とろけるような触感と磯の香り、奥深い旨味。海のミルクと称される牡蠣は世界中のグルメに愛される食材です。しかもビタミン、ミネラル、タンパク質、亜鉛など多くの栄養素が詰まった牡蠣は、健康に良いシーフードの中でも群を抜いていて、鳥などのレバーと並んで、2大動物性スーパーフードと言われています。知っているようで知らなかった牡蠣の栄養と効果、食べる際の注意点をご案内します。
海の恵みが凝縮された牡蠣は栄養素の宝庫
「貝は身体に良い」と聞いたことがあっても、どれぐらい栄養があり、どんな健康効果をもたらしてくれるのかを知っている人は少ないのではありませんか?
貝殻に守られた牡蠣の軟体部はただ味が良いだけでなく豊富な栄養素をたっぷりと含んでいます。
牡蠣を100g食べるだけでRDI(一日の食事摂取基準)の324%のビタミンB12、605%の亜鉛、223%の銅、91%のセレン、80%のビタミンDなど、大量のビタミンとミネラルが摂取できるのです[#]“Website.” n.d. Accessed September 9, 2019. ttps://ndb.nal.usda.gov/ndb/search/list. 。さらには、炎症を抑制し、心臓や脳を健康に保つ効果がみられる多価不飽和脂肪酸のオメガ3もたっぷり[#]pubmeddev, and Et al Swanson D. n.d. “Omega-3 Fatty Acids EPA and DHA: Health Benefits throughout Life. - PubMed - NCBI.” Accessed September 9, 2019. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22332096. 。牡蠣が美味しい上に身体にもよい海のスーパーフードといわれるのも納得です。
また、牡蠣やアサリ、ムール貝といった二枚貝は海水をろ過して浄化する働きを持つ広大なエコシステムの一部です[#]pubmeddev, and Et al Swanson D. n.d. “Omega-3 Fatty Acids EPA and DHA: Health Benefits throughout Life. - PubMed - NCBI.” Accessed September 9, 2019. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22332096. “漁業活動による環境保全:水産庁.” n.d. Accessed September 9, 2019. http://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/tamenteki/kaisetu/gyogyou_katudou/. 。地球の浄化に貢献する牡蠣は、私たちの身体にも惜しみない恩恵をもたらしてくれます。
牡蠣に含まれる栄養素の効果は?
牡蠣には身体によいとされる数多くの物質や栄養素が含まれていますが、その中でも特に豊富な栄養素5つとその効能をご案内します。
1. 神経系を維持し代謝や血球の形成を助けるビタミンB12 [#]pubmeddev, and C. W. Wong. n.d. “Vitamin B12 Deficiency in the Elderly: Is It Worth Screening? - PubMed - NCBI.” Accessed September 9, 2019. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25756278.
2. 免疫システムや代謝、細胞の増殖に欠かせない亜鉛 [#]Roohani, Nazanin, Richard Hurrell, Roya Kelishadi, and Rainer Schulin. 2013. “Zinc and Its Importance for Human Health: An Integrative Review.” Journal of Research in Medical Sciences: The Official Journal of Isfahan University of Medical Sciences 18 (2): 144.
3. 抗酸化作用でフリーラジカルの害を取り除くセレニウム [#]Tinggi, Ujang. 2008. “Selenium: Its Role as Antioxidant in Human Health.” Environmental Health and Preventive Medicine 13 (2): 102.
4. 免疫システム、細胞増殖、骨の健康の鍵を握るビタミンD [#]Linsey Utami Gani, Choon How How. 2015. “Vitamin D Deficiency.” Singapore Medical Journal 56 (8): 433.
5. 細胞へ酸素を運搬するヘモグロビン、ミオグロビン、プロテインを造る鉄 [#]pubmeddev, and Coad J And Pedley. n.d. “Iron Deficiency and Iron Deficiency Anemia in Women. - PubMed - NCBI.” Accessed September 9, 2019. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25083899.
