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「うそでしょ?!」と思ってしまう過激な肉食ダイエットがアメリカで話題になっている理由
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「うそでしょ?!」と思ってしまう過激な肉食ダイエットがアメリカで話題になっている理由

geefee ポイント geefee ポイント

・肉類のみを食べるアメリカで話題の肉食ダイエット
・推進派が主張する利点とは?
・さまざまな問題点を主張する反対派
 

 

パレオダイエットや糖質制限ダイエットなどさまざまな種類のダイエット方法が流行っている中、今、アメリカで話題となっているのが肉食ダイエット(carnivore diet)。FACEBOOKの肉食ダイエットのコミュニティーページ(英語)では、世界中から2万5千人以上ものフォロワーがいるくらい過熱しています。

名前を聞いた限り、あまり健康に良いイメージが持てない感じではありますが、実際はどうなのでしょう?今回は、この肉食ダイエットにフォーカスを当ててみました。

 

肉食ダイエットって何?

肉、魚、卵などの動物性食品のみの食事をするダイエットで、果物、野菜、穀物などは一切摂らない、という過激な食事法です。乳製品に関しては、低ラクトースの摂取を許容するやりかたもあるようですが、NGという支持者も多くいます。コーヒーやお茶などの植物由来の飲料も控え、飲み物はお水とボーンブロスのみという考えが一般的。

 

つまり、摂れる食材は以下のようなもののみ

 

  • 肉 : 牛肉、豚肉、鶏肉、子羊、内臓肉など
  • 魚 : サケ、サバ、イワシ、甲殻類など
  • その他の動物製品;卵、ラード、ボーンブロス
  • 飲料:水(場合によってはコーヒーなど)

   塩や胡椒などの調味料も摂取しないケースも。

 

また、更に厳しく、牛肉しか食べない、という超極端なバージョンもあります。甲殻類や卵などは多くのアレルギー体質の人にとってアレルゲンですので、実際には個人個人の体質にカスタマイズする必要があります。さらに、内臓肉は、筋肉系の一般の肉には含まれない各種ビタミンが豊富なため、特定の栄養素が欠如しないようにメニューに積極的に含めることを推奨する専門家もいます。

特に、カロリーや1度の食事で食べる量は定められておらず、食事のタイミングも特に拘束なし。好きな時に好きな量を食べる。これが一般的な肉食ダイエットの考え方です。

 

まだ学術的な研究が進んでいない肉食ダイエット

この肉食ダイエットの先駆者とも言えるのが、医師でボディービルダーでもあるアメリカ人のショーン・ベイカー。「The Carnivore Diet 」という本も出版していて、肉食ダイエットのフォロワーの間ではカリスマ的存在。ベイカー氏が自身の肉食ダイエットの体験を通して、肉食ダイエットの有効性を主張しています。

しっかりした科学的根拠が確立されていないものの、この肉食ダイエットについてのベイカー氏の情報発信は大きな反響を呼び、研究者や医師などの間で激しい論争が現在繰り広げられているのです。

 

 

 

推進派の主張する利点とは?

減量
減量という側面だけをみると、高タンパク質低炭水化物の食事が体重の減少を促進することは期待できそうです[#]pubmeddev, and Et al Soenen S. n.d. “Relatively High-Protein or ‘Low-Carb’ Energy-Restricted Diets for Body Weight Loss and Body Weight Maintenance? - PubMed - NCBI.” Accessed September 2, 2019. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22935440.  [#]pubmeddev, and Et al Larsen TM. n.d. “Diets with High or Low Protein Content and Glycemic Index for Weight-Loss Maintenance. - PubMed - NCBI.” Accessed September 2, 2019. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21105792.  [#]pubmeddev, and Et al Bazzano LA. n.d. “Effects of Low-Carbohydrate and Low-Fat Diets: A Randomized Trial. - PubMed - NCBI.” Accessed September 2, 2019. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25178568. 。特に、タンパク質は代謝を高め、カロリーを消費するのに効果的[#]pubmeddev, and Et al Paddon-Jones D. n.d. “Protein, Weight Management, and Satiety. - PubMed - NCBI.” Accessed September 2, 2019. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18469287.  [#]pubmeddev, and Et al Westerterp-Plantenga MS. n.d. “Dietary Protein - Its Role in Satiety, Energetics, Weight Loss and Health. - PubMed - NCBI.” Accessed September 2, 2019. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23107521.  [#]pubmeddev, and Et al Westerterp-Plantenga MS. n.d. “Dietary Protein - Its Role in Satiety, Energetics, Weight Loss and Health. - PubMed - NCBI.” Accessed September 2, 2019. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23107521. 。参加者132人による3か月に渡る高タンパク質、低炭水化物の食事の実験では、体重の減少が見られました[#]pubmeddev, and Et al Soenen S. n.d. “Relatively High-Protein or ‘Low-Carb’ Energy-Restricted Diets for Body Weight Loss and Body Weight Maintenance? - PubMed - NCBI.” Accessed September 2, 2019. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22935440.

