健康に良くないとなんとなく理解していても、どうしても甘い物が食べたくなるときもありますよね。そのようなとき、できるだけ砂糖の過剰摂取を避けたいとの思いから、人工甘味料を使用した糖分ゼロや低カロリーなどと表示された食品を買って健康的なチョイスをした気になっていませんか?
こうした食品に含まれている甘味料にはさまざまな種類があります。身体に比較的安全なものから避けるべきものまで幅広くあるので、しっかりと知識を付けておきたいところですね。
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その中でも危険性が高いと欧米の一部の専門家が警鐘を鳴らしているのがアスパルテーム。世界的に普及していて安易に手に入る人工甘味料の代表的なものです。現在進行形で是非を問う論争が巻き起こっており、SNSやメディア等でもアスパルテームの危険性について頻繁に発信・議論されています。
健康に有害という研究と悪影響はないという研究が錯綜しているなか、今回geefeeでは、アスパルテームの健康への影響について論文を精査して検証してみました。
アスパルテームとは?
2つのアミノ酸、アスパラギン酸とフェニルアラニン、で構成された人工甘味料[#]Pubchem. n.d. “Aspartame.” Accessed March 18, 2019. https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/134601. で、1965年科学者であるジェームズ・M・シュラッターによって偶然発見されました。アスパルテームは体内でアミノ酸と少量のメタノールに分解されます。中学の化学の時間で習ったかもしれませんが、このメタノールはアルコールの一種で(お酒に含まれるエタノールとはちがい)人間にとって毒性がとても高い物質です。これだけでも賢いgeefeeユーザーは「なんかやばそう!」と感じるのでは?
アスパルテームは1980年代初頭から米国で甘味料として使用され始めました。炭酸飲料のダイエット版が流行りだしたのもこの時期で、その多くにアスパルテームが使用されています。砂糖の100~200倍の甘さがあるため、メーカーにとっては超低コストで、今でも様々な市販の飲食物に使用されています。
厚生労働省が定める日本での1人当たりの1日摂取許容量は2344mg
例えば、500mlのペプシゼロには、435mg含まれていますので、2本飲めば1日摂取許容量の3分の1を超えます。アスパルテームが含まれているのは炭酸飲料だけではありません。お酒やチョコレート、カフェオレ系ドリンク、飴、ガム、ゼリーやミント等、多種多様の食品に含まれていますので、注意していないとあっという間にこの2344mgに達してしまいそうです。ちなみに、小児用の薬(例えばこういうの)にも含まれているのには驚きです[#]“アステルパームを使用した商品のL-フェニルアラニン含有量について” http://www.boshiaiikukai.jp/img/milk/oshirase5ap2013.pdf. 。
危険性を訴える科学者たち
摂取しても健康に支障がないとする論文も多く発表されており、今でも消費者団体やメーカーの間で論争は続いています。アスパルテームが安全なのか危険なのかという問いに対する正解も現在のところは明確には判明していませんが、タバコのように今では明らかにその危険性が解明されているものでもつい最近までこうした論争の対象であったことを忘れてはなりません。特定の物質が健康に有害となると損害を受ける業界や企業が、不都合な知識の進化に抵抗するのは世の常。以下、アスパルテームに関する研究論文のうち、危険性を指摘したもののいくつかをご紹介します。
- 肥満者がアスパルテームを摂取すると糖尿病リスクが高まる[#]Kuk JL, Brown RE. Aspartame intake is associated with greater glucose intolerance in individuals with obesity. Appl Physiol Nutr Metab. 2016, 41(7): 795-798, http://www.nrcresearchpress.com/doi/10.1139/apnm-2015-0675#.XH5lZ8D7S6K
スクロース、フルクトース、アスパルテーム、およびサッカリンの摂取と耐糖能の関連性をNHANES III調査からレビューした本研究では、アスパルテームの摂取のみ、BMI(肥満度合いを示す指数)の高い肥満患者と耐糖能の正の関連が示されていた。つまり肥満者がアスパルテームを摂取すると糖尿病リスクが高まる可能性があることを意味する。
- 精神障害の病因にも[#]"Direct and indirect cellular effects of aspartame on the brain." (Apr 2008). Eur J Clin Nutr 62 (4): 451-62. doi:10.1038/sj.ejcn.1602866. PMID 17684524. https://www.nature.com/articles/1602866
脳に対するアスパルテームの直接的および間接的な細胞への影響を調べた2008年の研究では、過剰なアスパルテームの摂取は頭痛や不眠と関連している他、妊娠中の摂取は胎児の脳の発達にも影響している可能性があるとしている。
- 体重増加、メタボリックシンドローム、2型糖尿病、および心血管疾患のリスク状況[#]Swithers SE. Artificial sweeteners produce the counterintuitive effect of inducing metabolic derangements. Trends Endocrinol Metab 2013;24:431-41. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23850261?dopt=Abstract
2013年のレビュー論文によると、アスパルテームを過剰摂取すると過度の体重増加、メタボリックシンドローム、2型糖尿病、および心血管疾患のリスクが高くなる可能性があるとしている。
- 血液のガンのリスク増加[#]Corsi, Hector (2012 [last update]). Study: Aspartame linked to blood cancers. digitaljournal.com. Retrieved on 9 November 2012. https://academic.oup.com/ajcn/article/96/6/1419/4571485
22年間の食事データを分析した2012年に発表された研究では、アスパルテームが含まれる飲料を1日1本以上摂取した場合、男性においていくつかの血液のガン(白血病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫)のリスクが増大することを示している。
- 発がん性物質[#]Soffritti et al (2010). "Aspartame administered in feed, beginning prenatally through life span, induces cancers of the liver and lung in male Swiss mice". American Journal of Industrial Medicine 53 (12): pp. 1197-1206. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20886530
2010の研究で、雄雌のラット、雄のマウスにとってアスパルテームは発がん性があるとしている。
- うつ病が悪化[#]Walton RG, Hudak R, Green-Waite RJ (1993). "Adverse reactions to aspartame: double-blind challenge in patients from a vulnerable population". Biol. Psychiatry 34 (1-2): 13-7. doi:10.1016/0006-3223(93)90251-8. PMID 8373935. https://www.biologicalpsychiatryjournal.com/article/0006-3223(93)90251-8/pdf
1994年に実施された人間が対象の二重盲検試験では、アスパルテーム摂取により、うつ病が悪化した人がいたため研究が中止されたことが記録されている。
どうですか?アスパルテームが含まれる食品を口にしようとする際にはこれらのことを思い出してくださいね。
カロリーゼロの甘味料は食欲増進剤?