牡蠣に含まれる多くの栄養素には抗酸化効果があることも特徴。酸化ストレスから細胞を守るセレニウムだけでなく、亜鉛やビタミンB12、ビタミンDにも抗酸化効果が認められており、心臓病や糖尿病、突然死などのリスクが減少すると考えられています[#]Aune, Dagfinn, Nana Keum, Edward Giovannucci, Lars T. Fadnes, Paolo Boffetta, Darren C. Greenwood, Serena Tonstad, Lars J. Vatten, Elio Riboli, and Teresa Norat. 2018. “Dietary Intake and Blood Concentrations of Antioxidants and the Risk of Cardiovascular Disease, Total Cancer, and All-Cause Mortality: A Systematic Review and Dose-Response Meta-Analysis of Prospective Studies.” The American Journal of Clinical Nutrition 108 (5): 1069. [#]Flores-Mateo, Gemma, Ana Navas-Acien, Roberto Pastor-Barriuso, and Eliseo Guallar. 2006. “Selenium and Coronary Heart Disease: A Meta-Analysis.” The American Journal of Clinical Nutrition 84 (4): 762. [#]Ran Zhang, Declan P. Naughton. 2010. “Vitamin D in Health and Disease: Current Perspectives.” Nutrition Journal 9: 65. 。
牡蠣ならではの強力な抗酸化物質DHMBAのパワー
2011年、北海道大学大学院とワタナベオイスター研究所の共同研究チームにより、牡蠣には独自の抗酸化物質DHMBAが含まれていることが発見されました[#]“保健栄養学(渡辺オイスター)分野 北海道大学 大学院 保健科学研究院 食品機能解析.” n.d. Accessed September 9, 2019. https://www.hs.hokudai.ac.jp/kifu/lab1.html. 。DHMBAは強力な抗酸化効果のあるフェノール化合物。酸化ストレスを下げるトロロックス(ビタミンE水溶性アナログ)の15倍もの抗酸化作用があり、特に肝臓の健康に効果を発揮します[#]pubmeddev, and Et al Villuendas-Rey Y. n.d. “Assessing the Protective Activity of a Recently Discovered Phenolic Compound against Oxidative Stress Using Computational Chemistry. - PubMed - NCBI.” Accessed September 9, 2019. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26624520. 。また、悪玉のLDLコレステロールの酸化作用を抑えることで、心臓病のリスク要因となるアテローム性動脈硬化を防ぐ効果も期待されています[#]“Isolation and Characterization of a Phenolic Antioxidant from the Pacific Oyster (Crassostrea gigas).” n.d. Accessed September 9, 2019. https://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/jf2038532?src=recsys&journalCode=ja... [#]Parthasarathy, Sampath, Achuthan Raghavamenon, Mahdi Omar Garelnabi, and Nalini Santanam. 2010. “Oxidized Low-Density Lipoprotein.” Methods in Molecular Biology 610: 403. 。
この強力な抗酸化物質は肝臓病や心臓病など、酸化ストレスが起因となる疾患の救世主として多くの可能性を秘めています。牡蠣を食事に取り入れて錆びない健康な身体作りに役立てましょう。
全ての必須アミノ酸を含む高品質のタンパク質源
牡蠣に含まれるタンパク質は9つのすべての必須アミノ酸を含むきわめて良質なもの。その極上のタンパク質が牡蠣100g中に7gも含まれています。
タンパク質を多く含む食べ物は、ペプチドYYやコレシストチニンというような満腹感をつかさどるホルモンを増加させ、その結果、食べすぎをストップして体重減少につながるのです[#]Leidy, Heather J., Cheryl L. H. Armstrong, Minghua Tang, Richard D. Mattes, and Wayne W. Campbell. 2010. “The Influence of Higher Protein Intake and Greater Eating Frequency on Appetite Control in Overweight and Obese Men.” Obesity 18 (9): 1725. [#]pubmeddev, and Et al Brennan IM. n.d. “Effects of Fat, Protein, and Carbohydrate and Protein Load on Appetite, Plasma Cholecystokinin, Peptide YY, and Ghrelin, and Energy Intake in Lean ... - PubMed - NCBI.” Accessed September 9, 2019. