日増しに外の気温も上昇し、お酒を飲む機会が増える季節がやってきました。公園や行楽地でクイっとビールを飲んでいる人も最近多く見かけますよね。2017年に日本酒造組合中央会が全国の 20 歳~79 歳の 3,000 人を対象に実施した「日本人の飲酒動向調査」では、過去1か月のあいだで飲んだお酒の種類として、ビールを飲んだという人が約61.2%とダントツ1位。2位が日本酒で35.5%、次いで3位がワインで32.5%。
しかし、geefeeでは、飲酒は、老化の原因、パフォーマンスの低下、有害物質なアセトアルデヒド、また糖質の面でも問題があるため、なるべく飲まないようにしましょう、と注意を呼びかけています。どうしても飲みたい場合には、「シリコンバレー式」アルコールマップを参考にすることを推奨しています。
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また、最近海外のニュースや研究結果等でアルコールの有毒性を伝える記事を多く見かけます。基本的にアルコールは避けるべきとしながら、さらにその種類によって濃淡があります。今回は、特にビールとワインに関する健康への影響についてお伝えします。
ワイン1本は5本~10本のタバコに相当する!?
イギリスの「BMC Public Health」が2019年3月に発表した研究結果によると、癌リスクの観点から、1週間でワインボトルを1本飲むことは、男性は1週間にタバコを約5本、女性は10本吸うリスクに似ているということです。特に女性はアルコール摂取によって乳癌のリスクが高まる可能性が示唆されています[#]Cook K. Glyphosate Pesticide in Beer and Wine [Internet]. CalPIRG Education Fund; 2019 Feb. Available: https://calpirg.org/sites/pirg/files/reports/Calpirg%20beer%20wine%20rep... 。
タバコと癌の関係性は多くの研究データもあり、いかにタバコが体に悪いかということは周知のことと思いますが、こうしてアルコール量のリスクをタバコ量のリスクで表すことで、より一層アルコールの健康への悪いインパクトがイメージしやすくなりますよね。
ワインやビールから除草剤!
CALPIRG Education Fundが、アメリカで販売されているビールやワインの多くのブランドに、ラウンドアップの主原料である除草剤グリホサートが含まれている、というレポート[#]Cook K. Glyphosate Pesticide in Beer and Wine [Internet]. CalPIRG Education Fund; 2019 Feb. Available: https://calpirg.org/sites/pirg/files/reports/Calpirg%20beer%20wine%20rep... を2019年2月に発表しました。以前、geefeeでも記事にしましたが、除草剤グリホサートの危険性は多くの研究で指摘されています。
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CALPIRGは、有機ブランドを含む5種類のブランドのワインと、15種類のビールをテスト。その中で、唯一検出されなかったのが、オーガニックビールである「Peak Beer Organic IPA」のみ。
主な製品をピックアップしてみました。
以下が数値になります[#]Cook K. Glyphosate Pesticide in Beer and Wine [Internet]. CalPIRG Education Fund; 2019 Feb. Available: https://calpirg.org/sites/pirg/files/reports/Calpirg%20beer%20wine%20rep... 。
要再調査のレベルを表す基準値こそ下回ったものの、特記すべき点は、ラウンドアップのような除草剤がオーガニックビールやワインの製造に関連する主原料の生産過程で使っていない(はず)にもかかわらず検出されている点。また、日本でもおなじみのビール銘柄からも検出ています(クアーズやバドワイザーなど)。
小麦や大麦やライ麦などの日本のグリホサートの残留基準値が30000ppbです(以前は5000ppbでしたが引き上げられました)。ビールやワインから検出された量は厚労省が定めている残留基準値以下なので日本では違法なレベルではありませんが、それでもおそらく発がん性があると指摘されているものを普段から微量であっても口にしていることは長い目で見て健康上のリスクがないとは断言できません。
今回の検査結果は、すべての製品においてEPA(米国環境保護庁)が定めるリスク許容度以内のレベル。日本のグリホサートの一日摂取許容量(ADI)は、0.75mg/kg/dayとかなり高めですがこれも国によって変わってきますので、これをどう解釈するかは難しいところ。
