腎臓結石の形成の危険因子と抑制因子
尿路結石症の発症の予防や症状の改善の鍵は腎臓結石の形成の抑制です。以下のようなポイントが腎臓結石の形成の危険因子及び抑制因子となる可能性があると言われています。
シュウ酸カルシウムの摂取を抑えカルシウムを摂取
腎臓内で一番形成されやすいと言われているのがシュウ酸カルシウム結石。このシュウ酸カルシウム結石は、腸から吸収されたシュウ酸が腎臓でカルシウムと結合し形成されるため、シュウ酸が多く含まれるほうれん草などの葉菜類の野菜、ケールやカリフラワーなどのアブラナ科の野菜、ナッツ類、ブラックペッパー、チョコレート、お茶などの過剰摂取はシュウ酸カルシウム結石の形成の要因となります[#]“3 再発予防 CQ29 シュウ酸はどのような食物に多く含まれるか?また,シュウ酸の摂取について工夫すべきことはあるか?.” n.d. Accessed June 28, 2021. https://minds.jcqhc.or.jp/n/cq/D0003085. 。野菜の場合、熱を通して調理をするとシュウ酸量が減りますので、しっかりボイルすることがおススメです。また、カルシウムの摂取を控えると結石の形成のリスクが抑えられると勘違いされがちですが、これは間違い。結石の形成を妨げるためにカルシウムの摂取を抑えると栄養不足になる恐れがあると同時に、シュウ酸とカルシウムを一緒に摂取することで、シュウ酸とカルシウムが腎臓で吸収・結合される前に胃と腸で両者が結合され排出されるため、カルシウムの摂取は特に控える必要はないのです。とにもかくにも控えるべきはシュウ酸[#]“Calcium Oxalate Stones.” 2021. May 27, 2021. https://www.kidney.org/atoz/content/calcium-oxalate-stone. 。
また、シュウ酸は、さまざまな健康リスクが伴う可能性のある避けるべき反栄養素の1つ。摂取過多は結石の形成のリスクに限らず、体に様々な悪影響を与える可能性も。シュウ酸が多めの食品を食べる際は、調理法などでシュウ酸を減らす工夫をしてみてくださいね。
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シュウ酸カルシウムの形成を阻害するクエン酸
野菜やレモンやライムなどの柑橘系のフルーツから摂取できるクエン酸は、尿中のカルシウムと結合して結石のリスクを軽減する可能性があると言われています[#]Gul, Z., and M. Monga. 2014. “Medical and Dietary Therapy for Kidney Stone Prevention.” Korean Journal of Urology 55 (12). https://doi.org/10.4111/kju.2014.55.12.775. 。また、形成されたシュウ酸カルシウムの結晶と結合し成長するのを阻害する働きも[#]Gul, Z., and M. Monga. 2014. “Medical and Dietary Therapy for Kidney Stone Prevention.” Korean Journal of Urology 55 (12). https://doi.org/10.4111/kju.2014.55.12.775. 。以前の記事でもお伝えしましたが、クエン酸は天然由来と人工の2種類あります。人工のものは安価で食品添加物としてよく使用されていますが、健康リスクも報告されています。クエン酸を摂取するのであればレモンをちょっと絞って料理に使うなど天然のものを摂取するようにしましょう。
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高用量のビタミンCサプリメントの摂取を控える
ある研究によると、ビタミンCに含まれているアスコルビン酸は体内でシュウ酸塩に変換される可能性があることが指摘されているため、長期間にわたる高用量のビタミンCの摂取は結石の形成を促進する可能性が指摘されていますが[#] Massey, L. K., M. Liebman, and S. A. Kynast-Gales. 2005. “Ascorbate Increases Human Oxaluria and Kidney Stone Risk.” The Journal of Nutrition 135 (7). https://doi.org/10.1093/jn/135.7.1673. [#]Baxmann, A. C., C. De O G Mendonça, and I. P. Heilberg. 2003. “Effect of Vitamin C Supplements on Urinary Oxalate and pH in Calcium Stone-Forming Patients.” Kidney International 63 (3). https://doi.org/10.1046/j.1523-1755.2003.00815.x. 、これはサプリメントなどで高用量のビタミンCの摂取をした場合。レモンなどの食品からの摂取は腎臓結石のリスクと関連していないという研究結果があるため[#]Ferraro, P. M., G. C. Curhan, G. Gambaro, and E. N. Taylor. 2016. “Total, Dietary, and Supplemental Vitamin C Intake and Risk of Incident Kidney Stones.” American Journal of Kidney Diseases: The Official Journal of the National Kidney Foundation 67 (3). https://doi.org/10.1053/j.ajkd.2015.09.005. 、腎臓結石の疑いがある人でビタミンCサプリメントなどを常飲している人は、サプリメントの量を抑えるか天然のレモンからビタミンCを摂取した方が良いかも。上記のクエン酸の恩恵も受けることができます。
飲み物にも留意
誰でもできる一般的な予防策が水分。多くの水を摂取することで尿中の結石形成物質の結晶化が軽減されると言われています[#] Han, H., A. M. Segal, J. L. Seifter, and J. T. Dwyer. 2015. “Nutritional Management of Kidney Stones (Nephrolithiasis).” Clinical Nutrition Research 4 (3). https://doi.org/10.7762/cnr.2015.4.3.137. 。しかし、すべての飲み物が当てはまるわけではありません。砂糖や人工甘味料が含まれた炭酸飲料水などは腎臓結石のリスクの増加に繋がるだけでなく[#] Saldana, T. M., O. Basso, R. Darden, and D. P. Sandler. 2007. “Carbonated Beverages and Chronic Kidney Disease.” Epidemiology 18 (4). https://doi.org/10.1097/EDE.0b013e3180646338. 、フルーツジュースなども同様にリスクの増加の可能性が報告されています[#]Johnson, Richard J., Santos E. Perez-Pozo, Julian Lopez Lillo, Felix Grases, Jesse D. Schold, Masanari Kuwabara, Yuka Sato, et al. 2018. “Fructose Increases Risk for Kidney Stones: Potential Role in Metabolic Syndrome and Heat Stress.” BMC Nephrology 19. https://doi.org/10.1186/s12882-018-1105-0. 。これはフルーツジュースに含まれる果糖が原因。よって、果糖の摂取源であるフルーツなどもリスク要因となりえます。以前の記事で果糖を摂取すべきではない理由を説明しているのでご参考に。
また、コーヒーや紅茶などに含まれるカフェインは、腎臓結石のリスクになり得るという研究結果がある一方で、リスクを軽減する可能性があると結論付けられてる研究結果もあるため[#]Ferraro, Pietro Manuel, Eric N. Taylor, Giovanni Gambaro, and Gary C. Curhan. 2014. “Caffeine Intake and the Risk of Kidney Stones.” The American Journal of Clinical Nutrition 100 (6): 1596. 、適度の量であればあまり気にする必要はなさそう。
特に、診断で小さな腎臓結石が見つかった人や、一度発症している人は以上のような結石が形成される要因や予防策を参考に食事パターンや生活習慣の改善を心掛けてみてください。腎臓結石が発見されていない人はとりわけ意識する必要はなさそうですが、遺伝性による発症率が高いことも報告されているので[#]Curhan, G. C., W. C. Willett, E. B. Rimm, and M. J. Stampfer. 1997. “Family History and Risk of Kidney Stones.” Journal of the American Society of Nephrology: JASN 8 (10). https://doi.org/10.1681/ASN.V8101568. 、家族に発症歴がある人は、完全には安心はできません。意識的に対策をしてみても良いかも。
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