自己免疫疾患など様々な困難な慢性病の原因になっているのではないかと言われているにも関わらず、多くの人が気づかずにかかっているSIBO(小腸細菌異常増殖)。慢性の下痢や便秘に苦しんでいる人、胃腸のガスの発生が気になる人などは、SIBOが原因の可能性があります。
【関連記事】「おならやげっぷがよく出るあなた、SIBO(小腸内細菌異常増殖症)かも。」
今回はSIBOになったら、対応にどのような選択肢があるかについてお話します。やっと一部の医療関係者の間でSIBOは深刻な病気として認知されては来ているものの、その治療法については専門家の間でもまだ所説あり、唯一無二のものが確立されていないのが実情です。抗生物質の投与というある意味「荒治療」で一時的に治ったかのように思えても、再発を繰り返し、慢性化する傾向も見られます。SIBOの治療方法は、研究とその結果の積み重ねで日々進化しています。欧米を中心にSIBOへの対応方法として効果があると現在考えられているものをご紹介しましょう。
一般的にはFODMAPに則った食事療法と抗生物質
現在の欧米でのSIBOの一般的な治療は、まずFODMAPという「SIBOで避けるべき食品リスト」に従った食事制限を行い、それと並行して抗生物質(リファキシミンなど)の投与が行われます。抗生物質で腸内細菌を撃滅し、食事によって細菌が繁殖しにくい小腸内環境を作ります。ただ、短期的効果が著しいかわりに大腸内の善玉菌までをも巻き込んでしまうことや、その後の再発率が高いなどの問題が指摘されています[#]Lauritano EC, Gabrielli M, Scarpellini E, et al. Small intestinal bacterial overgrowth recurrence after antibiotic therapy. Am J Gastroenterol. 2008 Aug;103(8):2031-5. [#]Agamennone V, Krul CAM, Rijkers G, et al. A practical guide for probiotics applied to the case of antibiotic-associated diarrhea in The Netherlands. BMC Gastroenterol. 2018 Aug 6;18(1):103. [#]Grace E, Shaw C, Whelan K, Andreyev HJ. Review article: small intestinal bacterial overgrowth--prevalence, clinical features, current and developing diagnostic tests, and treatment. Aliment Pharmacol Ther. 2013 Oct;38(7):674-88. 。
現代におけるSIBOのハーブ療法
色々な文化圏で古くから病気の治療に用いられてきた植物があります。それがハーブで、東洋では漢方の素材として用いられるものなど、古くからその健康への効果が知られている植物たちです。抗生物質とハーブ療法を4週間にわたり実施し比較した臨床試験の結果として、「ハーブ療法は、少なくとも抗生物質のリファキシミンと同程度に有効」[#]Chedid V, Dhalla S, Clarke JO, et al. Herbal therapy is equivalent to rifaximin for the treatment of small intestinal bacterial overgrowth. Glob Adv Health Med. 2014 May;3(3):16-24. との見解が示されており、健康維持に大切な大腸の腸内細菌への悪影響も少ないであろう、とも推察しています[#]Chedid V, Dhalla S, Clarke JO, et al. Herbal therapy is equivalent to rifaximin for the treatment of small intestinal bacterial overgrowth. Glob Adv Health Med. 2014 May;3(3):16-24. 。欧米ではこうしたハーブを用いた療法が一部の医療機関で行われています。
ハーブには植物ごとにさまざまな効能があります。SIBOの治療に有効なものは、抗菌作用に優れているハーブ類です[#]Chedid V, Dhalla S, Clarke JO, et al. Herbal therapy is equivalent to rifaximin for the treatment of small intestinal bacterial overgrowth. Glob Adv Health Med. 2014 May;3(3):16-24. [#]Chen C, Tao C, Liu Z, et al. A Randomized Clinical Trial of Berberine Hydrochloride in Patients with Diarrhea-Predominant Irritable Bowel Syndrome. Phytother Res. 2015 Nov;29(11):1822-7. 。抗菌作用を持つ代表的な植物成分としてベルベリン[#]Yang Y, Ye XL, Li XG, et al. Synthesis and antimicrobial activity of 8-alkylberberine derivatives with a long aliphatic chain. Planta Med. 2007 Jun;73(6):602-4. [#]Baser KH. Biological and pharmacological activities of carvacrol and carvacrol bearing essential oils. Curr Pharm Des. 2008;14(29):3106-19. [#]Han J, Lin H, Huang W. Modulating gut microbiota as an anti-diabetic mechanism of berberine. Med Sci Monit. 2011 Jul;17(7):RA164-7. が知られています。ベルベリンを含むハーブは、古代より南米で止瀉薬(下痢止め)として利用されてきました[#]Yamamoto K, Takase H, Abe K, et al. Pharmacological studies on antidiarrheal effects of a preparation containing Berberine and Geranii Herba. Folia pharmacol. japon. 101, 169-175 (1993) 。漢方薬の配合成分となる生薬のキハダや、オウレンなどにも含まれます。ベルベリンは、それを含む個別のハーブではなく、ベルベリン成分を中心に抽出したサプリ形式のものがおすすめ。
