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geefee LAB検査シリーズ2 油の酸化テスト~ゴマ油編~
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geefee LAB検査シリーズ2 油の酸化テスト~ゴマ油編~

 

揚げ物や炒め物、サラダにかけたり味付けの隠し味にしたり、料理に欠かせない存在の食用油。最近はスーパーやコンビニでもいろいろな種類の食用油を買うことができますよね。しかし、以前の記事でも特集したように、油は光や酸素や加熱等で酸化したり劣化したりして、健康へのリスクが生じることがあります。このリスクを重く見るgeefeeは、油の劣化を測定する装置を入手しました。これを使用し、国内で市販されているさまざまな食用油を測定、その結果をいろいろな切り口から分析し、数回に渡って皆様にお伝えするというのがこの企画です。

第1回目の今回は、料理などによく使用され、日本では何となく健康的なイメージのあるゴマ油に着目してみました。なぜゴマ油かというと、本来酸化のしやすい多価不飽和脂肪酸主体の油の代表格のような油なのに、なぜ光の影響で酸化するのを防止するために光を通さない工夫がされた容器で売られていないのかというのが気になったこと。スーパーで見かけるゴマ油の容器はほぼ全てが透明なガラスかプラスチック。光による影響を気にしていない感じがします。

あと、ゴマ油の多くはあの食欲をそそる香ばしさが特徴なのですが、これって熱で焙煎しているからなのでは? 色も茶色で何だか焦げてるっぽい。本当に酸化してないの?と疑問に感じ、一般的なゴマ油に対する健康的なイメージとのギャップが気になったのがきっかけです。

これらの疑問の解決へ一歩近づくべく、geefee独自で油の劣化検査を行ってみました。

 

油の劣化計測器「testo 270食用油テスター」

日本での油の劣テストはAV試験紙というものを使用することが多いのですが、リトマス試験紙のように色の変化だけで判別するため、定量的で正確な測定が困難です。

 

Avoil test
AV試験紙による測定

そこで今回の油の劣化テストでは「testo 270食用油テスター」(アマゾンで購入可)を使用。このtesto 270を使うと、フライ油の劣化度を数値で管理することが可能で、油に差し込むだけでその油のTPM値を測ることができます。このTPMというのは、極性化合物の濃度を数値化する指標で、欧米やアジアで油の劣化基準の主流となっており、パーセンテージで表記されます。testo 270のようなデジタル劣化計測器を使えば簡単にそしてより精緻に油の質をチェックすることができます。

でもTPMとかAV値とか言われても何が違うのかちょっと分かりませんよね? 以下が参考になるかと思います。

 

testoの説明書から抜粋
testoの説明書から抜粋

 

このように劣化の原因となる要素は、主に空気、熱、水分の3つに分かれますので、TPMの値を見れば、より幅広い観点からの劣化の具合がわかるというわけです。

 

TPM map

 

上の図を見ればわかる通り、フランスやドイツなどの先進国の基準がTPM。日本はAV値。

このAV値が日本における基準になりますので、ある意味日本は世界の基準から少し遅れを取っているような感じでしょうか。このTPMによる劣化度の基準は以下のようになっています。
 

1%~14% 「新鮮」
14%~18% 「数回使用」
18%~22% 「まだOK」
22%~24% 「そろそろ交換の時期」
24%以上 「廃棄すべき」

 

ちなみにTPMの数値ですが、24%以上は廃棄というのは ”German Society for Fat Science”という機関で決められていて、外国で採用されている基準もこれに近いものがほとんどです[#]“[No Title].” n.d. Accessed July 9, 2018. http://www.dgfett.de/meetings/archiv/hagen2000.pdf.

 

次はいよいよ実際に油を熱し、testo 270を使ってテスト開始です!

 

testo

 

 

ゴマ油のTPMを測る

まずは、比較のため、あまり劣化していないと思われる植物油を測ってみました。具体的には、植物油の中でもオレイン酸を多く含み比較的酸化がしにくく、低温圧搾製法(コールドプレス)で光を遮断する黒い色のガラスの瓶で販売されている高級オリーブオイル。

次にゴマ油ですが、焙煎の度合いや搾油の方法などによって色や風味が変わってきます。白ゴマ油や薄茶色いゴマ油がありますが、これらは基本的に同じ種類の食用のゴマから作られています。何が違うかというと圧搾工程の前に行われる焙煎の度合。焙煎を全くしないとほぼ無色でゴマ油特有の香ばしさもほとんどないです。時間をかけて高温で焙煎されたゴマを使うとあの香ばしくて茶色いゴマ油になります。

