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お酒を飲むと眠れる、はとっても危険な習慣!徹底解説!アルコールと睡眠
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お酒を飲むと眠れる、はとっても危険な習慣!徹底解説!アルコールと睡眠

geefee ポイント geefee ポイント

・ノンレム睡眠は脳の睡眠、レム睡眠は体の睡眠
・睡眠不足は疲労回復の要である成長ホルモンの生成を妨げる
・深酒をした後の睡眠ではレム睡眠が少なくなり疲れがとれない
・お酒を飲んで寝ると成長ホルモンがほとんど放出されない
・寝酒は深刻な睡眠障害を引き起こす可能性も
・アルコールには中毒性と耐性がある
 

 

寝つきをよくするために寝酒を習慣にしているという人もいると思います。「寝酒」や「ナイトキャップ」という言葉が浸透しているとおり、アルコールは脳中枢の機能を低下させ、眠気を誘う作用があります[#]内村直尚. アルコール依存症に関連する睡眠障害. 精神神經學雜誌. 2010; 112(8): 787-792. 。「睡眠薬は依存性があるから[#]厚⽣労働科学研究・障害者対策総合研究事業「睡眠薬の適正使⽤及び減量・中止のための診療ガイドラインに関する研究班」および日本睡眠学会・睡眠薬使用ガイドライン作成ワーキンググループ. 睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン -出口を⾒据えた不眠医療マニュアル- [Internet]. [cited 27th July 2018]. Available from: http://www.jssr.jp/data/pdf/suiminyaku-guideline.pdf 」という理由でアルコールを睡眠薬代わりにしている人も少なくないでしょう。しかし、寝酒の習慣は、アルコール依存症や、深刻な睡眠障害を引き起こす原因にもなりかねません[#]内村直尚. アルコール依存症に関連する睡眠障害. 精神神經學雜誌. 2010; 112(8): 787-792. 。今回は、眠りのメカニズムと、睡眠前のアルコール摂取がなぜ良くないのかについて解説していきます。

 

脳の睡眠=ノンレム睡眠、体の睡眠=レム睡眠

皆さんご存じの通り、睡眠は「ノンレム睡眠」「レム睡眠」の2つのステージに分かれています[#]Kryger MH, Roth T, Dement WC. Principles and practice of sleep medicine. 4th ed. Philadelphia: Elsevier Saunders; 2005. ノンレム睡眠は一般に脳の睡眠といわれており、脳を休ませる段階です。脳が休憩している間には次のような良い効果があります[#]Kryger MH, Roth T, Dement WC. Principles and practice of sleep medicine. 4th ed. Philadelphia: Elsevier Saunders; 2005.  [#]高橋康郎. 成長ホルモンの分泌リズム. 臨床検査, 1986; 30(8): 825-830.

 

  • 成長ホルモンが生成される
  • 毒素の排出が行われる
  • 記憶の整理が行われる

 

ヒトが眠っている間には、様々なホルモンが生成されます。特に成長ホルモンは疲労回復の要であり、皮膚の修復や、筋組織、血管の修復、骨の再生などを助けてくれる重要なホルモンです[#]Birznice V, Nelson AE, HO KK. Growth hormone and physical performance. Trends in Endocrinology & Metabolism. 2011; 22(5): 171-178.  [#]厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト e-ヘルスネット. アルコールの吸収と分解 [Internet]. [cited 2nd August 2018]. Available from: https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-02-002.html 。「睡眠不足は美容の大敵」といわれる理由は、睡眠不足ではこの成長ホルモンをはじめとするホルモン分泌や自律神経に乱れが起こり、ダメージを受けたまま修復ができないため、しわやシミの原因となるからなのです[#]Makrantonaki E, Zouboulis CC. Molecular mechanisms of skin aging. Annals of the New York Academy of Sciences. 2007; 1119(1): 40-50.