最後に、低カロリー人工甘味料のほぼすべてに対して多かれ少なかれ当てはまる怖い事実を説明します。アスパルテームと同じように砂糖の何百倍の甘味があるサッカリンという甘味料は、家畜の食欲を上げるためにも使われているのです[#]Sterk A, Schlegel P, Mul AJ, Ubbink-Blanksma M, Bruininx EMAM. Effects of sweeteners on individual feed intake characteristics and performance in group-housed weanling pigs. J Anim Sci. 2008;86: 2990–2997. 。食欲増進の仕組みは、サッカリンを食べた時に、甘さは感じるのに体はカロリーを享受できないため、身体は入ってこなかったカロリーを補おうとして、食欲が上がり、結果的により多く食べてしまうからだと考えられています[#]Fowler SPG. Low-calorie sweetener use and energy balance: Results from experimental studies in animals, and large-scale prospective studies in humans. Physiol Behav. 2016;164: 517–523. 。さらに、サッカリンの長期間の摂取は、代謝の低下と体脂肪の増加にも繋がることが動物実験で分かっています[#]Swithers SE, Davidson TL. A role for sweet taste: calorie predictive relations in energy regulation by rats. Behav Neurosci. 2008;122: 161–173. 。別な人口甘味料であるスクラロースにも似たような効果があるのだそうです[#]Wang Q-P, Lin YQ, Zhang L, Wilson YA, Oyston LJ, Cotterell J, et al. Sucralose Promotes Food Intake through NPY and a Neuronal Fasting Response [Internet]. Cell Metabolism. 2016. pp. 75–90. doi:10.1016/j.cmet.2016.06.010 。
アスパルテームに関しては、食欲との関連性はサッカリンやスクラロースほど強くはないようですが、少なくともラットを用いた実験では体重増加に貢献していることがわかっています[#]Anton SD, Martin CK, Han H, Coulon S, Cefalu WT, Geiselman P, et al. Effects of stevia, aspartame, and sucrose on food intake, satiety, and postprandial glucose and insulin levels. Appetite. 2010;55: 37–43. [#]Feijó F de M, Ballard CR, Foletto KC, Batista BAM, Neves AM, Ribeiro MFM, et al. Saccharin and aspartame, compared with sucrose, induce greater weight gain in adult Wistar rats, at similar total caloric intake levels. Appetite. 2013;60: 203–207. 。ダイエットのため、と思って摂っていた甘味料が実は肥満を促進しているだなんて、とても皮肉ですね。太っているからダイエット飲料を飲んでいるのか、それともダイエット飲料を飲んでいるから太っているのか、鶏と卵の関係かもしれませんね。
今回はあくまでも、アスパルテームが健康に悪影響があることを示唆した代表的な文献をご紹介しました。多くの科学者や消費者団体がアスパルテームの危険性を訴えているのは、このような研究結果が理由です。そもそもアスパルテームには不自然な後味があり、その値段の安さ以外に甘味料としての魅力は小さいと言えます。
どうしても砂糖以外の甘味料が必要な場合には、もっと味も良くて体にも優しいチョイスが存在します。賢明な消費者はアスパルテームが含まれている食品は極力避けるべき、というのがgeefeeの推奨です。アスパルテームは本当にたくさんの加工食品に含まれていますので、買い物のときにしっかり原材料表を確認しましょう。でも、低カロリー甘味料の多くに食欲増進効果が認められ、理想の甘味料はなかなか存在しません。最終的には甘味料を使用しなくても美味しい食生活が送れるような味覚づくりをすることが理想です。それを実現するために、geefee推奨の30日砂糖絶ちプログラムに挑戦されてみては?
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