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脂肪を燃焼する「褐色脂肪」 vs 肥満の原因「白色脂肪」
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脂肪を燃焼する「褐色脂肪」 vs 肥満の原因「白色脂肪」

geefee ポイント geefee ポイント

・褐色脂肪がカロリーを消費してくれる
・こうすれば褐色脂肪を増やせる!
・多くの可能性を秘めている褐色脂肪

 

健康的で美しい身体の維持を意識する際に気になるのが体脂肪。多くの人にとってこの体脂肪をいかに減らすかは大きなテーマだと思います。この体脂肪、肥満の原因となる「白色脂肪 (white fat)」と脂肪を燃焼する役割を持つ「褐色脂肪 (brown fat)」の2種類があることをご存じでしたか?この「褐色脂肪」の働きを理解し、それを活性化させることで、肥満に対抗し、また、様々な疾患になりにくい体質を作り出すことができます。今回はこの「褐色脂肪」について詳しくみてみましょう。

 

ほとんどの体脂肪は白色脂肪

一般的に言われている、「脂肪増加=肥満」の脂肪が白色脂肪です。体内の脂肪のほとんどがこの白色脂肪で、余分なエネルギーが蓄えられています。この脂肪は、身体の器官を守る働きもありますが、この過大な貯蓄が肥満につながるだけではなく、心臓疾患、糖尿病などの病気を引き起こす原因にもなります[#]Hruby A, Hu FB. The Epidemiology of Obesity: A Big Picture. Pharmacoeconomics. 2015;33: 673–689.

 

健康寿命を延ばす褐色脂肪は通常は体内に僅かだけ

白色脂肪が体の脂肪のほとんどを占めるのに対し、通常肩や首の周辺にわずかな量だけ存在している茶色、茶褐色をした脂肪が褐色脂肪[#]Saito M. Brown adipose tissue as a therapeutic target for human obesity [Internet]. Obesity Research & Clinical Practice. 2013. pp. e432–e438. doi:10.1016/j.orcp.2013.09.001 。赤ちゃんには比較的多く存在する褐色脂肪ですが、成人になるにつれて減少していきます[#]Saito M. Brown adipose tissue as a therapeutic target for human obesity [Internet]. Obesity Research & Clinical Practice. 2013. pp. e432–e438. doi:10.1016/j.orcp.2013.09.001 。子供が平気で真冬に長時間雪の中で遊んでいるなど、大人よりも寒さに強いように見えるのは、この褐色脂肪細胞がカロリーを消費することで熱を産生して寒さから守ってくれているのが一因だと推測できます[#]Carobbio S, Guénantin A-C, Samuelson I, Bahri M, Vidal-Puig A. Brown and beige fat: From molecules to physiology and pathophysiology [Internet]. Biochimica et Biophysica Acta (BBA) - Molecular and Cell Biology of Lipids. 2019. pp. 37–50. doi:10.1016/j.bbalip.2018.05.013 。厚着をするなど、他の耐寒手段を自らとることが難しい幼児に備わったサバイバルのための能力の一つと言えます。

白色脂肪と違って褐色脂肪は鉄分が豊富でエネルギー代謝の中心的な役割を持つミトコンドリアが多く存在し、熱産生のために脂肪や糖を消費します[#]Vosselman MJ, van Marken Lichtenbelt WD, Schrauwen P. Energy dissipation in brown adipose tissue: from mice to men. Mol Cell Endocrinol. 2013;379: 43–50. 。また、最近の研究では、痩せている人ほどこの褐色脂肪が多く存在し肥満な人ほどその働きが低いと報告されていて(van Marken Lichtenbelt et al. 2009)、褐色脂肪の減少と生活習慣病との関連が注目されています。褐色脂肪の活性化によって体に以下のような恩恵を与えてくれると考えられています。

 