さらに、寝ている間に脳の記憶の整理が行われることで、記憶力がアップするといわれています。睡眠不足では、記憶の整理がうまく行われず、日中の生産性が低下します[#]Stevenson S. Sleep Smarter 21 Essential Strategies to Sleep Your Way to a Better Body, Better Health, and Bigger Success. London: Hay House UK; 2014. 。新しい情報を学んだとしても、それが記憶として定着しにくく、同じミスを何回も繰り返したり、作業が覚えられなかったりすることで効率が下がるのです[#]Dawson D, Reid K. Fatigue, alcohol and performance impairment. Nature. 1997; 388: 235.  [#]Killgore WDS, Kahn-Greene ET, Lipizzi EL, Newman RA, Kamimori GH, Balkin TJ. Sleep deprivation reduces perceived emotional intelligence and constructive thinking skills. Sleep Medicine. 2007; 9: 517-526.  [#]Kuriyama K, Soshi T, Kim Y. Sleep deprivation facilitates extinction of implicit fear generalization and physiological response to fear. Biological Psychiatry. 2010; 68: 991-998.

睡眠の段階はレム睡眠、ノンレム睡眠、それぞれ1セット約90分のサイクルとなっています。眠り始めの3時間は脳の睡眠=ノンレム睡眠が多く現れ、後半では主に体の睡眠=レム睡眠が多く現れます。1回の眠りでこのノンレム・レム睡眠のサイクルは2~4回現れるとされており、脳と体の両方をバランスよく休ませるためには、一定以上睡眠時間を確保する必要があることが分かります [#]Kryger MH, Roth T, Dement WC. Principles and practice of sleep medicine. 4th ed. Philadelphia: Elsevier Saunders; 2005.

 

アルコールと眠りの関係は?

睡眠のメカニズムと効果については、以上の通りですが、ではアルコールはどのように睡眠に影響を与えるのでしょうか。アルコールには脳の中枢神経の働きを低下させる作用があり、そのためアルコールを摂取すると眠くなるのです[#]内村直尚. アルコール依存症に関連する睡眠障害. 精神神經學雜誌. 2010; 112(8): 787-792. 。確かにアルコールには入眠を促す作用がありますが、実際には弊害のほうが多く、睡眠サイクルを狂わせたり、睡眠障害を引き起こしたり、目が覚めている時の生活の質の低下を引き起こしたりするとされています[#]Stevenson S. Sleep Smarter 21 Essential Strategies to Sleep Your Way to a Better Body, Better Health, and Bigger Success. London: Hay House UK; 2014.  [#]Roehrs T, Roth T. Sleep, sleepiness, sleep disorders and alcohol use and abuse. Sleep Medicine Review. 2001; 5: 287–97.  [#]近藤英明, 神林 崇, 清水徹男.アルコールと睡眠障害. 成人病と生活習慣病. 2004; 34: 1497–500.  [#]厚生労働省. 健康づくりのための睡眠指針 2014 [Internet]. [cited 30th July 2018]. Available from: https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/000004...

寝酒、ナイトキャップという習慣は世界中にあります。確かにアルコールには寝つきを早めてくれる効果があります。さまざまな研究で、アルコールを摂取した人が、寝入りばな数時間では、中途覚醒(途中で目覚めること)が少ないという結果が出ています[#]内村直尚. アルコール依存症に関連する睡眠障害. 精神神經學雜誌. 2010; 112(8): 787-792.  [#]Landolt HP, Roth C, Dijk DJ, Borbely AA. Late-afternoon ethanol intake affects nocturnal sleep and the sleep EEG in middle-aged men. Journal of Clinical Psychopharmacology. 1996; 16; 428-436.

