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「減塩」はもう古い!? 高血圧を防ぐ「適塩」生活のススメ
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「減塩」はもう古い!? 高血圧を防ぐ「適塩」生活のススメ

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・改善してきているとはいえ、日本の平均的食事は塩分過多の傾向が
・尿中ナトリウムが減れば血圧が下がるのは各研究機関が実証済み
・塩分の摂取量は多過ぎても少な過ぎてもダメ。1日5~6gが理想的(個人差あり)
・減塩食事にカリウムをプラスすると、高血圧対策にさらにに効果的
・調味料のほか、日々の食事で塩とカリウムをコントロールしよう

 

日本人の3分の1は高血圧といわれる現在、塩分摂取量と高血圧の関係がますます注目されています。塩分過多が高血圧を引き起こすことは常識とされていますが、みんながみんなひたすら食事の塩分を控えるだけでよいのでしょうか? また、塩分の量の調整以外にも高血圧を予防する手立てはないのでしょうか? 今回は塩分の摂取量や血圧コントロールに効果的な食品など、身近な生活習慣で血圧を管理するヒントをご紹介します。

 

日本人は塩分摂り過ぎ? 減塩ブームの日本と世界を比較

味噌汁に醤油、漬物など、伝統的な日本の食卓には塩分多めの食品がたくさん。厚生労働省が発表した国民健康栄養調査によれば、日本人の塩分摂取量は10年前の1日11.2gから毎年徐々に減少し、28年度には1日平均9.9g(男性10.8g、女性9.2g)となりました。

また、塩分摂取量が多いのは比較的高齢者(50代以上)という傾向があります。若い人の塩分摂取量が減っていることが原因かどうかはわかりませんが、血圧の平均値もこの10年で徐々に低下してきています[#]健康局健康課. 国民健康・栄養調査結果の概要. In: 厚生労働省 [Internet]. 2016 [cited 25 Jul 2018]. Available: https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantai...

塩分過多の危険性を啓発したり、減塩食品の開発に注力したり、国と企業が仕掛けた減塩ブームの効果で、日本人の食生活はじわじわと変化してきましたが、それでもまだ、「塩分過多の問題は解決できた」と安心できるレベルではありません。

世界の国々と比較すると、アメリカ(9.0g)やイギリス(8.0g)、オーストラリア(6.2g)、フランス(7.5g)など、成人病大国の西洋諸国よりも日本の塩分摂取量は高く、世界でもかなり高いほう[#]栄養調査|諸外国の栄養政策|国立健康・栄養研究所 [Internet]. [cited 29 Jul 2018]. Available: http://www.nibiohn.go.jp/eiken/kenkounippon21/foreign/eiyouchousa.html 。WHO(世界保健機構)の食塩摂取量の目標値は1日5g、日本の厚生労働省の目標が男性8gと女性7gであることを考えれば、少し甘めの日本基準で見てもまだ塩分過多なのが現状です[#]医薬基盤・健康・栄養研究所. 日本人はどんな食品から食塩をとっているか? ―国民健康・栄養調査での摂取実態の解析から―. In: NIBIOHN [Internet]. 2017 [cited 25 Jul 2018]. Available: http://www.nibiohn.go.jp/eiken/chosa/pdf/info20171113.pdf

 

「塩分を減らすと血圧が下がる」のは本当?

2017年11月にアメリカ心臓協会とアメリカ心臓病学会が発表した高血圧の基準値は最高血圧130mmHg以上、最低血圧80mmHg以上[#]New ACC/AHA High Blood Pressure Guidelines Lower Definition of Hypertension - American College of Cardiology. In: American College of Cardiology [Internet]. [cited 29 Jul 2018]. Available: http%3a%2f%2fwww.acc.org%2flatest-in-cardiology%2farticles%2f2017%2f11%2f08%2f11%2f47... 。以前の基準値の140mmHg、90mmHgですでに3,000万人を超える高血圧患者を抱えていた日本では、今後さらに患者が増えることが予想されます。高血圧は頭痛や倦怠感などを引き起こし、重症になるとけいれん発作や意識障害を起こすことも。

あまりに身近な病気のために、「塩分を減らしてもあまり状況は変わらないんじゃない?」と塩分カットの効果を軽視しがちですが、塩分過多の日本においてはこれは危険な考え。高血圧と塩分の摂取量とは密接な関連があるということは紛れもない事実です[#]Ha SK. Dietary Salt Intake and Hypertension. Electrolytes & Blood Pressure : E & BP. Korean Society of Electrolyte Metabolism; 2014;12: 7.

