精子の質が低下する可能性のある要因とは?
最近では不妊の原因が男性側であるケースが増加傾向にあります。原因不明の造精機能障害など深刻なケースもあるため、医師の診察は必要となりますが、こうした病的な理由ではなく精子の量や運動性が原因であることが多いのです。日常生活における以下のような要因が精子に悪影響を与えている可能性があります。
加工肉やトランス脂肪酸などの食事
一昔前に比べて精子の量が低下している原因の1つに食生活の変化があります。特に、消費量の増加傾向にあるソーセージやベーコンなどの加工肉の摂取は、精子が卵子を受精させる能力を損なう可能性が示唆されています[#]“Dietary habits and semen parameters: a systematic narrative review” n.d. Accessed June 16, 2021. https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/andr.12452. [#]“Processed Meats May Affect Male Fertility.” 2015. August 13, 2015. https://www.hsph.harvard.edu/news/hsph-in-the-news/processed-meats-may-a.... 。加工されていない肉を多く食べている男性の精子の方が受精の確立が高いというデータがあるので、以前の記事でもお伝えしたように、加工肉は極力避ける方が得策。また、マーガリンやお菓子など、非常に多くの加工食品に含まれているトランス脂肪酸はそもそも避けるべき最悪な油ですが、精子の量の低下にも関連しているので確実にNGな食品の1つです[#]Chavarro, Jorge E., Jeremy Furtado, Thomas L. Toth, Jennifer Ford, Myra Keller, Hannia Campos, and Russ Hauser. 2011. “Trans Fatty Acid Levels in Sperm Are Associated with Sperm Concentration among Men from an Infertility Clinic.” Fertility and Sterility 95 (5): 1794. 。
また、豆腐などの大豆食品の摂りすぎで、大豆に含まれる環境ホルモンの影響で男性でも乳房が膨らんだりと女性化の恐れがあると言われていますが、精子濃度の低下を促進している可能性も研究で分かっています[#]Chavarro, J. E., T. L. Toth, S. M. Sadio, and R. Hauser. 2008. “Soy Food and Isoflavone Intake in Relation to Semen Quality Parameters among Men from an Infertility Clinic.” Human Reproduction 23 (11). https://doi.org/10.1093/humrep/den243. 。日本ではいまだに健康食というイメージのある大豆ですが、この食生活はやはり見直す必要がありそうです。
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テストステロンの減少
テストステロン(男性ホルモン)が不足すると性欲低下、勃起不全や気分のムラなど体力面及び精神面でも不調が現れます。精子の生産にも必要不可欠なホルモンです。加齢に伴い緩やかに低下する傾向にありますが、このテストステロンの低下は精子の量にも悪影響を与えます。特に日本人の男性の血中テストステロン値が低い傾向があり、精子の濃度の低下に繋がっていることも示唆されています[#]Sengupta, Pallav, Sulagna Dutta, Maiza Binti Tusimin, Tulay Irez, and Elzbieta Krajewska-Kulak. 2018. “Sperm Counts in Asian Men: Reviewing the Trend of Past 50 Years.” Asian Pacific Journal of Reproduction 7 (2): 87. 。以前の記事を参考にテストステロンを下げると言われている植物油やハーブティーなどの食品を避け、テストステロン値を上げるように試みてみましょう。
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アルコールと喫煙
勃起不全の原因にもなる慢性的なアルコールの摂取は、テストステロンのレベルを低下させ精子の質や量に悪影響を与える可能性が示唆されています[#]Sansone, Andrea, Carla Di Dato, Cristina de Angelis, Davide Menafra, Carlotta Pozza, Rosario Pivonello, Andrea Isidori, and Daniele Gianfrilli. 2018. “Smoke, Alcohol and Drug Addiction and Male Fertility.” Reproductive Biology and Endocrinology: RB&E 16. https://doi.org/10.1186/s12958-018-0320-7. 。アルコール摂取が及ぼす精子への影響に関してはさまざまな研究結果があり、一概にアルコール量と精子の質との相対関係は明らかではありませんが、少なくとも男性不妊で悩んでいる場合は、アルコールの摂取は避けた方が良いかも[#]Sansone, Andrea, Carla Di Dato, Cristina de Angelis, Davide Menafra, Carlotta Pozza, Rosario Pivonello, Andrea Isidori, and Daniele Gianfrilli. 2018. “Smoke, Alcohol and Drug Addiction and Male Fertility.” Reproductive Biology and Endocrinology: RB&E 16. https://doi.org/10.1186/s12958-018-0320-7. 。また、喫煙もアルコールと同様に精子の質の低下を促進する原因になりえます[#] Rachel Gurevich, R. N. n.d. “The Surprising Truth About Smoking and Male Fertility.” Accessed June 16, 2021. https://www.verywellfamily.com/male-fertility-and-smoking-1960256. 。
