高温調理された食材により生成される有害物質
高温調理と言えば、揚げ物、炒め物や炙り調理、グリル、オーブン料理などが主流ですが、これらの調理温度は大体160℃から200℃以上。食材中の特定の成分が加熱されたことで起こる化学反応によって以下のような有害物質が生成されてしまいます。
炭水化物やタンパク質から生成されるアクリルアミド
120℃以上の加熱調理により、アミノ酸(タンパク質の構成要素)の一種であるアスパラギンと果糖、ブドウ糖などの還元糖(炭水化物)がメイラード反応という化学反応を起こし、化学物質のアクリルアミドが生成されます[#]“食品中のアクリルアミドができる仕組み.” n.d. Accessed May 10, 2021. https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/acryl_amide/a_syosai/about/sikum.... 。このアクリルアミドは、IARC(国際ガン研究機関)によって、「ヒトに対しておそらく発ガン性がある物質」と分類されている有害物質。神経毒性や遺伝毒性も指摘されています[#]“[食品安全].” n.d. Accessed May 10, 2021. https://www.fsc.go.jp/sonota/kikansi/43gou/43gou.pdf. 。高温調理された野菜、ポテトチップスやクッキー、フライドポテトなどの市販の加工食品をはじめ、インスタントコーヒーやほうじ茶など高温で焙煎した食品などに含まれている可能性があるので、余程意識的に避けない限り、ほとんどの高温加熱された食品から私たちは毎日このアクリルアミドを摂取しているといっても過言ではないでしょう。
アミノ酸(タンパク質)やクレアチンから生成される複素環(式)アミン
肉や魚などを高温調理することでアミノ酸とクレアチンが反応し生成される複素環(式)アミン(ヘテロサイクリックアミン)は、IARC(国際ガン研究機関)で発ガン性が指摘されている有害物質です[#]食品中に含まれるヘテロサイクリックアミンの安全性評価情報に関する調査https://www.fsc.go.jp/fsciis/survey/show/cho20100030001 。焦げた肉や魚にこの複素環(式)アミンが含まれています。日ごろ焦げを気にしないで食べている人は、発ガン性物質を習慣的に摂取しているということになるのです。
煙で燻す燻製に含まれるPAHs(多環芳香族炭化水素類)やホルムアルデヒド
以前の記事でもお伝えした燻製料理も、高温の燃焼物から発生した煙により、PAHs(多環芳香族炭化水素類)やホルムアルデヒドなどの発ガン性物質を含んでいます。これらの有害物質はタバコの煙にも含まれ、健康に気を付けて喫煙を避けている人も、実は食事で喫煙と同じ有害物質を摂取している、ということになってしまいます[#]“[食品に含まれる多環芳香族炭化水素の ファクトシートご紹介].” n.d. Accessed May 10, 2021. https://www.fsc.go.jp/sonota/kikansi/32gou/32gou_5.pdf. 。
脂肪酸から生成されるCOPs(コレステロール酸化物)
主に肉や魚などの動物由来の脂質が加熱されると生成されるCOPs(コレステロール酸化物)は、アテローム性動脈硬化症や冠状動脈性心臓病のリスクと関連していると言われています[#]Addis PB. Occurrence of lipid oxidation products in foods. Food Chem Toxicol. 1986;24:1021–30. doi: 10.1016/0278-6915(86)90283-8. 。細胞毒性、変異原性、発ガン性などのリスクが上がる可能性も[#]Ryan E, Chopra J, McCarthy F, Maguire AR, O’Brien NM. Qualitative and quantitative comparison of the cytotoxic and apoptotic potential of phytosterol oxidation products with their corresponding cholesterol oxidation products. Brit J Nutr. 2005;94:443–51. doi: 10.1079/BJN20051500. 。特に肉や魚などにも一部含まれる不飽和脂肪酸がコレストロールの熱酸化を早めます[#] Min, Joong-Seok, Sang-Ok Lee, Muhammad Issa Khan, Dong Gyun Yim, Kuk-Hwan Seol, Mooha Lee, and Cheorun Jo. 2015. “Monitoring the Formation of Cholesterol Oxidation Products in Model Systems Using Response Surface Methodology.” Lipids in Health and Disease 14. https://doi.org/10.1186/s12944-015-0074-6. 。また、植物油などの不飽和脂肪酸の調理油を使って調理した肉と、調理油無しで調理した肉の比較実験では、不飽和脂肪酸の調理油を使用した場合の方からより多くのCOPsが検出された結果もあります[#]Al-Saghir, S., K. Thurner, K. H. Wagner, G. Frisch, W. Luf, E. Razzazi-Fazeli, and I. Elmadfa. 2004. “Effects of Different Cooking Procedures on Lipid Quality and Cholesterol Oxidation of Farmed Salmon Fish (Salmo Salar).” Journal of Agricultural and Food Chemistry 52 (16). https://doi.org/10.1021/jf0495946. 。
肉をはじめ魚などを高温調理する際に使用する不飽和脂肪酸の調理油も健康リスクの1つとなりえるので注意しましょう。
また、このCOPsの植物性版とも言われているのがPOP(植物ステロール酸化生成物)。すべての植物由来の食品に存在する化合物のフィトケミカルの1種である植物ステロールが熱酸化したもの[#]Scholz, B., S. Guth, K. H. Engel, and P. Steinberg. 2015. “Phytosterol Oxidation Products in Enriched Foods: Occurrence, Exposure, and Biological Effects.” Molecular Nutrition & Food Research 59 (7). https://doi.org/10.1002/mnfr.201400922. 。フライドポテトや高温加工されたお菓子や加工食品などさまざまな食品に含まれています。体の炎症やアテローム性動脈硬化症、心血管疾患などとの関連も指摘されています[#]“Plant Sterols from Foods in Inflammation and Risk of Cardiovascular Disease: A Real Threat?” 2014. Food and Chemical Toxicology: An International Journal Published for the British Industrial Biological Research Association 69 (July): 140–49. 。
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