現在、瀧川歯科で歯科医を務める傍ら、複数の医療系の大学や専門学校での講師、食育や栄養関連のセミナー講師、料理教室の講師として活動している久野淳先生。
従来の歯科の枠を飛び越えて、食事が口腔内、更には体全体の健康に及ぼす影響をテーマに、消費者目線での独自の調査や研究を重ねる「食事を重視する歯科医」が、今もっとも気になるヘルストピックを伝授します!
日本では、江戸時代頃より冬至に柚子を浮かべた湯舟に入浴する習慣があり、「柚子湯に入れば風邪を引かない」と昔からいわれていました。
この柚子という果実は、柑橘類の中でビタミンCが一番多く含まれていることをご存知ですか?すべての野菜や果物の中でもトップクラスです!今回は様々な健康と美容効果が期待できる優れた栄養素『ビタミンC』摂取の重要性について詳しくお話したいと思います。
ビタミンCの主な働き
ビタミンCは、1753年にイギリス海軍の医師Lind(リンド)によって、壊血病を防ぐ因子として発見された栄養素です。水に溶けやすく(水溶性ビタミン)、非常に酸化されやすい性質を持つため、他の生体成分の酸化を防ぎ、自ら強い抗酸化作用を発揮します。
ビタミンCはアスコルビン酸ともいわれています。多くの動物にとって、アスコルビン酸は生体内で生合成できる物質ですが、ヒトやサルの一部やモルモットは、アスコルビン酸を体内で合成することができません。
ビタミンCは鉄や他のビタミンの吸収を助ける働きがあります。食品や鉄剤として存在している三価鉄(非へム鉄)をビタミンCが還元して二価鉄に変換することで、小腸(弱アルカリ性環境)における鉄の吸収が良くなります。またビタミンCはビタミンEと一緒に摂ることで相乗効果が得られます。さらに、サビ取り(抗酸化)をして疲れてしまったビタミンEを元に戻す働きもあります。
ビタミンCには酵素の賦活作用があり、コラーゲンや副腎皮質ホルモン(抗ストレスホルモン)やノルアドレナリンなどの生合成に関与しています。またビタミンCは準必須アミノ酸であるチロシンの代謝に必須であり、出血防止や止血作用、色素の異常沈着防止作用、骨や歯の基質形成促進作用があります。さらに白血球やマクロファージの働きも高めるため、抗ガン作用や風邪などの感染症の予防(抗ウイルス作用)や免疫増強作用なども期待できます。
ビタミンCは生体内では副腎に圧倒的に多く存在し、次に白血球に多く存在します。血中を1とすると、脳は血中の20倍、白血球は80倍、副腎には150倍の濃度のビタミンCが含まれているといわれます。ビタミンCが多く含まれる臓器(副腎など)は、それだけビタミンCが必要であることを示しているのです。またビタミンCは、αリポ酸の力で再度利用できる形に戻るため、αリポ酸との同時摂取が推奨されています(結果ビタミンCを長持ちさせることができます)。
ビタミンCの吸収率について
あるデータでは、ビタミンC180mgを口から摂取すると約80~90%が吸収されますが、1,000~5,000mgまで増やすと吸収率は約21%まで下がるといわれています(大量に摂取すればその分吸収される量自体は増えます)。このようにビタミンCは、一度に大量に摂取するよりも、少しずつこまめに分けて摂取する方が吸収率が良いといわれています。この時、吸収されなかったビタミンCの多くは尿中に排泄されますが、一部は大腸で乳酸菌などの善玉菌を増やしたり、便を柔らかくしたりと有効に利用されます(ビタミンCを過剰に摂取すると下痢や腹痛を起こすことがあるのはこのためです)。
ビタミンCの吸収を促進するもの:
抗酸化作用のあるカロテノイド(ファイトケミカルの一種)やビタミンP(ルチンなど)、ビタミンEなどの同時摂取です。
例えば野菜の中で最もビタミンCが豊富に含まれているピーマンやパプリカには、同様にビタミンPも多く含まれているため、熱を加えてもビタミンCが壊れにくいという利点があります。これは、本来ならば熱や酸化によって壊れやすいビタミンCをビタミンPが守ってくれるからです。さらにはピーマンやパプリカには、カロテノイドも豊富に含まれているので、さらにビタミンCの吸収アップも期待できるというわけですね!
