Skip to navigation メインコンテンツに移動
『12 Rules for Life: An Antidote to Chaos 』 ジョーダン・B・ピーターソン著

『12 Rules for Life: An Antidote to Chaos(人生の12のルール:カオスへの対抗法)』 ジョーダン・B・ピーターソン著

 

昔から米国人は自己啓発系の本を好む傾向が見られます。『人を動かす』や『道は開ける』などの著書で有名なデール・カーネギーは日本でも良く知られていますが、米国の書店に行くと自己啓発書コーナーがとても広いのにいつも驚かされます。

そんな米国で今ベストセラーになっているのがこの自己啓発本。著者はカナダ人の心理学者でトロント大学教授。米国のハーバード大学の教授だったこともあり、歴史、哲学、宗教学など多くの分野の見識が深い一方、現役の臨床心理学者としての慈悲深さも備え、最良の意味でのインテリ。一方、歯に衣着せぬ発言でも知られ、最近の北米の大学キャンパスの行き過ぎた左傾化に警鐘を鳴らし、物議をかもしている話題の人でもあります。

Amazonで購入

 

Jordan Peterson 12 rules for life

 

過去の人類の英知を結集して、説得力や面白さを倍増

米国の自己啓発物の多くは、読んだ直後はすごく元気になるのですが、内容自体は身に染み渡るような深みに欠け、時間が経つとその元気効果が薄れ、再度気分を奮い立たせるために似たような本を買う、という消費とも言えるような使われ方をされているとよく皮肉混じりに言われます。自己啓発書コーナーが巨大なのもこれが大きな理由とも。

でも、今回ご紹介する著書は、こうした部類の本とは一味も二味も違い、著者が生涯をかけて蓄積した深い見識を惜しげなく盛り込んでいて、じっくり読めば読むほどに味わい深く、一つ一つの文が吟味に吟味を重ねて書かれている、という感じ。特に興味深いのが、聖書や古代文明の神話、童話やディズニーアニメ、ニーチェ、ドストエフスキー、フロイト、ゲーテ、道教や陰陽道など、引用している文献の多様さ。過去の人類の英知を結集して、説得力や面白さを倍増させている点がこの本の人気の秘密と思われます。

 

意味のある人生を送るための「12のルール」とは?

この本は、人生という苦難に立ち向かい、意味のある人生を送るための12のルールを提唱し、それぞれを詳しく解説しています。
気になるその12のルールとは次の通り。それぞれ簡単に概要をまとめました。ただ、実際の本の内容は当然のことながらこれよりはるかに豊かで深いです。邦訳版が出るかどうかわかりませんが、ご興味を持たれた方はぜひ原文に挑戦してみることをお勧めします。

 

<ルール1 胸を張り、まっすぐ立つこと>

生物の長い進化の過程において、リーダー格の者は堂々と胸を張り、覇権を争う戦いに負けた者はしょんぼりとして去っていく、という行動パターンが、ロブスターのような原始的な動物でさえ植え付けられている。勝った方と負けた方の脳内の神経伝達物質の構成には大きな違いが現れ、それぞれの集団内での地位が固定化していく。

 

<ルール2 自分のことを、支えてあげなければならない他者のように扱うこと>

獣医からもらった愛犬の処方薬は絶対飲ませるのに、自分の処方薬をきちんと飲む人が意外と少ないのはなぜか、と問いかけ、この自虐的傾向は聖書のアダムとイブの原罪の考え方に通ずると説きます。自分のことを軽んぜず、人格を丁寧に磨き上げ、ゴールを定め、世の中をより良い場所にしていくことで人生に意義を与えましょう。

 

<ルール3 あなたの成長や成功を親身に喜んでくれる友人とだけ付き合うこと>

自分が物事に成功することに対して何となく否定的な幼なじみや、タバコをや
めようと思っているのにタバコを勧めてくる悪友。誰しも心当たりがあるのでは? それでも忠誠心から付き合い続ける。こういう友人と傷を舐め合うのはぬるま湯的で心地いいのも事実。ポジティブな成功者と付き合ってついていくのは結構大変だし。
自分を引きずり降ろそうとする弱い友人について、「自分ならこの人をきっと変えられる」という気持ちから付き合いを続けても、本人が変わる気がなければ無駄なこと。それって不毛だけど楽な付き合いを続ける言い訳でしかないのかも。何はともあれ、お互いを高め合える人と付き合いましょう。

 

<ルール4 自分を比較する対象は、他人ではない。昨日の自分自身と比較して成長を確かめること>

他人との比較だと常に上には上がいるのでモチベーションにならない。先に出世した同僚を妬んだところで、心がすさむだけ。社内での出世を目指すのではなく、より良い人生を目指そう。日々、自らの人生を高め、さらには自分の周りの人たち、さらには世界を良くしていくことを目指そう。このように目的が上向きであれば、どんなに小さな日々の改善も、方向性としては天に向かっているということ。

 