  • エネルギーの消費
    白色脂肪はエネルギーを貯蔵しますが、褐色脂肪は、代謝的熱産生によってエネルギーを消費してくれます[#]Saito M. Brown adipose tissue as a therapeutic target for human obesity [Internet]. Obesity Research & Clinical Practice. 2013. pp. e432–e438. doi:10.1016/j.orcp.2013.09.001  [#]Yoneshiro T, Aita S, Matsushita M, Kayahara T, Kameya T, Kawai Y, et al. Recruited brown adipose tissue as an antiobesity agent in humans. J Clin Invest. 2013;123: 3404–3408. 。この褐色脂肪が増え活性化することで肥満やメタボリックシンドロームの防止につながると示唆されています[#]Saito M. Brown adipose tissue as a therapeutic target for human obesity [Internet]. Obesity Research & Clinical Practice. 2013. pp. e432–e438. doi:10.1016/j.orcp.2013.09.001
     
  • 血糖値を下げ、インシュリン値を改善
    血糖値を下げ、インシュリン値を改善することで、2型糖尿病などのリスクを抑えてくれる可能性があります[#]Giralt M, Villarroya F. White, Brown, Beige/Brite: Different Adipose Cells for Different Functions? [Internet]. Endocrinology. 2013. pp. 2992–3000. doi:10.1210/en.2013-1403  [#]Chondronikola M, Volpi E, Børsheim E, Porter C, Annamalai P, Enerbäck S, et al. Brown adipose tissue improves whole-body glucose homeostasis and insulin sensitivity in humans. Diabetes. 2014;63: 4089–4099. 。さらに動物実験では血中の脂肪を取り除く働きが示されていて、高脂血症も予防してくれる可能性があると考えられています[#]Bartelt A, Bruns OT, Reimer R, Hohenberg H, Ittrich H, Peldschus K, et al. Brown adipose tissue activity controls triglyceride clearance. Nat Med. 2011;17: 200–205.

ただ、残念ながら、この褐色脂肪は年を取るにつれて減少し、増えることがないと考えられています。でも大丈夫。この褐色脂肪と同じ働きをするベージュ脂肪というのが体内に存在することが近年発見され、こちらは増やすことができることが分かっているのです!

 

新たに発見されたベージュ脂肪は褐色脂肪のそっくりさん!

白色脂肪や褐色脂肪とは異なる脂肪細胞で10年程前に発見されたのがベージュ脂肪 (beige fat) [#]Dana-Farber Cancer Institute. "Newly isolated 'beige fat' cells could help fight obesity." ScienceDaily. ScienceDaily, 12 July 2012. . 。このベージュ脂肪の働きは、上記の褐色脂肪と同様に普通の白色脂肪よりもミトコンドリアが多く存在し、脂肪酸や糖を燃焼させて熱を産生します[#]Cereijo R, Giralt M, Villarroya F. Thermogenic brown and beige/brite adipogenesis in humans [Internet]. Annals of Medicine. 2015. pp. 169–177. doi:10.3109/07853890.2014.952328 。白色脂肪が褐色化して生成されるといわれ、白色脂肪組織中に混ざって存在します[#]Carobbio S, Guénantin A-C, Samuelson I, Bahri M, Vidal-Puig A. Brown and beige fat: From molecules to physiology and pathophysiology [Internet]. Biochimica et Biophysica Acta (BBA) - Molecular and Cell Biology of Lipids. 2019. pp. 37–50. doi:10.1016/j.bbalip.2018.05.013

よって、熱産生を行う脂肪は生まれ持って体内に存在し減り続けるという従来から知られている「古典的」な褐色脂肪と、白色脂肪が変化したベージュ脂肪の2種類が存在し、この2種類の総称として「褐色脂肪組織」という用語が一般によく使用されています[#]Giralt M, Villarroya F. White, Brown, Beige/Brite: Different Adipose Cells for Different Functions? [Internet]. Endocrinology. 2013. pp. 2992–3000. doi:10.1210/en.2013-1403 成人には古典的な褐色脂肪は少ししか存在していなく、増やせるかどうかはまだ実験では明らかになっていませんが、寒冷刺激などによって白色脂肪細胞が褐色化しベージュ脂肪細胞へと分化させることができることが分かっています[#]Giralt M, Villarroya F. White, Brown, Beige/Brite: Different Adipose Cells for Different Functions? [Internet]. Endocrinology. 2013. pp. 2992–3000. doi:10.1210/en.2013-1403 。つまり、既に存在する褐色脂肪組織を活性化させ、白色脂肪をベージュ脂肪に変えていくことが、体重減少のカギとなりうるわけです。