また、日本でも輸入ワインのグリホサート残留状況調査を2018年に行った機関[#]輸入ワインのグリホサート残留状況調査2018 1st. In: 一般社団法人 農民連食品分析センター [Internet]. [cited 12 Jun 2019]. Available: http://earlybirds.ddo.jp/bunseki/report/agr/glyphosate/red_wine2018_1st/... があります。有機栽培ワインからは検出はされなかったものの22製品中、13製品から微量ですがグリホサートが検出されています。また、グリホサートは検査対象ではありませんでしたが、山梨県産のワインの残留農薬実態調査[#]Koizumi M, Kazama D, Otagiri K, Kobayashi H. The survey of pesticide residue of wine, fruit juice, and grape produced in Yamanashi. 山梨衛環研年報. 2010;54: 56–59. というのが2010年に行われました。この調査結果によると、微量ではありますが、殺虫剤 2 項目及び殺菌剤 7項目が検出されています。
ワインに隠された添加物と残留糖にも注意が必要!
適度なワインの摂取は健康に良いと、都市伝説のように言われているその理由は、ブドウに含まれているレスベラトロール、カテキン、エピカテキンおよびプロアントシアニジンなどの抗酸化物質[#]Snopek L, Mlcek J, Sochorova L, Baron M, Hlavacova I, Jurikova T, et al. Contribution of Red Wine Consumption to Human Health Protection. Molecules. 2018;23. doi:10.3390/molecules23071684 。特にレスベラトロールは、抗酸化作用が高く、体の炎症や血液凝固への効果、心臓病やガンのリスクの低減など、多くの健康上の利点と結びついています[#]Brown L, Kroon PA, Das DK, Das S, Tosaki A, Chan V, et al. The biological responses to resveratrol and other polyphenols from alcoholic beverages. Alcohol Clin Exp Res. NIH Public Access; 2009;33: 1513. [#]Bagchi D E al. Benefits of resveratrol in women’s health. - PubMed - NCBI [Internet]. [cited 12 Jun 2019]. Available: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11951581 [#]Das DK E al. Erratum to: resveratrol and red wine, healthy heart and longevity. - PubMed - NCBI [Internet]. [cited 12 Jun 2019]. Available: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21400036 が、実際にこれらの効果を得るには、1日あたりワインの瓶を数本消費しなければならないという意見もあり現実的ではありません[#]Weiskirchen S, Weiskirchen R. Resveratrol: How Much Wine Do You Have to Drink to Stay Healthy? [Internet]. Advances in Nutrition: An International Review Journal. 2016. pp. 706–718. doi:10.3945/an.115.011627 。こんなにワインの摂取量を増やしたら心臓病や肝臓病などのリスクが高まり[#]Di Castelnuovo A E al. Meta-analysis of wine and beer consumption in relation to vascular risk. - PubMed - NCBI [Internet]. [cited 12 Jun 2019]. Available: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12070110 、健康どころではなくなってしまいます。
また、ワインの品質や種類によって以下のような添加物が混入されている場合があります。
- 二酸化硫黄(亜硫酸塩)
ワインの品質を保つための酸化防止剤で殺菌効果を持ち、ワインの発酵過程で自然に発生する化合物ですが、人工的に添加されることがほとんど。二酸化硫黄アレルギーをもつ人は摂取によって皮膚炎、じんましん、下痢等の症状を引き起こすことがありますが、実際に二酸化硫黄にアレルギーを持つ人はごく一部で、健康な人は規格基準値以内であれば問題はないといわれています[#]Lester MR. Sulfite sensitivity: significance in human health. J Am Coll Nutr. 1995;14: 229–232. 。しかし、最近の研究では食品添加物の使用基準値内の二酸化硫黄が善玉菌の増殖を阻害したという報告があり、腸内フローラのバランスを崩す可能性があると示唆されています[#]Irwin SV, Fisher P, Graham E, Malek A, Robidoux A. Sulfites inhibit the growth of four species of beneficial gut bacteria at concentrations regarded as safe for food. PLoS One. 2017;12: e0186629. 。添加された二酸化硫黄は、ラベルの表記義務があるので確認が可能です。
