できれば避けたい缶詰の化学物質BPA(ビスフェノールA)
BPAフリーという言葉を聞いたことはありませんか?BPAとは、電気機器や自動車の部品をはじめ、食器や容器の材料として使用される工業用の有機化合物。缶詰の内側の防蝕塗装にもこのBPAが使用されています。事業者の自主的な技術改良の取り組みが行われている国内産の缶であれば、厚生労働省が定めた基準値「耐容一日摂取量0.05mg/kg体重/日」以下のBPA溶出量の製品の生産が可能とされています。よってBPAの摂取は極めて微量と言われていますが、金属缶の内側の塗装に頻繁に使用されるBPAを含むエポキシ樹脂に関しては規制がないので、特にBPA対策を施してあると謳っているものでない場合は注意が必要です。
また、酸性の食品はより化学物質が溶出される傾向にあります。柑橘系や桃などのフルーツは酸性ですので、よりBPAの摂取のリスクが高まる可能性があります[#]Amidor, Toby, M. S., R. D., and D. N. C. 2009. “Are Plastic Food Containers Really Safe?” Food Network. February 19, 2009. https://www.foodnetwork.com/healthyeats/2009/02/plastic-food-container-s.... 。
容器内の内容物と混合されることで溶出したこのBPAは、食品を通して体内に取り入れられ、環境ホルモンとしてホルモン作用のかく乱や[#]Diamanti-Kandarakis, E., J. P. Bourguignon, L. C. Giudice, R. Hauser, G. S. Prins, A. M. Soto, R. T. Zoeller, and A. C. Gore. 2009. “Endocrine-Disrupting Chemicals: An Endocrine Society Scientific Statement.” Endocrine Reviews 30 (4). https://doi.org/10.1210/er.2009-0002. 、不妊を引き起こす可能性[#]Sugiura-Ogasawara, M., Y. Ozaki, S. Sonta, T. Makino, and K. Suzumori. 2005. “Exposure to Bisphenol A Is Associated with Recurrent Miscarriage.” Human Reproduction 20 (8). https://doi.org/10.1093/humrep/deh888. 、更には心臓病や2型糖尿病の発症との関連性も指摘されています[#]Lang, I. A., T. S. Galloway, A. Scarlett, W. E. Henley, M. Depledge, R. B. Wallace, and D. Melzer. 2008. “Association of Urinary Bisphenol A Concentration with Medical Disorders and Laboratory Abnormalities in Adults.” JAMA: The Journal of the American Medical Association 300 (11). https://doi.org/10.1001/jama.300.11.1303. [#]Shankar, A., and S. Teppala. 2011. “Relationship between Urinary Bisphenol A Levels and Diabetes Mellitus.” The Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism 96 (12). https://doi.org/10.1210/jc.2011-1682. 。このBPAの健康リスクはさまざまな専門家や研究家、企業のあいだで論争となっていますが、健康リスクがある可能性のある物質は体内に取り入れないことに越したことはありませんので、できれば避けたいところ。
また、BPAフリーと記載されていても、BPAをBPS(ビスフェノール-S)やBPF(ビスフェノール-F)に置き換えただけの製品もあります[#]Moon, Min Kyong. 2019. “Concern about the Safety of Bisphenol A Substitutes.” Diabetes & Metabolism Journal 43 (1): 46. 。これらの化学物質もBPAと同様に健康リスクが懸念されています。BPAフリーだからといって安心はできない、、、ということは、そもそもの缶詰製品を食事に取り入れるアイデアは、やはりあまり賢明ではないようです。どうしても保存食を確保したいのであれば、フルーツ缶ではなく、冷凍フルーツなどで代用するようにしましょう。
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