減塩でどれぐらい血圧が下がるかは、人により異なりますが、一般的に若年層よりも高齢者、肥満気味の人などは結果が出やすく、平均で最高血圧が4~8mmHg下がるそう[#]Frisoli TM E al. Salt and hypertension: is salt dietary reduction worth the effort? - PubMed - NCBI [Internet]. [cited 29 Jul 2018]. Available: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22482843 。また、過剰な塩分摂取が長期間続けば、血管が固くなり動脈硬化から脳卒中、心室肥大など、重大な病気へとつながる恐れも増大します[#]Farquhar WB, Edwards DG, Jurkovitz CT, Weintraub WS. Dietary Sodium and Health: More Than Just Blood Pressure. J Am Coll Cardiol. NIH Public Access; 2015;65: 1042. 。 

世界の医療関係者が大きな信頼を寄せるコクラン共同計画のデータベースによれば、34回で計3,240人に実験を行ったところ、適度な減塩生活を4週間以上続けた人は、尿中のナトリウムが1日平均で75mmol(塩分換算では4.4g)減少し、最高血圧は4.18mmHg、最低血圧は2.06mmHgも減るという結果に。高血圧症の人のみの平均値では、最高血圧が-5.39mmHg、最低血圧-2.82mmHgとさらに顕著な結果が見られました[#]He FJ E al. Effect of longer term modest salt reduction on blood pressure: Cochrane systematic review and meta-analysis of randomised trials. - PubMed - NCBI [Internet]. [cited 29 Jul 2018]. Available: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23558162

ただ、高血圧症にはさまざまな原因があり、塩分過多が主要な原因になっているケースは20%程度しかないともいわれています。ですので、減塩すれば、例えば一時的に血圧が下がるだけで根本的な改善になっていないケースも多いと考えられています。個人個人の体質に合った対応が必要なのです[#]Hashimoto T. Salt and Health (4) Relations between Salt Intake and Various Diseases [Internet]. 2001 [cited 29 Jul 2018]. Available: https://www.jstage.jst.go.jp/article/swsj1965/55/3/55_153/_pdf

 

塩分は減らせば減らすほどいい、というのは大間違い! 理想の塩分摂取量は?

塩分を控えめにすれば血圧が面白いように下がるという研究結果を前にすると、「もうお料理に塩や醤油を使わない」という気持ちになるかもしれません。しかし、何事も過ぎたるは及ばざるが如し。アメリカ心臓協会は、減塩の大切さを説く一方で、最低でも1日1,500㎎のナトリウム(食塩では3.8gに相当)を摂取することを勧めています[#] DiNicolantonio JJ E al. Dietary sodium restriction: take it with a grain of salt. - PubMed - NCBI [Internet]. [cited 29 Jul 2018]. Available: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24054177

極端に塩分をカットしても心血管系のリスクは減りませんし、逆に塩分が不足することで心血管代謝の疾患を悪化させたり、インスリン耐性や血清脂質、神経ホルモンの経路にも悪影響を与えることがあるのだとか[#]Frisoli TM E al. Salt and hypertension: is salt dietary reduction worth the effort? - PubMed - NCBI [Internet]. [cited 29 Jul 2018]. Available: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22482843

塩分は摂り過ぎてもダメ、減らし過ぎてもダメ。つまり、「適塩」生活が目標。日本人の1日平均の塩分摂取量は10g程度といわれていますが、これを5~6gの小さじ1杯程度に減らすことができればベストであり、それよりさらに減らすのはかえってマイナスなのです。

