食事に糖質制限を取り入れている人にとって、砂糖の摂取は基本的にNG。でも一概に砂糖と言っても種類はさまざま。特に、高果糖コーンシロップやアガベシロップ、果物全般などに含まれている果糖(フルクトース)は、血糖値が上がらないということもあり、健康に良いように思われがちですが、実は、一般的な食用の糖類の中でも特に健康に悪いと言われています。今回はこのことを検証するため、果糖が身体に及ぼす影響についてフォーカスしていきます。
そもそも果糖とは?
普段食べている多くの食品に含まれる糖類は、主に、二糖類であるショ糖(スクロース)、乳糖(ラクトース)と単糖類であるブドウ糖(グルコース)、果糖(フルクトース)に分けられます。
そもそも、一般的にこうした糖類にはそれぞれに大なり小なり健康へのマイナスのインパクトを指摘することが可能なのですが、主に果物や野菜に含まれる果糖の過剰摂取による健康リスクが、厚生労働省により2010年から警告がなされています[#]“[日本人の糖質摂取量評価方法の開発 ].” n.d. Accessed February 10, 2020.https://www.jstage.jst.go.jp/article/hcs/2013/23/2013_47/_pdf/-char/ja. 。
果糖(フルクトース)が悪いと言われる理由とは?
肝臓に負担がかかる
体細胞レベルで代謝が可能なブドウ糖とは違い、果糖は最初に肝臓でブドウ糖に変換されてからエネルギーになります。そのため、果糖の過剰摂取は肝臓に負担をかけ、脂肪肝の原因になることが指摘されています[#]pubmeddev, and M. R. Laughlin. n.d. “Normal Roles for Dietary Fructose in Carbohydrate Metabolism. - PubMed - NCBI.” Accessed February 10, 2020. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25100436. 。また、このアルコールのように、果糖への欲求を助長する中毒性があるとも言われています[#]“Fructose: Metabolic, Hedonic, and Societal Parallels with Ethanol.” 2010. Journal of the American Dietetic Association 110 (9): 1307–21. [#]pubmeddev, and Et al Page KA. n.d. “Effects of Fructose vs Glucose on Regional Cerebral Blood Flow in Brain Regions Involved with Appetite and Reward Pathways. - PubMed - NCBI.” Accessed February 10, 2020. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23280226. 。
肥満に繋がる可能性
10週間の研究で、ブドウ糖入りの清涼飲料水を飲んだ被験者は4.8%、果糖入りの清涼飲料水を飲んだ被験者は8.6%腹部脂肪が増加したという10週間に渡る研究結果[#]pubmeddev, and Et al Stanhope KL. n.d. “Consuming Fructose-Sweetened, Not Glucose-Sweetened, Beverages Increases Visceral Adiposity and Lipids and Decreases Insulin Sensitivity in Overwei... - PubMed - NCBI.” Accessed February 10, 2020. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19381015/. があるように、果糖は糖類の中でも肥満につながる可能性が高いことが示唆されています。
また、果糖は、肥満抑制作用を持つレプチンを増やしたり、食欲を助長するグレリンを抑制する作用を有さないため、満腹中枢が働かないため、いくら食べても食欲の抑制機能が生じづらいと言われています[#]“[日本人の糖質摂取量評価方法の開発 ].” n.d. Accessed February 10, 2020.https://www.jstage.jst.go.jp/article/hcs/2013/23/2013_47/_pdf/-char/ja. 。
糖尿病にも注意
果糖は血糖値の上昇にはつながらないにも関わらず、その過剰摂取はインスリン抵抗性を助長し、2型糖尿病のリスクを高めます[#]pubmeddev, and Et al Stanhope KL. n.d. “Consuming Fructose-Sweetened, Not Glucose-Sweetened, Beverages Increases Visceral Adiposity and Lipids and Decreases Insulin Sensitivity in Overwei... - PubMed - NCBI.” Accessed February 10, 2020. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19381015/. [#]pubmeddev, and Et al Basciano H. n.d. “Fructose, Insulin Resistance, and Metabolic Dyslipidemia. - PubMed - NCBI.” Accessed February 10, 2020. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15723702. 。
また、痛風のような炎症性疾患を悪化させる可能性[#]pubmeddev, and Rutledge A C And Adeli. n.d. “Fructose and the Metabolic Syndrome: Pathophysiology and Molecular Mechanisms. - PubMed - NCBI.” Accessed February 13, 2020. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17605309. [#]pubmeddev, and Choi H K And Curhan. n.d. “Soft Drinks, Fructose Consumption, and the Risk of Gout in Men: Prospective Cohort Study. - PubMed - NCBI.” Accessed February 13, 2020. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18244959. 、最終糖化最終産物(AGE)と呼ばれる有害物質を増加させる可能性等[#]pubmeddev, and Et al Wang X. n.d. “Attenuation of Hypertension Development by Scavenging Methylglyoxal in Fructose-Treated Rats. - PubMed - NCBI.” Accessed February 13, 2020. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18327087. [#]pubmeddev, and Et al Dhar A. n.d. “Methylglyoxal Production in Vascular Smooth Muscle Cells from Different Metabolic Precursors. - PubMed - NCBI.” Accessed February 13, 2020. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18702946. [#]pubmeddev, and Rutledge A C And Adeli. n.d. “Fructose and the Metabolic Syndrome: Pathophysiology and Molecular Mechanisms. - PubMed - NCBI.” Accessed February 13, 2020. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17605309. も指摘されています。
果糖が多く含まれている食品は?