- ヒスタミン
赤ワインの原料に含まれるブドウの皮には、発酵の際にヒスタミンという物質を合成するもととなるアミノ酸が多く含まれているため、白ワインよりもヒスタミンの量がより多く検出されがちであると言われています [#]Smit AY, Engelbrecht L, du Toit M. Managing your wine fermentation to reduce the risk of biogenic amine formation. Front Microbiol. 2012;3: 76. [#]Smit AY, du Toit WJ, du Toit M. Biogenic Amines in Wine: Understanding the Headache. S Afr J Enol Vitic. 2008;29: 109–127. [#]Wantke F E al. The red wine provocation test: intolerance to histamine as a model for food intolerance. - PubMed - NCBI [Internet]. [cited 12 Jun 2019]. Available: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8005453 。ヒスタミン耐性には個人差がありますが、食物アレルギーと似た症状、頭痛や嘔吐、下痢等の症状を引き起こす原因になることがあります[#]Maintz L, Novak N. Histamine and histamine intolerance. Am J Clin Nutr. 2007;85: 1185–1196. 。普通はヒスタミンを分解する酵素が腸内に存在しますが、この酵素はアルコールによって働きが阻害されてしまうことがあり、その結果ヒスタミンが体内をめぐり不快な反応を引き起こすリスクが高まるといわれています[#]Smit AY, du Toit WJ, du Toit M. Biogenic Amines in Wine: Understanding the Headache. S Afr J Enol Vitic. 2008;29: 109–127. 。
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- マイコトキシン
マイコトキシンとはカビが作る毒素で、「カビ毒」とも呼ばれています。発ガン性や神経毒性などが報告されていて、食品の種類によって汚染リスクが指摘されています[#]Alexandra H. Heussner LEHB. Comparative Ochratoxin Toxicity: A Review of the Available Data. Toxins . Multidisciplinary Digital Publishing Institute (MDPI); 2015;7: 4253. 。ワインのマイコトキシンを検査したアメリカの研究では85%以上のワインにマイコトキシンが検出されたという報告があります[#]De Jesus CL, Bartley A, Welch AZ, Berry JP. High Incidence and Levels of Ochratoxin A in Wines Sourced from the United States. Toxins . Multidisciplinary Digital Publishing Institute (MDPI); 2018;10. doi:10.3390/toxins10010001 。その研究によると赤ワインは白ワインよりもマイコトキシンを含むリスクが高いと指摘されました。
赤ワインは、白ワインとは違い、皮や種も一緒に果汁を絞り取り、皮や種のエキスをブドウの果汁に染み出させて作られます。マイコトキシンの原因となるカビは、ブドウの表面に生えますが、皮ごと潰して作る赤ワインは白ワインよりマイコトキシンを多く含む傾向があるのです[#]Gil-Serna J, Vázquez C, González-Jaén M, Patiño B. Wine Contamination with Ochratoxins: A Review [Internet]. Beverages. 2018. p. 6. doi:10.3390/beverages4010006 。
