現在、瀧川歯科で歯科医を務める傍ら、複数の医療系の大学や専門学校での講師、食育や栄養関連のセミナー講師、料理教室の講師として活動している久野淳先生。
従来の歯科の枠を飛び越えて、食事が口腔内、更には体全体の健康に及ぼす影響をテーマに、消費者目線での独自の調査や研究を重ねる「食事を重視する歯科医」が、今もっとも気になるヘルストピックを伝授します!
日本人一人当たり1日1個のたまごを食べているというデータがあるように、毎日食べられている人気食材のたまご。その栄養価は、必須アミノ酸がバランスよく含まれていて(アミノ酸スコアが100)、その良質なタンパク質(アミノ酸)以外にも、ビタミンB群(特にB2、B12、ビオチンが多い)、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、鉄、亜鉛、セレン(セレニウム)、その他にも多くの栄養素がバランスよく含まれており、食物繊維とビタミンC以外はほぼ全てクリアしていると言われています!
良質なタンパク質で免疫細胞を増産して、ビタミンB群で代謝を活性、ビタミンDや鉄で免疫力アップ、ビタミンE、亜鉛、セレンで抗酸化!さらに、たまごに多く含まれるビタミンAとグルタミン(準必須アミノ酸の一つ)は、気道などの粘膜に存在しウイルスなどの外来異物の排除に関わる粘膜免疫の立役者「分泌型IgA抗体」の産生に欠かせない栄養素です。
このように、たまごはウイルス撃退のための栄養素を豊富に含むスーパーフードと言っても過言ではありません!
小さなお子さんからお年寄りまで、様々な調理法で美味しく食べられるたまごだからこそ、消費者として日本の養鶏の現状についてもう少し関心を持つ必要があると思います。
以下に、私が日頃から日本の養鶏について、また生産されているたまごについて調査した結果、私がたまごを選ぶ際に重要視しているポイントについてまとめてみました。
卵選びの重要なポイント6つ
① 採卵鶏がどんな飼料を食べているのか。また飼料に抗生物質やその他の薬剤を混ぜていないかどうか(これは最低レベルの条件)
人と同じように鶏のカラダも食べたものでできています。そこで、採卵鶏の飼料に使われるトウモロコシやコーングルテンミール、大豆類などが、海外輸入の安価な遺伝子組み換え飼料でないかどうかが最重要です。そしてできるだけ国産飼料にこだわっていること。もし一部に外国産の飼料を使っていたとしても、その飼料がPHF(ポストハーベストフリー)であること。また採卵鶏の飼育環境が良くない場合(窓がないウインドウレスの狭い鶏舎で詰め込まれて飼育されているなど)、様々な感染症のリスクが高まるので、飼料に抗生剤を混ぜたり、その他の薬剤を使用したりするので、それらが使われていないたまごを選びましょう。
② どんな飼育環境で育てられているのか
日本の養鶏の飼育方法は「バタリーケージ」というウインドウレスのケージ飼いがほとんど(99%以上)です。ケージ飼いは狭い飼育環境にて一度にたくさんの鶏を管理することができるため、その分生産効率も上がり、たまごを安価で生産することができます。世界の養鶏と比較してみると、スイスではケージ飼いは0%(平飼いまたは放し飼いのみ)、オランダは2008年にケージ飼いを禁止しており、ケージ飼育の完全廃止が実現しています。さらにEUでは2012年から日本などで使用されている従来の狭いケージは禁止となっていて、ドイツやフランスでは大手スーパーや製パン、製菓業界の多くが平飼い飼育のたまごのみを使用すると宣言しています。
「平飼い」や「放し飼い」などの飼育方法は、鶏たちが広めスペースで土の上を自由に動き回ることができ、止まり木などもある環境にて育てられているので、採卵鶏のストレスが少なく、より自然に近い状態のたまごを産むことができます。しかし、それだけ手がかけられているため、たまごの販売価格は当然ケージ飼いのものより高くなります。
③ 雛はどの日齢(月齢)で養鶏場にやって来て、生後何日目にどんなワクチンを接種しているのか
雛は生まれてすぐ(翌日)に養鶏場にやって来て、そこで良質な環境(平飼い)や飼料で育てられることが理想です。鶏の種類もその環境にあった品種が望ましいです。またワクチンに関しても、飼育している生産者が自身で把握してできるだけ少なくするよう努めていることが理想です。よくあるパターンとして、産卵できるようになる(生後120〜150日くらいから)1ヶ月前など直前に鶏を仕入れて、ワクチンもそれまでの飼育環境も仕入れ業者任せにして、生産者はほとんど把握していないところが多いです。
④ たまごの黄身がやさしいレモン色であるかどうか
たまごの黄身の色は飼料に含まれる色素によって変化します。飼料の内容がたまごに敏感に反映するのです。 よくたまごの黄身の色が濃いめの黄色になっていて、見た目にも美味しそうで、栄養価も高そうにみえるケースがあります。色が濃いからといって、美味しくなったり栄養価が高くなるわけではなく、この濃い色を出すのに「パプリカ色素」などが飼料に添加されています。このパプリカ色素については安全性が確立されておらず、人体にもどんな影響があるか分かっていません。