ビタミンCの吸収を阻害するもの:
喫煙(活性酸素除去の抗酸化作用により1本につき体内のビタミンCが約25mg減少)や熱の影響(熱損失50~60%)、 空気(酸素)に触れること、光の影響、アルカリ性物質の影響(重曹や膨らし粉、医薬品の一部)などがビタミンCの吸収を阻害するものとして挙げられます。
※ 芋類に含まれるビタミンCは、熱・光・空気・水の影響をあまり受けないといわれています。
またニンジン、キュウリ、カリフラワー、春菊、かぼちゃ、キャベツ、バナナ、リンゴなどには、アスコルビナーゼというビタミンC(アスコルビン酸)を破壊する酵素が含まれています。この酵素は、自身のビタミンCのみならず、一緒に調理した他の野菜のビタミンCをも破壊してしまいます。すりおろしたり、ジュースにすると、アスコルビナーゼの活性度がより高くなるので注意が必要です。ただしアスコルビナーゼは熱と酸に弱い性質があり、ゆでたり、炒めたり、酢を少し加える(ドレッシングなどを用いる)ことで、ビタミンCの破壊作用はほとんどなくなってしまいますので、調理法を工夫してみてください。
ビタミンCを一日一回摂取するとするならば、就寝前が効果的
ビタミンCの吸収は眠っている間でもペースが落ちません。一方、ビタミンCの排泄は眠っている間は腎臓の血流が減るので低下します。ですから、眠っている間はビタミンCの血中濃度の低下もゆっくりとなり、結果として高い血中濃度を保つことができます。
また、ビタミンCの主な作用であるコラーゲン線維の合成には成長ホルモンが関係します。成長ホルモンは眠っている間により多く分泌されるホルモンです。この点からも就寝前の摂取は効果的といえます(ただし、午後10時から午前3時頃までの成長ホルモンが盛んに分泌されるゴールデンタイムにはしっかり深い睡眠をとるように心がけましょう)。
ビタミンCを多く含む食品ついて(食品100g当たりのビタミンCの含有量)
参考までに、成人の1日あたり摂取量としての厚生労働省による推奨量(RDA)は100mgです。これはあくまでビタミンC不足で壊血病などにならないための最低量の目安ですが、現代人はこの推奨量の100mgですら十分に摂取できてないと言われています。
赤ピーマン |
170mg |
赤パプリカ |
170mg |
柚子(果皮) |
150mg |
黄ピーマン |
150mg |
黄パプリカ |
150mg |
黄色種キウイフルーツ |
140mg |
アセロラ |
120mg |
パセリ |
120mg |
芽キャベツ |
110mg |
レモン(全果) |
100mg |
ケール |
81mg |
ゴーヤ(にがうり) |
76mg |
明太子 |
76mg |
柿 |
70mg |
緑色種キウイフルーツ |
69mg |
モロヘイヤ |
65mg |
いちご |
62mg |
ししとうがらし |
57mg |
ブロッコリー |
54mg |
など。
上記からも分かるように、ビタミンCは「動物性の食品」にはほとんど含まれておらず、野菜や果実に多く含まれています。壊血病にならない程度の摂取ならば、上記の食材などをこまめに食べれば十分摂取できますが、健康増進や疾病予防のためにはさらに多く摂取することが望ましいとされています。
ビタミンCを多く摂取することの有効性
最近ではビタミンCの至適量補給(通常の何倍〜何十倍のビタミンCを摂取する)によって、様々な効果が期待できることが分かってきました。ビタミンCは水に良く溶ける性質のため、過剰摂取したとしても身体が使用しない分は尿から排泄されるので、脂溶性の栄養素とは違って過剰摂取についてはあまり心配しなくても大丈夫と考えられています。
ビタミンCを推奨量よりも多く摂取することで期待できる効果
- ガンの予防・改善
- 糖尿病の発症予防や合併症の改善
- 動脈硬化の予防・改善
- 慢性疲労の改善、肥満などの改善
- 抗ストレス作用
- 脳の活性化
- シミ、ソバカスの予防
- 皮膚の老化の予防・改善
- 出血防止や止血作用
- アレルギー抑制作用
- 風邪などの感染症予防・改善
- 抗ウイルス作用
- コレステロール系胆石の抑制
- 骨粗鬆症予防や改善
など。
さらには、高濃度のビタミンを血中に投与する治療法も盛んに行われるようになり、大量のビタミンCの点滴投与(一度に25,000mg以上!)が風邪やガンの治療、予防、また美容(シミ、ソバカスやメラニン沈着の予防)に有効であることが実証されています。
私は普段から一日に2000〜4000mg(推奨量の20〜40倍)程度のビタミンCを経口摂取しています。さすがにこれだけの量を日々の食事から摂取することは不可能なので、トウモロコシデンプンから合成されたビタミンC(アスコルビン酸)で補っています。アスコルビン酸の原材料であるトウモロコシは一般的には異性化糖(ガムシロップやコーンシロップ)やキシリトールやエリスリトール(糖アルコール)などのように遺伝子組み換えトウモロコシが多いのですが、しっかりと調べてNon-GMOのトウモロコシから作られたアスコルビン酸を選んでいます。個人的な意見としては必ずしも天然のビタミンCからの抽出物でなくても良いと思っております。
私自身の体感としては、ビタミンCを推奨量よりもはるかに多い至適量摂取することにより、風邪をひきにくくなり、肉体の疲労感もすぐに回復するように感じられます。喉が痛くなりかけた時や鼻水が少し出かかった時にも効果があるように思います。ただし、ビタミンCを過剰に服用すると、前述したように下痢や腹痛を起こすことがあるため注意が必要です。またガスが溜まって腹部に膨満感がある場合にも、服用する量を減らすよう調節して下さい。
肉食中心で偏った食生活を続けていると、ビタミンCの摂取量は極めて少ない状況になります。もちろん、穀物や野菜、果物が中心の食事でも足りない栄養素があるのですが、ことビタミンCに関しては野菜や果物そして必要に応じて信頼できるサプリメントなどで補うことも必要だと思います。
冬真っ只中の今の時期だからこそ、インフルエンザや風邪から身を守るため、またお肌を中心とした美容効果を高めるために、十分な量のビタミンCを補給して備えておきましょう。
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