また、マイコトキシンはより甘口なワインで発生することが多い傾向があります[#]De Jesus CL, Bartley A, Welch AZ, Berry JP. High Incidence and Levels of Ochratoxin A in Wines Sourced from the United States. Toxins . Multidisciplinary Digital Publishing Institute (MDPI); 2018;10. doi:10.3390/toxins10010001 。熟した果物は未熟の果物よりも皮が柔らかく、糖度が高いため、カビが生えやすくなります[#]Gil-Serna J, Vázquez C, González-Jaén M, Patiño B. Wine Contamination with Ochratoxins: A Review [Internet]. Beverages. 2018. p. 6. doi:10.3390/beverages4010006 。そのため、甘口ワインに必要な熟したブドウを栽培するために収穫期を延長することでカビが生え、マイコトキシンに汚染されるリスクが高まるのです[#]De Jesus CL, Bartley A, Welch AZ, Berry JP. High Incidence and Levels of Ochratoxin A in Wines Sourced from the United States. Toxins . Multidisciplinary Digital Publishing Institute (MDPI); 2018;10. doi:10.3390/toxins10010001 。さらに、甘口ワインの場合、醸造の途中で発酵を止めて糖分を残すのですが、これもカビが増殖しやすくなる要因の一つと考えられています[#]Gil-Serna J, Vázquez C, González-Jaén M, Patiño B. Wine Contamination with Ochratoxins: A Review [Internet]. Beverages. 2018. p. 6. doi:10.3390/beverages4010006 。
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- 糖質
ワインの醸造過程において、ブドウ果汁に含まれる糖は酵母菌によってアルコールと二酸化炭素に変換されます。この発酵が進めば進むほど糖の量が減り、より辛口なワインに、発酵過程を早めに止めればより甘口なワインになります。そのため、基本的には甘口ワインの方がアルコール度数が低くなります。
しかし、中には発酵をしっかりさせつつ甘口なワインに仕上げるために製造過程で糖分を添加する場合もあるため、アルコール度数の高い甘口ワインも存在します。
また、EUでは残糖度が1リットル当たり4g以下のものを辛口(ドライ)、12g以下のものがミディアムドライ、45g以下のものがミディアムスイート、45グラム以上のものが甘口(スイート)として規定されています[#]COMMISSION REGULATION (EC) No 753/2002. In: Official Journal of the European Communities [Internet]. 19 Dec 2006. Available: https://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/LexUriServ.do?uri=OJ:L:2002:118:000... 。
糖質制限をしている人は特に注意!
糖質制限ダイエットやケトン食ダイエットに取り組んでいる人が良く見落としがちなのはワインなどのお酒を含む飲料に含まれる糖質。例えば残糖量45g/Lのワイン一杯(約150ml)だけでおよそ7gほどの糖質を含んでいるため、いくら食事などで糖質を減らしても、甘口のワインを飲んでしまえば今までの努力も水の泡。糖質を控えている方は甘口のお酒には注意が必要です。
また、メガパープルと言われるブドウの果肉から作られた超濃縮ブドウジュースが、ワインに深みのある色や風味、味を統一するために使用されることがあります。68%もの糖分を含むといわれ、発酵後に加えられる場合は糖質が多いワインに仕上がるということになります[#]Mega Purple. In: Wines Vines Analytics [Internet]. [cited 27 May 2019]. Available: https://winesvinesanalytics.com/features/51033 。表記義務がないのと、メガパープルの糖質は発酵過程でエタノールに変換されるためどれだけの糖質がワインに加算されているかは不明な現実があります。
ビールは甘さというよりは苦さがメインなので大丈夫だろうと思っている貴方。残念ながら、ビール350mlの缶で10-15g程度の糖質が含まれており、これは甘―い缶ジュースと変わらない量なのです!味が濃厚で高級な銘柄ほど糖質が多い傾向があります。
健康には基本的にマイナスであるアルコールですが、社会人であれば付き合い酒を回避できない現実もありますよね。飲まないに越したことはない、というのを認識した上で、どうしても飲まなければならないときは健康へのマイナスインパクトが比較的少ない種類のお酒を選びましょう。具体的な選び方はこの過去記事が参考になります。簡単にまとめると、選ぶべきは赤ワインよりも白ワイン。甘口よりも辛口。ワインやビールや日本酒のような醸造アルコールよりもウォッカやジンなどの蒸留酒を使用した辛口のドリンクの方がチョイスとしては良い、ということになります。
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