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22556143. 。また、糖尿病2型の血糖値マーカーとなるヘモグロビンA1c値を下げて糖尿病の改善に効果が見られるなど、高プロテインの食事は血糖値のコントロールにも役立ちます[#]pubmeddev, and Et al Dong JY. n.d. “Effects of High-Protein Diets on Body Weight, Glycaemic Control, Blood Lipids and Blood Pressure in Type 2 Diabetes: Meta-Analysis of Randomised Co... - PubMed - NCBI.” Accessed September 9, 2019. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23829939. 。
生ガキは美味しいけれど上手に選ばないと危険もいっぱい。安全に牡蠣を食べるには
新鮮な生の牡蠣はジューシーでミルキーなまさに海のご馳走。絶大なファンがいる一方で、生ガキの食中毒の恐ろしさも無視できません。食中毒の原因は細菌感染。ビブリオ・バルニフィカスや腸炎ビブリオのようなビブリオ属菌が感染し、下痢や嘔吐、熱などの激しい食中毒症状をもたらします。ひどい場合は敗血症などで死に至るケースも報告されています[#]Brett A. Froelich, Rachel T. Noble. 2016. “Vibrio Bacteria in Raw Oysters: Managing Risks to Human Health.” Philosophical Transactions of the Royal Society of London. Series B, Biological Sciences 371 (1689). https://doi.org/10.1098/rstb.2015.0209. 。
海の浄化作用を司るろ過接触性貝類の牡蠣は、その働きの代償として体内に生息した環境に存在した毒素や細菌を凝縮してしまいます。上記のビブリオ菌のほか、ノーウォーク系ウィルスやエンテロウィルス、重金属や鉛、カドニウム、水銀などをため込むリスクもあります[#]pubmeddev, and Et al Guéguen M. n.d. “Shellfish and Residual Chemical Contaminants: Hazards, Monitoring, and Health Risk Assessment along French Coasts. - PubMed - NCBI.” Accessed September 9, 2019. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21541848. 。
加熱調理でも生食用カキを使うのがポイント!
食品安全委員会によると、生食用として出荷されている牡蠣は、海水中の微生物が(細菌数、大腸菌最確数、腸炎ビブリオ最確数)定められた基準以下の海域で採取されたもの、または同等の基準を満たした海水または人工塩水で浄化したもので、これを洗浄殺菌した器具を用いて衛生的な場所で加工したものなど、保健所の基準を満たしたものになります。生ガキを食べる際は、たとえ加熱調理をする目的であっても、生食用を選ぶことを強くおススメします。生食用を選ぶことで、上記の衛生基準や浄化工程を経た牡蠣を買うことができます。なお、生食用の牡蠣であっても、できれば十分に加熱したものを食するほうが安全のためにおススメです。
とくに免疫力が弱い子供や妊婦、授乳中の人などは影響を受けやすいため生食はNG。
さて、具体的な調理法ですが、例えば下記のようなお料理を推奨します!
蒸牡蠣のレモン掛け
鍋で殻付きの生ガキを2~5分(大きさにより異なる)蒸して、レモン汁を掛けて頂く。亜鉛はビタミンCとクエン酸と一緒にとるとキレート作用により吸収されやすくなります。超簡単で、低温調理。素材のおいしさをそのまま味わえます。
オイスターロックフェラー
ほうれん草を使った牡蠣のグラタンです。ビタミンB12・鉄分が豊富な牡蠣に、ほうれん草を加えより貧血防止や疲労回復に役立ちます。geefee的にはベシャメルソースはオススメしませんので、カリフラワーを使ったグルテンフリーのベシャメルソースで。
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オイスターキルパトリック
ベーコンと合わせてオーブンで焼いた料理です。牡蠣は脂分がないので、油のあるベーコンと相性バッチリです。
牡蠣のトマトスープ~geefeeレシピ~
最もヘルシーな食べ方ができます。もちろん、生と比べると粒が縮んでしまいますが、煮込むことでより出汁が出て美味しくなります。
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牡蠣フライは揚げ物のため、geefeeではおススメできません。でも、それ以外でもバリエーションは豊富。過熱調理をした牡蠣料理で豊かな海の恵みを堪能しましょう。
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マガキや岩ガキなど、日本の海には20種ほどの牡蠣が生息しています。豊富な栄養素を含む牡蠣は肝臓を強くしたり、造血作用で貧血を軽減したり、抗酸化効果や免疫力アップで心臓病や糖尿病などを防ぐのに役立ったり、驚くほど多くの恩恵を与えてくれます。
美味しくて身体によく、ローカロリー。体重の減少にも一役買うスーパーフードの牡蠣。食中毒が怖いからとむやみに敬遠せず、生食用を選ぶことで安全な海で衛生管理をしている確かな生産者のものを、加熱調理でお料理をして上手に食事に取り入れましょう。
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