ポイント geefee ポイント

・コルチゾールレベルを過度に上昇させる傾向にある有酸素運動
・テストステロンの低下及び精子数の減少まで報告されている適度な運動
・睡眠の質の低下や尿酸値が上がる可能性が指摘されているオーバートレーニング
・見逃すべきではないオーバートレーニングのサインとトレーニング時間と同じくらい大切な回復時間

 

運動が健康に良いということは周知の通り。WHO(世界保健機関)が発表したデータによると世界中の成人の4人に1人が、また日本肥満症予防協会が発表したデータでは、日本人の成人の3人に1人以上が、運動不足であるということが報告されています。ということは、約65%の人はある程度日常的に運動もしくは身体活動を行っていることになりますが、中には自分を追い込み過ぎてストイックに過剰な運動を実践している人もいます。今回は、オーバートレーニングが体に及ぼす悪影響についてお伝えしていきます。

 

コルチゾールレベルの上昇

腎臓の上部にある副腎で分泌されるコルチゾールは、以前の記事でもお伝えしましたが、いわゆる「ストレスホルモン」と言われているもの。ストレスホルモンというだけあって悪者にされがちですが、目覚めの前に上昇し、脳や体を目覚めさせ身体活動を促進する働きや、糖質・脂質・たんぱく質代謝の調節など、適切な量のコルチゾールの分泌は人の体を正常に保つためには必要です。オーバートレーニングがこのコルチゾールレベルを上昇させるということが研究で報告されています。特に注意したいのがついつい長時間実践してしまいがちなランニングや水泳などの有酸素運動[#]Guest. n.d. “Is Running Skyrocketing Your Cortisol Levels?” Accessed December 6, 2021. https://www.marathontrainingacademy.com/cortisol-levels. 。無酸素運動に比べて有酸素運動がコルチゾールレベルを過度に上昇させる傾向にあるのです。コルチゾールレベルが上昇することで体に及ぼす悪影響の1つが、インスリン感受性及び基礎代謝の低下です。これは運動不足でも起こりますが、過度の有酸素運動でも同じ。どんなに運動してもなかなか減量につながらない人は、体内のコルチゾールレベルが上昇している可能性も[#]Guest. n.d. “Is Running Skyrocketing Your Cortisol Levels?” Accessed December 6, 2021. https://www.marathontrainingacademy.com/cortisol-levels. 。ある研究では、10km~29kmのマラソン後の唾液中コルチゾールレベルが29%上昇したということも報告されています[#]Whitney P. Deneen, Alexis B. Jones. 2017. “Cortisol and Alpha-Amylase Changes during an Ultra-Running Event.” International Journal of Exercise Science 10 (4): 531. 。また、フルマラソンなどの長距離マラソン後は、数日間コルチゾールが上昇した状態であることも指摘されています[#]Hambleton, Brittany. 2021. “What Happens to Your Body after a Marathon?” October 18, 2021. https://runningmagazine.ca/sections/training/what-happens-to-your-body-a.... 。過度な運動をした後は、極力コルチゾールレベルを下げるように努めましょう。コルチゾールレベルが上昇することで体に与える悪影響や下げる方法はこちらの記事を参照してください。

 

 

また、無酸素運動と有酸素運動の融合であるHIIT(高強度インターバルトレーニング)もコルチゾールレベルが上昇します。特に有意な上昇が見られるのが運動直後~60分後。その後は減少傾向にありますが、24時間後に元のレベルに戻るという研究結果もあります[#]Dote-Montero, M., A. Carneiro-Barrera, V. Martinez-Vizcaino, J. R. Ruiz, and F. J. Amaro-Gahete. 2021. “Acute Effect of HIIT on Testosterone and Cortisol Levels in Healthy Individuals: A Systematic Review and Meta-Analysis.” Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports 31 (9). https://doi.org/10.1111/sms.13999 。無計画に1日に何度も実践すると、慢性的にコルチゾールレベルが上昇している状態になる可能性もあるので、計画的に実践するようにしてください。

 

テストステロンの低下の可能性

男性の体に多く存在し女性の健康な体を維持する上でも重要なテストステロン。男性の性欲や筋肉の量、骨量などに大きな影響を与えるステロイドホルモンの一種ですが、適度な運動やHIITのような高負荷な運動がテストステロンの増加に効果があるということは以前の記事でもお伝えしました。しかし、これはあくまでも適度な運動のはなし。ローイング選手やサイクリング選手などの過度な運動を実践しているアスリートを対象としたさまざまな研究では、テストステロンの低下及び精子数の減少まで報告されています[#] anabolichealth. 2018. “Low Testosterone? You Could Be Overtraining.” August 10, 2018. https://breakingmuscle.com/fitness/low-testosterone-you-could-be-overtra....

 

睡眠の質の低下

運動をするとよく眠れる、とよく耳にしますよね。しかし、トライアスロン選手を対象とした研究では、適切なトレーニング量のグループと過度なトレーニング量のグループを比較した際に、後者のグループで睡眠障害が蔓延していたというデータもあるように[#]anabolichealth. 2018. “Low Testosterone? You Could Be Overtraining.” August 10, 2018. https://breakingmuscle.com/fitness/low-testosterone-you-could-be-overtra.... 、運動量は睡眠の質に大きな影響を与えます。良質で十分な睡眠がとれないと、運動のパフォーマンスにも大きな影響を与え、また、運動の成果が得られないと不適切で過度な運動を実践し、睡眠の質に悪影響を与えるというループにはまることもあるので、特に運動量の多い人は、睡眠の経過を観察しながら、運動量を調節していくことも大切です。

 

 

