皆さんは糖尿病になるリスクに関してどのような知識をお持ちでしょうか?
リスクが高まる要因としては
- 遺伝
- 肥満
- 慢性的な食べ過ぎ、飲み過ぎ
- 運動不足
- 感染症
が上げられます。
ですが、このリストは漠然としていてピンと来ないのでは?また複数の要因の間の関係性も分かりにくいです。例えば肥満などは、アメリカ人の肥満に比べてずっと低い肥満度でも日本人は糖尿病になるリスクは高いのです。これは日本人の遺伝子に関係します。
倹約遺伝子(肥満遺伝子)という遺伝子は食事などで得たエネルギーをなるべく節約し、余った分は脂肪として体内に蓄えようとする遺伝子で、日本人に多く見られます。そのため食べ過ぎるとこの遺伝子を持っている人は太りやすく、また痩せにくいという体質を持っているということなのです。その結果日本人は糖尿病になりやすいのです[#]“[糖尿病の遺伝素因と分子病態].” n.d. Accessed October 9, 2019. https://www.jstage.jst.go.jp/article/tits1996/7/5/7_5_8/_pdf. 。
糖尿病治療の基本は健康的な食事と運動ではあるものの、近年の研究に基づき、サプリを含めた補完療法が2型糖尿病管理や糖尿病発症リスクを低下させるのではないかと考えられています。
どんなサプリの研究がされているのでしょうか?
マグネシウム、クロム
皆さんもお馴染みマグネシウムサプリです。マグネシウムは制酸剤、便秘対策、神経過敏対策など多くの作用が認められておりますが、その摂取量が低いと糖尿病のリスクが高まるという研究結果が出ています。マグネシウムは積極的に摂ってもあまり問題がないサプリだといえるでしょう。だからといってマグネシウムの取り過ぎは下痢や腹痛を引き起こすのでご注意を。
また、クロムは必須微量元素です。食事中のクロム含量が少なすぎると、体内でブドウ糖を効率的に利用できなくなります。2014年のある研究結果によるとクロムサプリメントにより2型糖尿病の血糖レベルのコントロールが改善されたとの報告があります。なお、このクロムは3価クロムであり毒性の強い6価クロムとは違います。
参考文献 [#]L. Tosiello. n.d. “Hypomagnesemia and Diabetes Mellitus. A Review of Clinical Implications. - PubMed - NCBI.” Accessed October 9, 2019. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8639008?dopt=Abstract. [#]Et al Chaudhary DP. n.d. “Implications of Magnesium Deficiency in Type 2 Diabetes: A Review. - PubMed - NCBI.” Accessed October 9, 2019. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19629403?dopt=Abstract. [#]Broadhurst C L And Domenico. n.d. “Clinical Studies on Chromium Picolinate Supplementation in Diabetes Mellitus--a Review. - PubMed - NCBI.” Accessed October 9, 2019. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed?cmd=Retrieve&db=PubMed&dopt=Citation.... [#] Et al Anderson RA. n.d. “Elevated Intakes of Supplemental Chromium Improve Glucose and Insulin Variables in Individuals with Type 2 Diabetes. - PubMed - NCBI.” Accessed October 9, 2019. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9356027?dopt=Abstract.
シナモン抽出物
シナモンは生薬で「桂皮」と呼ばれ、漢方薬にも使用されています。香りが高く様々な料理やデザートにも使われています。このシナモン、α-グルコシダーゼを阻害することでブドウ糖によるインシュリンスパイクを緩和することができるとの最近の研究結果があります。個人的に興味深い研究の中にはシナモンのインスリン様機能や脂質代謝改善にも効果があるといった報告もあり、これから注目していきたいサプリです。ただし、シナモンには肝毒性の強いクマリンも含まれているので長期・大量の服用には注意が必要です。また、生産地によりクマリンの含有量が変わってくるシナモンには大きくスリランカ産のセイロンシナモンとベトナム、中国産のカシアシナモンに分かれますが、セイロンシナモンはカシアシナモンに比べクマリン含有量は非常に低いと言われています。スパイスとして料理に少量摂取するのにはほとんど 大きな違いはないのですが、サプリとして高用量のシナモンを摂取するのであればスリランカ産のセイロンシナモンの方がおすすめです。
参考文献 [#]Et al Mohamed Sham Shihabudeen H. n.d. “Cinnamon Extract Inhibits α-Glucosidase Activity and Dampens Postprandial Glucose Excursion in Diabetic Rats. - PubMed - NCBI.” Accessed October 9, 2019. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21711570. [#]Et al Khan A. n.d. “Cinnamon Improves Glucose and Lipids of People with Type 2 Diabetes. - PubMed - NCBI.” Accessed October 9, 2019. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/14633804. [#]Khan, Alam, Mahpara Safdar, Mohammad Muzaffar Ali Khan, Khan Nawaz Khattak, and Richard A. Anderson. 2003. “Cinnamon Improves Glucose and Lipids of People With Type 2 Diabetes.” Diabetes Care 26 (12): 3215–18.
ベルベリン
ベルベリンとは生薬の黄蓮に多く含まれる物質で、その抗菌、抗炎症作用を用いた目薬などは既に広く販売されています。また黄蓮が含まれた漢方薬には体を冷やす作用があると信じられており、血圧上昇によるほてりやのぼせにも昔から処方されています。最近では血糖値低下作用もあるのではとベルベリンについての研究が進んでいます。
【関連記事】「調合薬を超えたアンチエイジングサプリメント?天然由来のベルベリンが今米国で流行っている理由」
参考文献 [#] Et al Lan J. n.d. “Meta-Analysis of the Effect and Safety of Berberine in the Treatment of Type 2 Diabetes Mellitus, Hyperlipemia and Hypertension. - PubMed - NCBI.” Accessed October 9, 2019. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25498346. [#]Jun Yin,a,b,Huili Xing amd and Jianping Ye 2008 May“Efficacy of Berberine in Patients with Type 2 Diabetes” n.d. Accessed October 9, 2019. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2410097. [#]平成 19 年度“[シナモン含有食品中のクマリンの実態調査].” n.d. Accessed October 10, 2019. http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/hyouka/files/20hyouka2-s....
近年、糖尿病に対するサプリや生薬の効果についての研究が世界中で行われています。この背景には処方薬による副作用や経済的負担などがあり、少しでも自然に症状を改善したいといった人々の希望に応えようとした動きであると思われます。なお、この様なサプリは既に糖尿病薬を服用していたり、インスリンを使用している人にはこうした薬に変わるものではないということをお伝えしたいと思います。そのためにはまだまだ時間をかけた研究が必要なのですが、この様なサプリが将来代替薬になるかもしれないということを紹介させていただきました。
コメント
コメントを追加