また、低糖質を徹底した食事にすることで、身体はケトーシス状態へ入ります。肝臓が脂肪を燃焼するモードになるため、体脂肪の燃焼が期待できます。

【関連記事】「劇的な効果があると話題のケトジェニックダイエットがもたらす体の変化と注意点

 

腸健康の改善
「リーキーガット症候群」の改善が期待できるかも。リーキーガット症候群とは、腸壁の炎症などにより腸壁の細かい「穴」が大きくなることで、腸管内の細菌や未消化のたんぱく質などが血流に入り込んで、アレルギーなどの自己免疫疾患の症状を引き起こしてしまう病気。ハンガリーの医療グループ「Paleomedicina」が行った研究では、肉食のみの食生活により腸の炎症性疾患が改善されたことが報告されています。

【関連記事】「体調不良の原因はリーキーガット症候群かも?

 

コレストロール値への悪影響なし
血中コレストロールの上昇は、従来は心臓疾患や脳卒中等のリスクが高まると言われきましたが、近年では、事はもっと複雑であることが分かっています。また、高コレストロール食を摂ると血中コレストロール値が上がると従来考えられていたのが、実は高コレステロール食は血中コレステロールに影響を与えない、ということが明らかになっています。

【関連記事】「実は食事のコレステロール量を制限する必要はない、って本当?コレステロールの新常識

 

植物性食物アレルギーの回避
穀物、豆類、ナス科の植物に多く含まれるレクチン、その中でも小麦、大麦、ライ麦、オート麦に含まれるグルテン、更にはフィチン酸、シュウ酸などの反栄養素と呼ばれる植物に含まれる有害化学物質を回避することができます。

【関連記事】「意外な食べ物にも含まれている?避けるべき4つの反栄養素

 

 

以前、geefeeのブックレビューでも紹介した『12 Rules for Life: An Antidote to Chaos(人生の12のルール:カオスへの対抗法)』 の著者ジョーダン・B・ピーターソン教授の娘が若年期からひどく苦しんでいた重度のリューマチが、牛肉のみを食べる肉食ダイエットに切り替えたことによって見事に克服し、無事に妊娠・出産までしたことが米国の人気Podcastで取り上げられ、大きく話題になりました。

 

 

父親のジョーダン教授もこれに啓発され、牛肉、塩、お水のみを口にする肉食ダイエットを実施。その結果、それまで極度な疲れや眠気等に悩まされていたのがウソのように治り、更に減量にも成功しうつ病が解消された、と報告しています。

 

 

 

 

一方、これらの効果はプラシーボ効果ではないか、との医者の意見もあります。あくまでも少数の個人の体験談ですので、リューマチのような慢性疾患に苦しんでいる人の全てに効果的かは疑わしいですが、欧米で一定の支持者がいることは事実です[#]Gabbatt, Adam. 2018. “My Carnivore Diet: What I Learned from Eating Only Beef, Salt and Water.” The Guardian. September 11, 2018. http://www.theguardian.com/food/2018/sep/10/my-carnivore-diet-jordan-pet....

 

反対派の主張する問題点とは?

