お肉が悪いと言われている理由の4つの誤解
種類や部位によって差はありますが、お肉には、脂質やタンパク質が豊富で体に必要な多くの栄養素が含まれ、大昔から人類にとって大切な栄養源です。しかし、いくつかの研究や調査によってマイナス面が浮き彫りになり、いつの間にかお肉の健康への悪影響の方に焦点があたるようになりました。特にやり玉にあげられているのは牛肉のような赤い色の肉ですが、そのほとんどが誤解や研究方法の欠陥から間違った情報として伝えられてしまっている現状があります。それでは、一般にお肉による健康リスクであると一般に言われている点を1つ1つ検証していきましょう。
誤解1~肥満のリスク~
お肉は太ると考えている人もいるかと思いますが、1週間あたりそれぞれ最大1kgの牛肉、豚肉、鶏肉を3ヵ月間摂取した被験者の比較研究では、肥満マーカーに変化がなかったことが報告されています[#]Murphy, K. J., B. Parker, K. A. Dyer, C. R. Davis, A. M. Coates, J. D. Buckley, and P. R. Howe. 2014. “A Comparison of Regular Consumption of Fresh Lean Pork, Beef and Chicken on Body Composition: A Randomized Cross-over Trial.” Nutrients 6 (2). https://doi.org/10.3390/nu6020682. 。赤身肉が肥満につながるとされる観察研究の結果もありますが、これはお肉以外の食事に制限がなかった上に消費したお肉のカロリーが高かったためで、直接的にお肉が肥満に関連付けられているデータはありません[#]Y Wang, M. A. Beydoun. 2009. “Meat Consumption Is Associated with Obesity and Central Obesity among US Adults.” International Journal of Obesity 33 (6): 621. 。逆に、パレオダイエットのような低炭水化物で動物性タンパク質を中心とした食事を5週間続けた女性の体重が4.5kg減少、ウエスト周りの脂肪が8%減少したという研究報告もあるので[#]Ryberg, M., S. Sandberg, C. Mellberg, O. Stegle, B. Lindahl, C. Larsson, J. Hauksson, and T. Olsson. 2013. “A Palaeolithic-Type Diet Causes Strong Tissue-Specific Effects on Ectopic Fat Deposition in Obese Postmenopausal Women.” Journal of Internal Medicine 274 (1). https://doi.org/10.1111/joim.12048. Y Wang, M. A. Beydoun. 2009. “Meat Consumption Is Associated with Obesity and Central Obesity among US Adults.” International Journal of Obesity 33 (6): 621. 、お肉を食べることだけで太るということはなく、むしろ体脂肪を減らす効果があると言えます。
誤解2~糖尿病のリスク~
ある海外の研究レビューでは、4年間1日あたり0.5食分多く赤身肉を食べた被験者の2型糖尿病の発症リスクが高まることが示されていますが、これも肥満のリスクと同様にお肉以外の炭水化物や加工食品が要因である可能性が高く、お肉が要因ということは証明されていません。特に、肉料理にはフレンチフライなどのジャガイモ料理やパンやご飯などの炭水化物が付け合わせになる場合が多く、逆に低炭水化物(低糖質)、高脂質、タンパク質な食事を中心としたケトジェニックダイエットをすると血糖値のコントロールが改善すると考えられています[関連記事:ケトジェニックダイエットは2型糖尿病に良い?悪い?]。
誤解3~心臓病のリスク~
2010年の大規模な研究で、お肉を食べると心臓病のリスクが42%増えると報告されていますが[#]Micha, R., S. K. Wallace, and D. Mozaffarian. 2010. “Red and Processed Meat Consumption and Risk of Incident Coronary Heart Disease, Stroke, and Diabetes Mellitus: A Systematic Review and Meta-Analysis.” Circulation 121 (21). https://doi.org/10.1161/CIRCULATIONAHA.109.924977. 、これは赤身肉ではなく加工肉の話。また、あくまでも関連性があるというだけで、因果関係が証明がされているわけではありません。また、別の観察研究では、白身肉と心臓病の関連性はなく、赤身肉に限り弱い関連性があるという報告があります。あくまでも「弱い」関連性となるので、赤身肉が直接的に心臓病の危険因子となるかは証明されていません。
誤解4~ガンのリスク~
お肉を食べるとガンになると主張する専門家もいますが、これは高温調理により発生する発ガン性有毒物質であるPAH(多環式芳香族炭化水素)やHAA(複素芳香族アミン)によると考えられます[#]Cross, A. J., N. D. Freedman, J. Ren, M. H. Ward, A. R. Hollenbeck, A. Schatzkin, R. Sinha, and C. C. Abnet. 2011. “Meat Consumption and Risk of Esophageal and Gastric Cancer in a Large Prospective Study.” The American Journal of Gastroenterology 106 (3). https://doi.org/10.1038/ajg.2010.415. [関連記事:揚げ物がタバコと同じくらい健康に悪いと言われる理由]。また、赤身肉に含まれるヘム鉄や加工肉が高温調理されることで結腸ガンのリスクにつながる可能性も[#]Sesink, A. L., D. S. Termont, J. H. Kleibeuker, and R. Van Der Meer. 2000. “Red Meat and Colon Cancer: Dietary Haem, but Not Fat, Has Cytotoxic and Hyperproliferative Effects on Rat Colonic Epithelium.” Carcinogenesis 21 (10). https://doi.org/10.1093/carcin/21.10.1909. [#]Bastide, N. M., F. H. Pierre, and D. E. Corpet. 2011. “Heme Iron from Meat and Risk of Colorectal Cancer: A Meta-Analysis and a Review of the Mechanisms Involved.” Cancer Prevention Research 4 (2). https://doi.org/10.1158/1940-6207.CAPR-10-0113. [#]Bastide, N. M., F. H. Pierre, and D. E. Corpet. 2011. “Heme Iron from Meat and Risk of Colorectal Cancer: A Meta-Analysis and a Review of the Mechanisms Involved.” Cancer Prevention Research 4 (2). https://doi.org/10.1158/1940-6207.CAPR-10-0113. 。よって、特にお肉自体が発ガン性があるというわけではなく、加工食品や高温調理によってリスクが高まると考えるべきなのです。
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