熱いお風呂やシャワー
日頃から熱いお風呂やサウナに入る生活をしていると、精子細胞が加熱し機能が著しく損なわれる可能性が研究でも示唆されています。毎日熱いお風呂に長時間浸かることを習慣としていた不妊男性が、短時間のぬるめのお湯のシャワーに切り替えたところたちどころに妊娠に成功したという例も[#]“Making Fertility-Friendly Lifestyle Choices.” 2007. December 15, 2007. https://www.health.harvard.edu/womens-health/making-fertility-friendly-l.... 。睾丸の生殖細胞は、平熱よりもやや低い温度で最も機能します。日本では文化的に熱いお風呂に毎日入るのが一般的ですので、あなたの不妊もこれが理由かも?
環境ホルモン(内分泌かく乱物質)
科学の進歩に伴い発生する非自然的な化学物質で人のホルモン系に悪影響を与えると言われている環境ホルモン(内分泌かく乱物質)には上記の大豆以外にもさまざまな種類があります。
- 石鹸や歯磨き粉など多くのパーソナル用品に含まれているフタル酸エステル類[#]Rehman, Saba, Zeenat Usman, Sabeen Rehman, Moneera AlDraihem, Noor Rehman, Ibraheem Rehman, and Gulfam Ahmad. 2018. “Endocrine Disrupting Chemicals and Impact on Male Reproductive Health.” Translational Andrology and Urology 7 (3): 490.
- 殺菌剤、殺虫剤、抗カビ剤などに含まれているノニルフェノール
- 保存容器などに含まれているBPA(ビスフェノールA)[#]Rehman, Saba, Zeenat Usman, Sabeen Rehman, Moneera AlDraihem, Noor Rehman, Ibraheem Rehman, and Gulfam Ahmad. 2018. “Endocrine Disrupting Chemicals and Impact on Male Reproductive Health.” Translational Andrology and Urology 7 (3): 490.
- 野菜や果物に含まれているグリホサートのような残留農薬[#]Anifandis, George, Katerina Katsanaki, Georgia Lagodonti, Christina Messini, Mara Simopoulou, Konstantinos Dafopoulos, and Alexandros Daponte. 2018. “The Effect of Glyphosate on Human Sperm Motility and Sperm DNA Fragmentation.” International Journal of Environmental Research and Public Health 15 (6). https://doi.org/10.3390/ijerph15061117.
などは特に精子の質や量に悪影響を与えると考えられています。
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EMF(電磁波)
パソコンやスマートフォンやモバイル機器などから発生する電磁波(electro-magnetic field=EMF)は、DNAの損傷や免疫システムへの悪影響などの健康リスクにつながると言われていますが、精子の運動量や生存率を減少させるという研究結果もあります[#]Adams JA E al. Effect of mobile telephones on sperm quality: a systematic review and meta-analysis. - PubMed - NCBI [Internet]. [cited 20 Oct 2018]. Available: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24927498 。スマートフォンやパソコンの長期使用や、ポケットに電源の入ったスマホを入れるのは控えましょう[#]Gorpinchenko, Igor, Oleg Nikitin, Oleg Banyra, and Alexander Shulyak. 2014. “The Influence of Direct Mobile Phone Radiation on Sperm Quality.” Central European Journal of Urology 67 (1): 65. 。また、使用していない時は機内モードにすることを忘れずに。現代人の精子の量が低下しているというのもこうした理由が背景にあることに気づくと納得しますよね。
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