こちらが今回用意したゴマ油5種類と高級オリーブオイル1種類です。

 

oil all main numbers

①~③ が一般的に家庭で使用されている濃い褐色のゴマ油。高温で焙煎、圧搾しているのでどれも香ばしい匂いがします。

sesame 1

 

sesame 2

 

sesame 3

 

④~⑤が白ゴマ油。ゴマを炒らずに低温圧搾。匂いはほぼなく色も透明感があります。

white sesame

 

white sesame 2

 

⑥ 基準として使用した高級オリーブオイル(熱を使用しない低温圧搾、酸化しにくいオレイン酸)。

olive oil

 

5種類のゴマ油は透明な容器で売られ、オリーブオイルは光を遮断するガラスです。つまり、光による酸化についてより慎重に対策を練っているのが比較的酸化しにくい一価不飽和脂肪酸主体のオリーブオイル。一見不思議なのですが、オリーブオイルの世界では、酸化による味の劣化に対して無茶苦茶シビアなので、とにかく酸化しにくいように工夫し、賞味期限を延ばすことに必死なのだと思われます。

また、ゴマ油にはセサモールという抗酸化物質が含まれ、これが油の酸化を防いでいるとも。これが理由でゴマ油の賞味期限は長めなのだそうです。でも本当にそうなのでしょうか? 実際に加熱してTPMの値を測ってみましょう!
 

 

oil cooking

 

測り方は非常に簡単。油にこの計測器の先を入れて数値をみるだけ。一番低い温度で40℃~最大190℃まで測れます。

ゴマ油は、サラダにかけるなど、あまり高温で熱さずに使用することが多いですが、炒め物や揚げ物の調理に使用する場合もあるので、今回はそれぞれの油で50℃あたりと190℃手前の2回計測。温度上昇に要した時間は約2~3分。それぞれの温度に到達したら即座に測定しました。その結果は以下の通り。

 

  焙煎方法 40~50℃ 185℃
黒ゴマ油 高温 13.0%TPM 14.0%TPM
黒ゴマ油 高温 12.5%TPM 14.5%TPM
黒ゴマ油 高温 11.5%TPM 12.5%TPM
白ゴマ油 煎らずに低温圧搾法 11.0%TPM 11.5%TPM
白ゴマ油 煎らずに低温圧搾法 9.0%TPM 11.0%TPM
高級オリーブオイル 低温圧搾法 7.0%TPM 7.0%TPM

 

ゆっくりと中火くらいで温度を上げていきましたが、100℃あたりでもあまり数値は変わりませんでした。でも、185℃に近づくにつれてオリーブオイル以外は数値がアップ。オリーブオイルはこのように熱しても数値に変化がありませんでした。

低温で製造された白ゴマ油は黒ゴマ油に比べてTPMが低いものの、高級オリーブオイルと比べると少し高め。オリーブオイルは高温での調理に比較的強そうです。
黒ゴマ油はオリーブオイルと比べるとTPMが高いとはいえ、交換の目安である数値の22%はかなり下回っています。新品の状態で測定しているので当たり前かもしれませんが。

 

新たにわいてきたさまざまな疑問

あなたはこの結果をどう見ますか? 交換の目安の値を超えているわけではないので、今後も黒ゴマ油を安心して使用する、という見方もありだとは思います。でも、健康に対する意識が高い人が劣化した油の怖さを知ってしまうと、あの香ばしさを犠牲にしてでも、より健康な油を選択したいと思うのでは? 今回の実験で、ゴマ油のような植物油は熱すると即座に一定の劣化が進行することが検証でき、geefeeで推奨している油の使用法と合致しています。一度短時間熱しただけなのにこれだけ数値が悪くなったのは衝撃でした。

ここでいろいろな疑問も新たにわいてきます。そもそも酸化しやすい多価不飽和脂肪酸主体で透明な容器に入ったゴマ油を、開封後に長期間明るい室温の環境で保存したとしたらどうなるか? 同じ油を使って何度も揚げ物をしたら? 油を使った料理を再度熱したら? これらの疑問に答えるため、geefeeは今後も実験をし、皆様にご報告したいと思います。
今回は、あくまでも一度の検査ですし、計測する油の量や環境などでも変わってくるでしょうし、同じブランドだからといってすべて同じ数値とも限りません。でも、大まかな傾向はつかめたと思います。つまり、店頭に並んだゴマ油は、茶色が濃いほどある程度の劣化が進んでいる傾向がありそうだということ。また、油を高温に熱するとそれなりに劣化が進行するということ。

今後、更にいろいろな油テストを企画する予定です。

 

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