日本では、2010年に厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」で果糖の過剰摂取への警告がなされましたが、日本の市販の食品の原材料表には糖質ごとの細かな種類別の成分表示義務がないため、糖質の種類ごとの摂取量を個人が管理することが難しいのが実情です。一方、「日本人の糖質摂取量評価方法の開発」という研究において、日本人がよく口にする食品に含まれている糖質の種類ごとの含有量が発表されていますのでご紹介します。
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100g中 |
食品名 |
果糖 |
ブドウ糖 |
その他の糖質 |
糖総量 |
はちみつ |
33.8g |
42.4g |
5.5g |
81.9g |
干し柿 |
1.6g |
3.6g |
7.6g |
13.6g |
すいか |
1.6g |
3.3g |
4.1g |
9.0g |
日本なし |
1.9g |
6.4g |
2.2g |
10.5g |
りんご(生) |
2.3g |
7.6g |
3.4g |
13.3g |
りんご(ストレートジュース) |
2.5g |
5.6g |
1.7g |
10.9g |
いよかん |
2.2g |
2.5g |
4.2g |
8.9g |
いちご |
2.2g |
2.5g |
1.0g |
5.7g |
ワイン |
0.8g |
1.7g |
- |
2.5g |
ブランデー |
16.5g |
16.1g |
- |
32.6g |
高果糖コーンシロップ(果糖ブドウ糖液糖)入りの飲み物には要注意!
清涼飲料などの加工食品によく使用されている高果糖コーンシロップ(high fructose corn syrup)は主成分が果糖とブドウ糖です。
一般的に、異性化糖と呼ばれ、JAS(日本農林規格) の規定によると、
ブドウ糖果糖液糖・・果糖含有率(糖のうちの果糖の割合)が 50% 未満
果糖ブドウ糖液糖・・果糖含有率が 50% ~ 90%
高果糖液糖・・果糖含有率が 90% 以上
とされ、果糖とブドウ糖の割合で名称が変わってきます。一般的によく成分表で見かけるのが果糖ブドウ糖液糖。合成甘味料不使用というキャッチフレーズ付きの食品によく使用されていたりします[#]USDA ERS - Sugar and Sweeteners Yearbook Tables.” n.d. Accessed February 10, 2020. https://www.ers.usda.gov/data-products/sugar-and-sweeteners-yearbook-tab.... 。アスパルテームなどの健康に害がある恐れがあるとされる人工甘味料を避けるために、やはり健康の観点からなるべく避けたい果糖を使用するというのは何とも皮肉な話です。
また、高果糖コーンシロップは、コーン抽出物になりますので、残留農薬が気になるところ。1998年のアメリカ合衆国農務省(USDA)の古いデータでは残留農薬が検出されなかったとの報告がありますが、養蜂家がミツバチに与えた高果糖コーンシロップにわずかに含まれていた殺虫剤が原因でミツバチコロニーが激減しているという説があったり、2012年の研究では農薬が検出されていたり、やはり注意が必要なようです[#]“Are agrochemicals present in High Fructose Corn Syrup fed to honey bees (Apis mellifera L.)?” n.d. Accessed February 10, 2020. https://www.researchgate.net/publication/276160282_Are_agrochemicals_pre.... 。
また、低GI値が低くダイエットに適した甘味料と人気のあるアガベシロップも気になるところですが、このアガベシロップのフルクトースは最大90%を超えることもあり[#]Figlewicz, D. P., G. Ioannou, J. Bennett Jay, S. Kittleson, C. Savard, and C. L. Roth. 2009. “Effect of Moderate Intake of Sweeteners on Metabolic Health in the Rat.” Physiology & Behavior 98 (5): 618. 、健康への悪影響が懸念されています。健康に良いとされる反面、リスクもあることを認識する必要があります。
フルーツの果糖は大丈夫?
(ジュースではなく)丸ごとのフルーツのみで過剰な量のフルクトースを摂取することはなかなか困難ですが、甘いフルーツを好んで食べる人は要注意。特に日本の果物は甘みが強い傾向があり、海外旅行中にイチゴなどを食べるととても酸っぱく感じるものです。以前の記事で詳しく説明してあるのでご参照ください。
健康的なイメージのある果物に入っている糖類である果糖はきっと健康によい、と思ったら大間違い。実は一般的な糖類の中でも健康リスクが高いものの代名詞なのです。果糖は血糖値を上昇させないので、健康に悪くないと思っている人も多いです。このことをメーカー側が利用し、アガベシロップや果糖ブドウ糖液糖などの果糖中心の甘味料が自称「健康食品」に使用されていたりします。しっかりした健康知識をお持ちのgeefeeユーザーの皆さんはこれでその手にはもう乗りませんね!
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