一方で、後半には頻繁に目が覚めたり、再び眠つけなくなるなど負の影響のほうが強いことが認められています[#]Roehrs T, Roth T. Sleep, sleepiness, sleep disorders and alcohol use and abuse. Sleep Medicine Review. 2001; 5: 287–97.  [#]近藤英明, 神林 崇, 清水徹男.アルコールと睡眠障害. 成人病と生活習慣病. 2004; 34: 1497–500.  [#]Van Reen E, Jenni OG, Carskadon MA. Effects of alcohol on sleep and the sleep electroencephalogram in healthy young women. Alcoholism: Clinical and Experimental Research. 2006; 30: 974-981. 。これは、アルコールを飲んでから眠りに入った数時間後に、体がアルコールの分解を始めるためだとされています[#]厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト e-ヘルスネット. アルコールの吸収と分解 [Internet]. [cited 2nd August 2018]. Available from: https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-02-002.html 。深酒後に寝入ってから、のどの渇きを覚えて夜中に目が覚めた経験はありませんか? これは、アルコールが分解された結果、アセトアルデヒドという物質が交感神経を刺激するためと考えられています[#]Williams DL, MacLean AW, and J. Cairns. Dose-response effects of ethanol on the sleep of young women. Journal of studies on alcohol. 1983; 44(3): 515-23.  [#]Roehrs T, Yoon J, Roth T. Nocturnal and Next-Day Effects of Ethanol and Basal Level of Sleepiness. Human Psychopharmacology-Clinical and Experimental. 1991; 6(4): 307-311. 。また、アルコールには利尿作用がありますので、尿意を感じて途中で目が覚めてしまうことも頻発します[#]Stein MD, Friedmann PD. Disturbed sleep and its relationship to alcohol use. Substance abuse. 2005; 26: 1-13.

 

 

アルコール摂取後のノンレム睡眠とレム睡眠

ヒトの睡眠では、ノンレム睡眠とレム睡眠をバランスよくとることが重要だと冒頭にお話ししました。それでは、アルコールはこの睡眠サイクルにどのような影響を与えるのでしょうか? 

通常アルコールを摂取すると、寝入りばなではノンレム睡眠は増加する一方、レム睡眠は減少してしまいます。ごく軽くひっかける程度であれば、レム睡眠への影響はあまりありませんが、深酒をした後の睡眠ではレム睡眠がとても少なくなるということが知られています[#]Stevenson S. Sleep Smarter 21 Essential Strategies to Sleep Your Way to a Better Body, Better Health, and Bigger Success. London: Hay House UK; 2014.  [#]Mendelson WB. Human sleep: Research and Clinical Care. New York: Plenum Medical Book; 1987.  [#]Pokorny AD. Sleep disturbances and alcoholism: A review. Sleep Disorders. Diagnosis and Treatment. New York: JohnWiley& Sons; 1978.

 

お酒を飲んだ後は成長ホルモンが生成されない!?

先述の通り睡眠時には様々なホルモンが生成されます。特に成長ホルモンは傷ついた筋肉や血管、細胞を修復してくれるので、夜一定時間寝ることは必要不可欠です。そして、この成長ホルモンは主にノンレム睡眠中に放出のピークを迎えます[#]杉晴夫. 人体機能生理学 改訂第4版. 東京: 株式会社南江堂; 2004.

先ほど、アルコール摂取後にはノンレム睡眠が増加すると言いました。「じゃあ、お酒を飲んだらやっぱり睡眠にいい影響があるんじゃない?」とお思いですか? いいえ、残念ながらこの成長ホルモンはお酒を飲んだ後にはほとんど生成されないのです。

「ノンレム睡眠が多くなるから、寝る前にお酒を飲んでも良い!」というわけではなく、ノンレム睡眠は増加しますが、睡眠中に私たちの体を修復してくれる成長ホルモンはほとんど放出されないため、筋肉や細胞などに疲労がたまったままで回復しない睡眠となるのです。お酒を飲んだ後、何だか目覚めがすっきりしないとか休んだ気がしないというのはこのためです。

 

寝酒が睡眠時無呼吸症候群を悪化させる場合も

寝酒の習慣は、日々の睡眠の質を低下させるだけでなく、睡眠時無呼吸症候群や不眠など深刻な睡眠障害を引き起こす可能性があります

いつもはかかないけれど、お酒を飲んだ後にはいびきがひどい、という経験はありませんか? 睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に呼吸が止まったり低呼吸になったりする病気です。いびきがひどかったり、時には10秒から30秒、もしくはそれ以上長い間呼吸が止まってしまいます。首やのどの周りの筋肉が緩んでしまうことで、空気の通り道が狭くなり、いびきをかいてしまったり、一時的に完全に無呼吸になってしまったりするのです[#]宮崎総一郎. 睡眠呼吸障害の病態と外科治療. 耳鼻咽喉科展望. 2002; 45(1): 10-17.