微量栄養素の欠乏
動物性食品のみの食事となると、植物性食品から得られる栄養素の恩恵を排除することになります。アメリカの保健福祉省による食事摂取基準をベースに考えると、特にビタミンC、ビタミンE、ビタミンK2、カルシウムの不足が考えられます。

よって、微量栄養素が欠乏する可能性が高く、さまざまな疾患のリスクが懸念されます[#]Calton, Jayson B. 2010. “Prevalence of Micronutrient Deficiency in Popular Diet Plans.” Journal of the International Society of Sports Nutrition 7: 24. が、大きなグループでの長期的な研究データがないため、実際のところは是非についての科学的根拠がない状態です。

 

食物繊維の欠乏
腸の健康と健康的な排便を促進する食物繊維が不足するため、便秘に繋がる可能性を懸念する声もあります[#]Markland, Alayne D., Olafur Palsson, Patricia S. Goode, Kathryn L. Burgio, Jan Busby-Whitehead, and William E. Whitehead. 2013. “Association of Low Dietary Intake of Fiber and Liquids with Constipation: Evidence from the National Health and Nutrition Examination Survey (NHANES).” The American Journal of Gastroenterology 108 (5): 796. 。しかし、これに対し、肉食ダイエットによる便秘の解消例が報告されており[#]Ho, Kok-Sun, Charmaine You Mei Tan, Muhd Ashik Mohd Daud, and Francis Seow-Choen. 2012. “Stopping or Reducing Dietary Fiber Intake Reduces Constipation and Its Associated Symptoms.” World Journal of Gastroenterology: WJG 18 (33): 4593. 、食物繊維をしっかり摂っても便秘が解消されずにむしろ悪化するケースも報告されているなど、状況は複雑です。

また、腸内のバクテリアのバランスを保つために食物繊維は腸内細菌の餌として重要な役割があると言われています。腸の不健康状態は、免疫力の低下や、大腸がんなどを引き起こす恐れがあります[#]pubmeddev, and Et al Sekirov I. n.d. “Gut Microbiota in Health and Disease. - PubMed - NCBI.” Accessed September 2, 2019. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20664075.  [#]pubmeddev, and Et al Russell WR. n.d. “High-Protein, Reduced-Carbohydrate Weight-Loss Diets Promote Metabolite Profiles Likely to Be Detrimental to Colonic Health. - PubMed - NCBI.” Accessed September 2, 2019. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21389180. 。17人の肥満男性を対象とした研究では、高タンパク質、低炭水化物の食事は、高タンパク質、中炭水化物の食事と比較して、結腸癌からの保護に役立つ化合物のレベルが低下したということが分かっています[#]pubmeddev, and Et al Russell WR. n.d. “High-Protein, Reduced-Carbohydrate Weight-Loss Diets Promote Metabolite Profiles Likely to Be Detrimental to Colonic Health. - PubMed - NCBI.” Accessed September 2, 2019. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21389180.

 

適さない健康状態
当然ながら、慢性腎臓病患者などのためにタンパク質の制限をする必要がある人には適しません[#]pubmeddev, and Et al Ko GJ. n.d. “Dietary Protein Intake and Chronic Kidney Disease. - PubMed - NCBI.” Accessed September 2, 2019. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27801685. 。その他、個人個人の体質によって適さないケースが充分考えられます。

 

その他の問題
肉食による腸内細菌のバランスの崩れが考えられます。更には、長期のケトーシス状態の継続による様々な弊害、グリルなどの高温調理によるAGEなどの有害物質、筋肉系の肉の過多によるアミノ酸バランスの偏り(コラーゲン摂取によるグリシン補給により改善できる)、植物に含まれる各種ポリフェノールの恩恵を受けられない、腎臓への負担、家畜の飼料に含まれる成長ホルモンや抗生物質などの問題(このため、グラスフェッドの高品質の肉が推奨されている)等々、多くの潜在的問題が指摘されています。

 

geefeeの私見としては、非常に偏った食生活を送ることになる肉食ダイエットは現在のところは違和感を感じますし、通常の健康状態の人が試すにはリスクが高すぎる印象があります。やはり植物由来の食べ物の健康への恩恵を享受することができなくなることはあまりに大きな代償と思われるます。

一方、重度のアレルギーやリューマチなどの自己免疫疾患に悩んでいて藁にもすがりたい状況の人の場合には、腸壁の状態が改善し症状が解消されたケースも報告されています。現時点の研究状況においては、この肉食ダイエットは左記のような重度の病気に悩む人が、その病気の原因である可能性のある食材をいったん全て食事から排除する食事制限の一環としてとらえるべきと思われます。その後、症状が落ち着いたら、食べていい食材を一つずつ順次足していき、病気の原因を特定する、というステップにつなげ、あまり純粋な肉食ダイエットが長期に及ばないための工夫が必要かも。いずれにせよ、geefeeでは、今後も、この肉食ダイエットに関する研究状況を注視し、新たな情報を発信していきたいと思います。

 

 

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