⑤ 雌雄か共に暮らして自然に産まれた有精卵であるか
良心的な生産者は、より自然の姿に近い飼育環境となるように雌雄を同居させ、自由に交尾ができるようにしています。有精卵だからといって無精卵よりも栄養価的に優れているわけではありませんが、鶏の社会を尊重して雌雄を一緒に育てています。雌鶏に対して約5%の雄鶏を一緒に飼うのが一般的なようです(雌鶏50羽に対して雄鶏が2〜3羽程度)。この中で雄鶏はリーダー(ボス)となり、猫や他の動物などの外敵から雌鶏やたまごを守るようにたくましく働いてくれます。
⑥「栄養強化」的にビタミンEとかヨード、DHAなどオメガ3脂肪酸など与えていないか
卵白や卵黄を固くする栄養剤はもちろんのこと、化学的な栄養剤を与えていないことが重要です。よく「うちのたまごの黄身は箸でつまめるほど新鮮で栄養価も高いです!」とアピールするほど、自然なたまごからは遠ざかっているような気がします。
以上が重要なポイントだと思います。
ここから更に上のレベルを目指すならば…
上級者向けの卵を選ぶポイント!
● 飼料に関して、粉餌以外にも人が食べるレベルの無農薬野菜(生の緑餌)をたっぷり食べていて、そこから自然に得られた鶏糞が、安全な有機肥料として自家農園で使われていることが理想です。すなわち「生物循環型農業」を実践していること。
● その地域の大気や土壌が汚染されていないこと。また養鶏によってもたらされる「畜産公害」のことを理解して、地球環境に配慮して鶏たちを育てていること。
土壌の微生物の分解スピードを超える大量の鶏糞や牛豚糞が大地に降り注いだ場合、土壌や地下水や沿岸の海水などが未分解の亜硝酸性窒素によって汚染されてしまうことをご存知でしょうか。また未分解の亜硝酸性窒素は、二酸化炭素よりも深刻な地球温暖化の原因になっているのです。
● その他、鶏たちにストレスがかからないよう十分に配慮し、「(人間にとってではなく)鶏にとって」の衛生的な環境を整備し、鶏たちに敬意をはらって大切に育てていること。
ここまで考えられていたら完璧ですね!!
画像にある親鶏たちはそれらを全てクリアしています。
値段を気にするより質の良い物を!
「安かろう悪かろう」というたまごは巷にたくさんあります。いやむしろほとんどがそういうたまごです。もちろん安く提供できるのも大切な企業努力であり、消費者にとっては、昔から「たまごは物価の優等生」と称されるほどのありがたい食材であることは間違いありません。しかしながら、60年前と比較して、大卒の初任給は約15倍になり、お米の値段は約5倍近く値上がりする中で、たまごの価格はほとんど変わっていないのです。飼料の価格も値上がりする中で価格が据え置かれることを素直に喜んでいて良いのでしょうか?
安さを追求するあまり、「安かろう悪かろう」というたまごが蔓延していて、安全性が危ぶまれることは大きな問題です!(これは全ての食に関して言えることです)
もっと言うと、たまごに関しては「高かろう悪かろう」という商品も増えてきています。そういった会社に騙されないように気をつけてください。よくあるパターンで私を失望させるのは、パッケージで「平飼い」という良いイメージだけを強調して、健康卵、自然卵のイメージを植え付けておきながら、実際には「平飼い」とは名ばかりの狭い平飼い空間に鶏たちを入れて、さらに問題なのは(コストダウンのために)飼料には大してこだわらず、遺伝子組換えの穀物を大量に与えているケースです。
理想的な平飼い※で(本来の一般的な平飼いよりも余裕ある広さで育てた「薄飼い」が望ましい)、パッケージにしっかりと飼料の内容についてNon-GMOと言及していて、薬剤についても一切使っていないことをアピールしているものを選びましょう!
※一般的な「平飼い」は、一坪あたり約10〜13羽ほどといわれていています。理想的な平飼い(薄飼い)とは、一坪あたり7〜8羽ほどの余裕がある飼い方です。
「平飼い」とアピールしながら、飼料についての説明があやふや(昔ながらの自然卵的な記載のみアピール)なものは、完全にアウトですから買わないようにしましょう!
たまごに限らず、生産者の想いやストーリーを知ることで、その食材の本当の価値を理解し、より安全で美味しいものを選ぶチカラを身につけていきたいですね。
【画像資料提供&取材協力】
とりのさと農園
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http://torinosato.net/
(愛知県南知多町)
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