PMS(PreMenstrual Syndromeの略:月経前症候群)とは、月経のおよそ10日前から直前までの時期に心身に起こる症状で、月経開始とともに減退、消失するものです。
起こる症状や程度には個人差がありますが、下腹部痛や乳房痛、頭痛、吐き気、むくみ、過食、眠気、抑うつやイライラなど心の不調も起こり、仕事や学業など日常生活を送ることが困難になってしまう方もいます。
PMSの原因は完全に解明されていませんが、女性ホルモンのエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の変動が影響していると考えられています。
また月経直前や月経開始2~3日目には下腹部や腰などが痛む、いわゆる「生理痛」に悩まされる女性も多いでしょう。
生理痛が起こる原因の一つに、プロスタグランジンの産生過剰が考えられます。プロスタグランジンは全身の平滑筋を収縮させて頭痛、吐き気を引き起こします。プロスタグランジンは子宮収縮を促し子宮内膜を経血として排出させる働きをもっており、これが『過剰に』分泌されてしまうことが問題になります。
生理痛の原因は子宮内膜症や子宮筋腫などの病気が原因となる場合もあるので、あまりに痛みが強い方は我慢せずに婦人科に相談をしましょう。
「女性特有の体の変化だから、仕方ないのかな」と毎月の不調をやり過ごしている方も、栄養摂取や食事バランスに気をつけることでPMSや生理痛の辛さを軽減できるかもしれません。ご自身のお食事を見直してみませんか?
PMSや生理痛を和らげる栄養素TOP3
①EPA(エイコサペンタエン酸)
EPAは青魚や魚介類に含まれるオメガ3系の脂肪酸で、プロスタグランジンの過剰な産生を抑制し生理痛を和らげます。また、EPAを摂取することで赤血球の膜の柔軟性が保たれて末梢まで血流が行き届くようになり、冷えから来る腰の痛みが改善します。
EPAは熱で酸化しやすくまた調理中に流出しやすく、焼くと2割、揚げると5割も減ってしまいます。また、焼いたり揚げたりといった高温調理ですと、酸化して体にむしろ有害になってしまいます。お魚は刺身や、薄味で煮て汁ごと食べるようにするとEPAを効率的で健康的に摂取出来ます。
生理痛に悩まされている方は「青魚は週に3日」を目標に、お魚料理を食べる日を増やしてみましょう。
- EPAを多く含む食品
サバ、ブリ、イワシ、鮭、サンマ、マグロのトロ
②マグネシウム
イギリス月経前症候群協会(NAPS)の治療ガイドラインでは、マグネシウムの十分な摂取を推奨しています。マグネシウムを摂取することで、頭痛、甘い物への渇望、乳房の張りや痛み、神経の緊張といった症状の緩和が期待できます。
マグネシウムは不足しがちなミネラルです。近年の国民健康・栄養調査の結果から、月経のある女性の平均摂取量は推奨量の7割程度であることがわかっています。
- マグネシウムを多く含む食品
あおさ海苔、わかめ、ひじき、豆腐、納豆、あさり、小松菜、アーモンド
③ビタミンB6
ビタミンB6も、イギリス月経前症候群協会の治療ガイドラインで重要視されている栄養素です。
月経前はエストロゲンが減少するに伴ってセロトニンの分泌も変化しますが、PMSに悩まされる女性は特に血中のセロトニン濃度が低下している傾向にあります。
脳のセロトニンが不足すると抑うつやイライラなどの精神症状が出たり、甘い物や主食類の高糖質な食べ物を過食しやすくなります。ビタミンB6はセロトニン合成の補酵素として必要になるため、精神不安定や食欲増加が気になるPMSの方には積極的に摂取していただきたい栄養素です。
- ビタミンB6を多く含む食品
サバ、マグロ、カツオ、レバー、鶏肉、鮭、にんにく、バナナ
PMSや生理痛を悪化させる物質TOP3
①チラミン
チラミンは生体アミンの一種で、発酵食品などに血管収縮作用があるため、子宮を収縮させることで生理痛の原因になり得ます。また、チラミンによる血管の収縮がおさまり血管が拡張する際に頭痛が起こることもあります。月経前から月経中に生理痛や頭痛の症状が出ている時には、チラミンを多く含む食品の食べすぎに注意しましょう。
- チラミンを多く含む食品
チーズやヨーグルト、赤ワインなどの醸造アルコール飲料、チョコレートやココアなどカカオ成分を含むもの、ニシンの塩漬、サラミ、新鮮でない肉類、漬物、醤油
②カフェイン
カフェインを摂取すると交感神経が刺激されて血管が収縮するため、腰痛や下腹部痛が悪化する恐れがあります。生理中にコーヒーを飲む場合はカフェインレスコーヒーにするなど、カフェインを含む飲食物を摂る量やタイミングに配慮しましょう。
月経前にはカモミールやレモンバームのホットハーブティーを飲むようにしてみてはいかがでしょうか。イライラしがちな精神が落ち着き、体も温まります。
- カフェインを含む食品
コーヒー、紅茶、緑茶、抹茶、エナジードリンク、栄養ドリンク
③リノール酸
リノール酸はオメガ6系の必須脂肪酸です。リノール酸が代謝されてプロスタグランジンが産生されるためリノール酸の過剰摂取には注意が必要。
レトルト食品、外食、コンビニのホットスナック(唐揚げなど)、出来合いの弁当やお総菜にはリノール酸が多い油脂が使用されているため、できる範囲で自炊すると脂質の摂取量やバランスをコントロールしやすくなります。市販のオイルドレッシングにはリノール酸が多く含まれます。オリーブ油:醤油:酢=1:1:1の割合で混ぜればドレッシングが簡単に作れますから、手作りドレッシングに切り替えてみてはいかがでしょうか。
- リノール酸を多く含む食品
ベニバナ油、大豆油、ひまわり油、コーン油、ごま油、サラダ油、マヨネーズ、洋菓子、スナック菓子、カップ麺
以上の食事改善に加えて、ストレスケア、禁煙、特に腰回りを冷やさないように心がけるといった生活の工夫も行うようにするとさらに効果的です。
ご自身の体調やバイオリズムに合わせた『食べるセルフケア』で、毎月訪れる月経期を快適に過ごせるようになりたいですね。
コメント
コメントを追加