<ルール5 自分の子供のことが嫌いになってしまうような振る舞いを子供にさせないこと>

小さな子供の育てかたの話。著者は、子供を過度に放任主義で育てることを否定しています。子供は常に、したいことをすることがどこまで許さているのか、の限界を見定めようとしています。羽目を外した時にそれを丁寧に、でもしっかりと、咎めないと、そういう行動をしていいものと覚えていき、また周りを注意深く観察する能力が育ちません。親が注意しないと、後年、学校や社会に出てから手痛い形でしっぺ返しを受けることになります。愛情を持った親が嫌だと思う行動ですから、他人から見たらはるかに悪い印象を与えてしまうのです。
また、過度に放任されて育った子供は優柔不断で集中力にかける傾向があり、友達からもあまり遊んでもらえなくなり、他人との交流が苦手になり、行く末は社会に十分順応できない大人に育ってしまう。行き過ぎた行動を咎めてくれる大人に対して、子供はその後好意を持つものなのです。でも、感情的にカーッとなって叱ってはいけません。叱る際には思慮深く、これが重い責任を伴うことを忘れずに。ほめて育てることの有効性についても語っています。

 

<ルール6 世の中にケチをつける前に自らの生き方を整えること>

自分の生活や人生の中で、ここは直した方がいいんだよなあ、ということ、誰でもあると思います。例えば、仲たがいしている親族との関係、健康に悪い生活習慣、魂を削られてしまうようなつまらない仕事、他人を傷つけてしまう発言をしてしまう癖、等々。まずはできることからでいいので、一つ一つ整えて行こう。
自分の苦しみの責任を政治システムとか資本主義社会とか、外部のせいにする前に、まずは自分が常に堂々と人に誇れる行動や言動ができるようにすること。これを何年も続けることで、人生がシンプルになり、判断力が上がり、強靭になり、物事を他人のせいにしなくなり、不必要に苦しむことが減るのです。

 

<ルール7 利益ではなく、意義のあることを追求すること>

将来を良くするには、今犠牲を払う必要がある。いろいろな宗教で神への生贄が要求されるのはこのことを象徴的に表している。また、人間界のどん底の汚い側面を知らなければ輝く側面を真に知ることができないとも説く。単なる目先の利益の追求は浅薄な責任の回避であり、間違ったこと。これを繰り返すことで未来は今より悪い方向に向いてしまう。そうではなく、勇気をもって意義のあることをやろうじゃないか!

 

<ルール8 真実を話すこと(少なくとも嘘はつかないこと)>

嘘をついた方が何かと便利なことがある。過去の独裁者が嘘によって多くの民衆に不幸をもたらしたように、嘘は嘘を呼び、いずれすべてが欲求不満と失望になり、復讐心を掻き立て人生の腐敗をもたらす。真実を語ることであなたの魂は生き生きとすることでしょう。

 

<ルール9 いま話している相手が自分の知らないことを知っているかもしれないと考えること>

一人で考える、というのは難しいもので、たった一人では真に公平な見地での思考はとても困難。そのため、他の人と話すことで自らの考えを醸成していくというプロセスが重要。互いにオープンマインドでいろんな考えをキャッチボールをすることの重要性を説く。

 

<ルール10 発言には正確を期すこと>

夫婦の間などにおいて、なかなか物事をはっきり話す機会がなく、問題点が曖昧になっていることってたくさんあるもの。でも、それを放置すると漠然とした不満は継続し、いつかは大きな歪みとなって襲ってくる。だから勇気と誠実さをもって早めに気持ちを正確に伝えあうことが大切だと説く。そのことで人生の航海が目指す港に近づいていくのだ。

 

<ルール11 スケボーをしている子供の邪魔をしないこと>

親が、子供のことを守ろうとするあまり、子供の精神の成長が阻まれることの危険を説く。特に男の子の場合、スケボーの離れ業の練習のような危険な遊びをすることで自らの能力の限界に挑戦し、自信を深め、男らしくなっていく。危ないからと言ってこれを親が止めてはいけないと説く。女性は本能的にこのような男らしく自立した男性に惹かれるのだ、とも。

 

<ルール12 道で猫に会ったら撫でてあげること>

著者の娘が幼少より苦しんだ重度のリューマチの話をし、いかに人生が苦しいかということと対比し、道端で見かけた猫を撫でるときのような人生のささやかながらも美しい瞬間を大切にしよう、と説く。

 

本当に内容が深くて、上記では本文の素晴らしさの2%も伝わらないのではないかと思いますが、雰囲気だけでも分かっていただけると嬉しいです。geefeeは健康的なライフスタイルを追求することを目的としたサイトですが、何のために自分の健康を高めるのか、ということを実感できるのがこの本。身体の健康とともに、こういう本を読んで心の内面を鍛えるのも人生という旅の大事な旅程、かも。

 

 

Jordan Peterson

 

【関連記事】「『HEAD STRONG シリコンバレー式頭がよくなる全技術 』デイヴ・アスプリー著

 

コメント

コメントを追加