また、最近では24時間オープンのジムなどで仕事帰りの遅い時間でもトレーニングが可能だったりしますが、夜の運動後は、心拍数が上昇し、交感神経を刺激するアドレナリンが放出された状態が持続されるため、寝つきが悪かったり、睡眠の質が低下する可能性があります[#]Lastella, Michele, Grace E. Vincent, Rob Duffield, Gregory D. Roach, Shona L. Halson, Luke J. Heales, and Charli Sargent. 2018. “Can Sleep Be Used as an Indicator of Overreaching and Overtraining in Athletes?” Frontiers in Physiology 9. https://doi.org/10.3389/fphys.2018.00436. 。限界まで追い込んで疲れを蓄積させて寝ればグッスリ寝れると思っても、実際の睡眠の質は決して良いとは限りませんので、睡眠前の激しい運動は極力避けるようにしましょう。

 

尿酸値が上がる

体内でプリン体が分解される際に生成される代謝物の尿酸の値が高い状態が続くと高尿酸血症を引き起こし、痛風や尿路結石の原因となる可能性があります。プリン体に関する詳しい説明は以前の痛風の記事でもお伝えしましたが、運動不足だとこの尿酸値が上がる一方で、逆に過度な運動や激しい運動も尿酸値を上げる原因になると言われています[#]“Uric Acid – LiveSmart.” n.d. Accessed December 6, 2021. https://www.getlivesmart.com/uric-acid/. 。特に注意すべきは、ウェイトトレーニングやスクワットなどの短時間の高負荷な運動[#]Lathan, H. H., K. Fabian, and U. Kämpfe. 1990. “[Changes in Serum Uric Acid Concentration after Defined Physical Stress].” Zeitschrift Fur Die Gesamte Innere Medizin Und Ihre Grenzgebiete 45 (24). https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/2102032/. 。逆に、有酸素運動のマラソンを対象にした研究では、1日平均約24kmもの長距離を1か月間続けたのにも関わらず尿酸値が有意に減少したというデータもあります[#]直孝橋詰, 修平小林, 喜久子井上, 芳子香川, 貴川原, and 家雄赤岡. 1992. “長距離・マラソンランナーの血清尿酸値の動態と意義.” プリン・ピリミジン代謝 16 (2): 93–98. 。尿酸値が高いからといって無酸素運動などの激しい運動を一生懸命行っても逆効果になりそう。特に、既に痛風または高尿酸血症を患っている人は、なるべくウォーキングなどの適度な有酸素運動や低強度の筋力トレーニングを実践することが推奨されています[#]博司大山, 恵子大山, 仁諸見里, 宜史高木, 優輝田代, 高史大山, 美紀山田, 直樹江戸, and 新藤森. 2016. “高尿酸血症患者に対するレジスタンストレーニングの影響 (パイロット試験).” 痛風と核酸代謝 40 (2): 123–30.

 

オーバートレーニングのサイン

個々で適切なトレーニングの量は当然変わってきます。自分ではオーバートレーニングではないと認識していても実際には体に負担となっている可能性もあります。どんなに運動してもパフォーマンスが向上しなかったり、成果が得られなかったりした場合、オーバートレーニングの可能性もありますので、以下のような兆候があるかたは参考にしてみてください[#]“Overtraining.” n.d. Accessed December 6, 2021. https://www.acefitness.org/education-and-resources/lifestyle/blog/6466/o....  [#]“How To Recover From Overtraining And Why Skipping Rest Days Isn’t The Answer.” 2020. August 12, 2020. https://betterme.world/articles/how-to-recover-from-overtraining/.

 

  • 運動後にも持続する高い心拍数
  • 気分のムラや興奮、また倦怠感やうつ症状
  • 不眠症や質の悪い睡眠
  • 食欲不振
  • 性欲減退
  • 免疫力の低下
  • 脱水症状

 


 

 

トレーニング時間と同じくらい大切な回復時間。

プロフェッショナルなコーチなどの監修によりトレーニングを実践しているアスリートではない限り、毎日がトレーニング日である必要はありません。厚生労働省では、成人の適切な運動量の目安として、週2回以上、1回30分以上の息が少しはずむ程度の運動を実践することが推奨されていますが、ジムなどに通っている人やマラソンランナーなどはもっと追い込んでトレーニングをしている人もいますよね。でも、過度な運動が、筋肉や関節、靭帯などに負荷がかかったり、神経系や内分泌系にも悪影響を与えている可能性もあるため[#]anabolichealth. 2018. “Low Testosterone? You Could Be Overtraining.” August 10, 2018. https://breakingmuscle.com/fitness/low-testosterone-you-could-be-overtra.... 、十分な睡眠及び休息日をしっかりと設けることが必要です。朝起きて、少しでも運動に対してネガティブな気持ちを持っている場合は、無理をしないことが大切なのです[#]Hamilton, Andrew. 2017. “Intensive Training: How to Balance It with Rest and Recovery!” March 3, 2017. https://www.sportsperformancebulletin.com/endurance-training/training-st.... 。特に、減量などの特定の目標を持っている人は、自分自身を過度に追い込まないようにしましょう。

 

まとめ~ストイックなオーバートレーニングが及ぼす体への悪影響。~
個々でかなりの差がある運動量ですが、運動不足はだめなのは当然として、オーバートレーニングもコルチゾールレベルの上昇やテストステロンレベル、睡眠の質の低下など決して体には良い影響を与えません。減量などの目標を持って運動を実践することはとても大切ですが、オーバートレーニングのサインを見逃さず、自分を追い込み過ぎることなく休息や回復期間をしっかりと設けることで、運動の成果も実るものなのです。

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