 

褐色脂肪組織を活性化させる方法

エネルギーを消費する褐色脂肪組織(褐色脂肪&ベージュ脂肪)とエネルギーを貯蓄する白色脂肪。では、どうやって褐色脂肪組織を活性化し、白色脂肪をベージュ脂肪に変えることができるのでしょうか?​

1.体を冷やす

Liquid Conditioned Suit(冷水を循環させて体温を調整する器具)を使って毎日体を10℃に2時間保ち4週間実験を行ったところ、褐色脂肪組織の活性が1.4倍に増加[#]Blondin DP, Labbé SM, Tingelstad HC, Noll C, Kunach M, Phoenix S, et al. Increased Brown Adipose Tissue Oxidative Capacity in Cold-Acclimated Humans. J Clin Endocrinol Metab. The Endocrine Society; 2014;99: E438. 、また別の実験では、6週間、17℃の低温室で毎日2時間の寒冷刺激を与えたところ、褐色脂肪組織の活性が1.2倍位~2.1倍も増加し、体脂肪率が5%減少したという結果[#]Yoneshiro T, Aita S, Matsushita M, Kayahara T, Kameya T, Kawai Y, et al. Recruited brown adipose tissue as an antiobesity agent in humans. J Clin Invest. 2013;123: 3404–3408. から、身体をある一定の時間冷やすことで褐色脂肪が活性化するということが分かっています。

しかし、同様の実験で、体重・体脂肪の変化がない結果[#]Lee P, Smith S, Linderman J, Courville AB, Brychta RJ, Dieckmann W, et al. Temperature-acclimated brown adipose tissue modulates insulin sensitivity in humans. Diabetes. 2014;63: 3686–3698. も混在し、必ずしも褐色脂肪細胞の活性化が体重減少につながるか明確ではなく、今でも研究が続いています。

また、他の研究によると、17℃~19℃の低温室で2時間身体を冷やすことで体内で消費されるブドウ糖が15倍に増加すると報告されています[#]Virtanen KA, Lidell ME, Orava J, Heglind M, Westergren R, Niemi T, et al. Functional brown adipose tissue in healthy adults. N Engl J Med. 2009;360: 1518–1525.

-クライオセラピー-
以前、体験レビューでもお伝えした「クライオセラピー」。これは。体をマイナス170度の冷気にさらすことで身体を一瞬で冷やし代謝を改善するという冷却セラピーです。2, 3分程度で最大800キロカロリーの消費が可能と言われ、ダイエット、疲労回復、アンチエイジングに適した健康法と一部の健康マニアの間で評判です。

【関連記事】「アメリカ発!話題の最新治療法「クライオ セラピー」

家庭でも冷たいシャワーを浴びたりアイスバスに入るなど、褐色脂肪組織を活性化させる方法はたくさんありますが、心臓が弱い方や体調不良の場合などは控えましょう。


 

2.有酸素運動をする

マウスによる研究の報告によると、イリシンというたんぱく質の酵素が白色脂肪をベージュ脂肪へと変換する可能性があることが分かっています[#]Boström P, Wu J, Jedrychowski MP, Korde A, Ye L, Lo JC, et al. A PGC1-α-dependent myokine that drives brown-fat-like development of white fat and thermogenesis [Internet]. Nature. 2012. pp. 463–468. doi:10.1038/nature10777 。筋肉から分泌される運動ホルモンであるイリシンは、有酸素運動直後に増加する研究結果も発表されています[#]Blizzard LeBlanc DR, Rioux BV, Pelech C, Moffatt TL, Kimber DE, Duhamel TA, et al. Exercise-induced irisin release as a determinant of the metabolic response to exercise training in obese youth: the EXIT trial. Physiol Rep. 2017;5. doi:10.14814/phy2.13539

 

この褐色脂肪は、まだまだ研究段階ではあるにしろ多くの可能性が秘められています。褐色脂肪組織を活性化させ増やすことで、体重だけではなくその他の健康効果が期待できます。まずは、簡単にできる冷たいシャワー等で試してみるのも良いかも。例えばシャワーの最後の30秒は冷たい水にし、毎週さらに15秒ずつ増やしていくとか。でも、くれぐれも体調管理には注意してくださいね!

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