なお、これらは平均の話ですので、大量に汗をかく生活をしている人と全然体を動かさない人では全く違いますし、体質やその時々の体の状態によっても必要な塩分摂取量は変わってきますので、厳密にはぜひ医師とご相談を。

 

 

カリウムが減塩を助けるって本当? 高血圧防止の嘘・本当

食塩の摂り過ぎはよくないとわかっていても、味の濃い食事に慣れているといきなりの減塩生活には味気なさを感じてしまうもの。そこで、よく塩分過多の救世主として取り上げられるのがカリウム。カリウムは天然のミネラル塩で、筋肉の弛緩を助けたり、体液のバランスを調整したりするなど、身体機能を正しく働かせる役割をしています。

また、血圧を下げる効果もあるといわれ、高血圧で投薬を受けている人の80%がカリウムを多く摂取することで従来の薬量を半分に減らすことができたという報告もあります[#]Siani A E al. Increasing the dietary potassium intake reduces the need for antihypertensive medication. - PubMed - NCBI [Internet]. [cited 29 Jul 2018]. Available: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/1929022

ただし、塩分過多の人が単純にカリウムを帳尻合わせに使うのは間違い。カリウムは塩分を体外に排出する働きがあることから、「塩分をいくら摂ってもカリウムも一緒に取りさえすれば大丈夫」と勘違いしがちですが、Imperial College of LondonとNorthwestern Universityが2018年3月に発表した共同研究報告によると、塩分を過剰に摂り過ぎた場合は、いかにカリウムを積極的に摂取したり、その他の生活週間を改めたりしても、塩が身体に与える害を消すことはできないとのこと[#]Stamler J E al. Relation of Dietary Sodium (Salt) to Blood Pressure and Its Possible Modulation by Other Dietary Factors: The INTERMAP Study. - PubMed - NCBI [Internet]. [cited 29 Jul 2018]. Available: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29507099 。塩分は適量に抑えた上でカリウム摂取を増やした場合は高血圧に良い影響をもたらすので、カリウムと適塩生活はセットで考えることが大切です。

 

高血圧に良い影響をもたらす食事と生活習慣

塩や醤油、味噌などの調味料をよく使用する日本の料理は、他に塩分を摂らなくてもそれだけで1日の摂取量をオーバーしている可能性が大。なるべく塩辛いものを避けて優しい味付けの食事を心がけたいところです。中でも要注意なのはラーメンなどの麺類。お店のラーメンもカップ麺も、驚くほど多くの塩分が含まれています。そもそもいろいろな理由から健康に良くない食事の代表格ですが、どうしても食べたい場合にはスープは飲まないこと。梅干しや魚の塩焼きはヘルシーなイメージですが、やはり塩分カットの観点でいえば避けたい食品です。

塩分カットと好相性のカリウムは、ほうれん草、ブロッコリー、セロリ、ロメインレタス、アボカドなどに多く含まれています。とくにアボカドはバナナの2倍のカリウムを含み、かつ良質の一価不飽和脂肪酸も摂取できる優れもの[#]食品成分データベース [Internet]. [cited 29 Jul 2018]. Available: https://fooddb.mext.go.jp/index.pl 。積極的に食べることをお勧めします。

また、食事以外にも、睡眠不足やストレス、喫煙、運動不足、飲み過ぎなどの生活習慣も血圧に影響を与えます。高血圧が気になる人は、日常生活を少しずつ見直せば、大きな成果が得られるかもしれません。カリウムをサプリで摂取するというのも一案ですが、その場合にはいろいろな注意事項もあるため、別記事にて扱う予定です。

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高血圧は日本の国民病といえるほど大変身近な生活習慣病です。だからといって軽視は禁物。高血圧は心臓や脳の重大な疾病を引き起こすほか、日常生活にもいろいろな制限を加えます。1日5~6gの適塩生活とカリウムたっぷりの健康な食事を意識して、血液を若く柔軟に保ちましょう。健康な生活習慣を続けることで、高血圧対策以外にも、健康や美容、アンチエイジングなどいろいろな特典がついてくるかもしれませんよ。

 

 

 

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