ただでさえ、睡眠時には体中の筋肉が緩みます。その上アルコールを摂取してしまうと、脳の機能が低下していますから、息苦しくてもなかなか目覚められません。普段から睡眠時無呼吸症候群を患っている人にとっては、アルコールは非常に危険で、症状を悪化させる原因となりえます[#]Tsutsumi W, Miyazaki S, Itasaka Y, Togawa K. Influence of alcohol on respiratory disturbance during sleep. Psychiatry and clinical neurosciences. 2000; 54(3): 332-333.  [#]Issa FG, Sullivan CE. Alcohol, snoring and sleep apnea. Journal of Neurology, Neurosurgery, and Psychiatry. 1982; 45: 353-359.  [#]American Sleep Disorders Association. International Classification of Sleep Disorders: Diagnostic and Coding Manual. 2. Westchester: American Academy of Sleep Medicine; 2005.

 

アルコールの中毒性と耐性に注意!

不眠とは、「寝つきが悪い」「夜中に目が覚める」「一度目覚めると眠れない」「朝早く目覚め、日中眠気がある」などの症状に代表される睡眠障害です[#]Soldatos CR, Allaert FA, Ohta T, Dikeos DG. How do individuals sleep around the world? Results from a single-day survey in ten countries. Sleep Medicine. 2005; 6: 5-13. 。不眠に悩む人の多くが、症状を緩和させるために寝る前にお酒を飲んでいます。睡眠薬よりもお酒のほうが安全という認識が広まっているためでしょう。不眠を訴える患者の約30%は、寝つきをよくするために寝酒の習慣があったと答えており、不眠とアルコールの関係はかなり強いものなのです[#]内村直尚. アルコール依存症に関連する睡眠障害. 精神神經學雜誌. 2010; 112(8): 787-792.

アルコールを摂取すると始めの数時間は寝つきがよくなり、眠りが深くなります。しかし、本来のレム睡眠、ノンレム睡眠のリズムが崩れ、ゆがみが生じます。注意しなければいけないことは、アルコールには中毒性と耐性があるということです[#]内村直尚. アルコール依存症に関連する睡眠障害. 精神神經學雜誌. 2010; 112(8): 787-792. 。寝つきをよくするためにアルコールを飲んでいても、次第に効果が見られなくなり、眠るためによりたくさんのアルコールを必要とするようになるのです。

そして恐ろしいことに、寝酒の習慣をやめると今度はさらに寝つきが悪くなり、お酒を飲まずには寝られないという悪循環に陥ります。習慣的にお酒を飲み続けると、最悪の場合、アルコール依存症になりかねません[#]内村直尚. アルコール依存症に関連する睡眠障害. 精神神經學雜誌. 2010; 112(8): 787-792. 。不眠だからと寝酒を習慣にしている人は睡眠外来を訪ねることをお勧めします。geefeeの睡眠ハックの記事もぜひご参考にしてみてください。

ストレスの多い現代社会では、心配事が多すぎて眠れない、睡眠時間が足りない、アルコールに頼らざるを得ないという人が多いのが現状です。しかしながら、睡眠の質をよくすると思われている寝酒の習慣には、実はアルコール依存症や、深刻な睡眠障害を引き起こす負の可能性が隠されています。朝までぐっすり眠るということは、われわれの心と体の健康を維持するために不可欠なものです。今一度睡眠習慣を見直し、アルコールに頼らない睡眠を心がけましょう。

 

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