また、抗菌作用の強いハーブとして、ニーム[#]Baswa M, Rath CC, Dash SK, Mishra RK. Antibacterial activity of Karanj (Pongamia pinnata) and Neem (Azadirachta indica) seed oil: a preliminary report. Microbios. 2001;105(412):183-9. [#]Mahfuzul Hoque MD, Bari ML, Inatsu Y, et al. Antibacterial activity of guava (Psidium guajava L.) and Neem (Azadirachta indica A. Juss.) extracts against foodborne pathogens and spoilage bacteria. Foodborne Pathog Dis. 2007 Winter;4(4):481-8. とオレガノ[#]Arcila-Lozano CC, Loarca-Piña G, Lecona-Uribe S, et al. Oregano: properties, composition and biological activity. Arch Latinoam Nutr. 2004 Mar;54(1):100-11. [#]Saeed S, Tariq P. Antibacterial activity of oregano (Origanum vulgare Linn.) against gram positive bacteria. Pak J Pharm Sci. 2009 Oct;22(4):421-4. が挙げられます。オレガノは香辛料としてよく使われますが、オレガノオイルの錠剤も購入できます。
ニンニクも抗菌作用が強い食材です。この抗菌作用にはアリシンという有効成分が大きくかかわっています。なお、ニンニクはそのままだとFODMAPが含まれるため、アリシンだけを抽出したサプリ形式のものが必要です。
また、ひとつのハーブだけではなく、複数のハーブを組み合わせて摂ることが、それぞれの作用の違いで相乗効果を生み出すことができると考えられていますので効果的と考えられています[#]Chedid V, Dhalla S, Clarke JO, et al. Herbal therapy is equivalent to rifaximin for the treatment of small intestinal bacterial overgrowth. Glob Adv Health Med. 2014 May;3(3):16-24. [#]Kalemba D, Kunicka A. Antibacterial and antifungal properties of essential oils. Curr Med Chem. 2003 May;10(10):813-29. [#]Schillaci D, Napoli EM, Cusimano MG, et al. Origanum vulgare subsp. hirtum essential oil prevented biofilm formation and showed antibacterial activity against planktonic and sessile bacterial cells. J Food Prot. 2013 Oct;76(10):1747-52. 。
ハーブ治療の具体的方法
SIBOの抑制に有用な容量を4週間継続して摂ると良いでしょう。具体的容量はそれぞれのサプリの推奨容量の上限が一つの目途になります[#]“Herbal Antibiotics.” n.d. SIBO- Small Intestine Bacterial Overgrowth. Accessed April 25, 2019. https://www.siboinfo.com/herbal-antibiotics.html. 。 このようなハーブ療法を普段の生活に取り入れることで、SIBOを重症化するのを防ぎ、小腸の働きを正常化する効果が期待できます。
SIBOのハーブ療法で注意すべき点
ベルベリンは、O157などの出血性大腸炎や細菌性下痢症では、症状の悪化を招くおそれがあるため、服用に際しては医師による診断を仰ぎましょう。また、自己判断でSIBOと断定してこれらの療法を始める場合には自己責任ですのでご注意を。可能な限り検査を受け、SIBOであることが確認できてから取り組むことをお勧めします。ただし、FODMAP食品の食事制限については数週間継続してもマイナスの副作用は考えにくいので、これをやってみて少しでも症状が改善した場合にはSIBOを疑うべきでしょう。
また、医師に処方されて一度飲み始めた抗生物質を自身の判断で止めないようにしましょう。
geefee推奨の低糖質ダイエットやMCTオイルを摂る生活はSIBOに良い
脂質は(糖質と違って)一般にSIBOの原因となる細菌の餌にはならないため、SIBOに対抗する食生活の中での大切なエネルギー源となります。その中でも、様々な健康効果が期待できるMCTオイルは抗菌効果が高いオイルで、SIBOの人も注目すべきと考えます。ハーブとともに日常に取り入れることでSIBOを抑える効果や、空腹感に対抗する効果も期待できるでしょう。
【関連記事】「ココナッツオイルを越えると話題のMCTオイルの5つの効能とは?」
【関連記事】「劇的なダイエット効果があると話題のケトーシス状態がもたらす体の変化と注意点」
発酵食品やプロバイオティクス製品は逆効果になることも
発酵食品や、乳酸菌などのプロバイオティクス製品は、なんとなく胃腸に良さそうなイメージがありますよね。ヨーグルト、漬物、ケフィア、コンブチャ、キムチ、ザウアークラウトなどは健康雑誌などでも腸を整える効果があると特集されていますが、細菌が発生し過ぎている状態のSIBOを患った小腸内で菌のエサとなったり菌を加えることになり、症状が悪化する原因になりかねません。特にプロバイオティクス製品は、胃腸が不調な人が使っている場合が多いわけですが、実はこれらの製品が不調の原因だった、ということもありうるのです。一方、SIBOがコントロールできてから、腸内環境維持とSIBOの再発防止策として、段階的に取り入れることを推奨する専門家もいます。なお、この点は所説あり、プロバイオティクスがSIBOにも有効とする医者も少なからず存在します。その場合でも具体的にどのような種類の細菌を摂るべきかが厳密に特定されていることが多いので、やみくもにプロバイオティクスを摂ることだけはやめましょう。
SIBOの原因はひとつではありません。SIBOになった原因を特定するには、日常の食事内容から問題のある食品(つまりFODMAP食品[link to SIBO article] )の有無を発見し、適切な食事制限をすることが最初のステップです。それでも症状が治まらない場合には、抗菌性の高いハーブ系のサプリを上手に使うことも検討する価値があると考えます。
コメント
コメントを追加